みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2013/03/05(火) ~ 2013/03/10(日)
会場 「劇」小劇場
料金 2,000円 ~ 2,000円
全4作品をご覧になれます。
全4作品をご観劇頂いた方は、公開審査時に行われます、観客賞の投票権利がございます
サイト http://jda.jp/contest01.html


107名もの応募に及んだ第一次審査から第二次審査を経て、いよいよ4名の演出家が最終審査に挑みます。


◇日澤雄介(東京都)   
劇団チョコレートケーキ(東京都)
「親愛なる我が総統」
脚本:古川健(劇団チョコレートケーキ)


1947年4月16日ポーランド、オシフィエンチム(独語アウシュビッツ)の地で一人の男が 絞首刑に処された。 アウシュビッツ収容所初代所長 ルドルフ・フェルディナント・へース。 ホロコーストを実行した男でナチス戦犯。彼はナチスの高級官僚で、彼は親衛隊(SS)に入隊後、各地のユダヤ人強制収容所に勤務し、現場で直接手を下す立場であった。敗戦後、彼は逃亡中の身柄を拘束され、かつて権力を振るったアウシュヴィッツ強制収容所で絞首刑となった。ヘスが身柄を拘束され、収容所で絞首刑になるまでのヘス自身の最後の審判を描いた物語。


舞台は湿った暗い独房を想定させる鉄柵に木製の机と椅子。薄暗い照明に、時を刻む時計の音。判事のシマノワスキー(村山新)が大声をあげると、その声を反響させるかのような音響。まさに観客をその世界に引き入れるのに、そう時間はかからない演出だった。


へース(林竜三)に対しての予審を担当する判事のシマノワスキー(村山新)と判事ノバク(谷仲恵輔)の二人のポジション。ここでノバクは裁判長の意向も示唆し役人としての心構えをセリフとして吐かせるところは流石に脚本力の技でもある。そしてヘースの精神鑑定を行う精神科医のバタビア(山森信太郎)が登場し、彼がヘースに対して審問を行いながら、アウシュビッツ収容所でのユダヤ人大量虐殺を悔いるように仕向ける。


ヘースとしては、ホロコーストの実行はドイツ人としての義務感とドイツ人の誇りだと自らの正義を掲げて死にたかったのだろうが、これを逆説で唱えるバタビア。これを受けて泣き叫ぶヘースで、幕は閉じる。この閉じ方も余韻を残す終わりだ。


役者がいい。大量虐殺を実行したヘースの淡々とした落ち着いた語りから、一変して泣き叫ぶ場面。ユダヤ人の死体処理を行うユダヤ人の話。その極限状態での人間の動向。フェアという意識。これらの物語の一瞬一瞬を邪魔しないキャストらのセリフの数々。

若手演出家コンクールで優勝した舞台だったが、それに相応しい芸術作品であった。