みさの小劇場ウオッチ日記



公演期間 2013/02/20(水) ~ 2013/02/24(日)
会場 d-倉庫
脚演出 ムランティン・タランティーノ
料金 3,000円 ~ 3,200円
サイト http://314ch.web.fc2.com/


初見の劇団なので、それほどまでに期待はしていなかったのだが、そんなワタクシの小さな期待を裏切って、大きくやっちゃってくれたのが「小型」。そもそもセットが面白い。主人公の男を小さく見せる為にセットを大きく作っていた。例えば煙草やパソコンなど。そして男の妻を巨人化させるために、妻を映像で観客に見せるという手法。まったくもって抜群の設定じゃないか。そして、夫婦のちょっとした争いの後、ふて寝した男が朝、目覚めたら小型化していたのだった。


そんな小人の夫に、「もうそれじゃセックスも出来ないじゃない。」とセックス旺盛な肉食妻は言い放ち、夫をペットと考えてカニサキと堂々と不倫を始める。そんな妻に小型化してしまった夫は逆らえないばかりか、妻に「貴方の事はペットとして私が一生面倒見てあげるから心配しないで。」なんて言われ、なんだか下僕のような気になって泣くのだった。


そんな折、男が寝ていると、ぐるぐるの形をした大きな飴のようなスパイラルゾーンから、これまた小型の楽隊が順番に飛び出てくる。アホーピッピ・・・アホーピッピなる言語を放ち、踊りながら登場したそのさまはリトルディズニーのようなパレードだ。ピピピ星人のような彼らは小型族という。


男にとっては彼らが不思議な生き物だが小型族にとっては男が不思議な生き物だった。それでも穏やかで争いの嫌いな小型族は男に打ち解け仲良くなるも、男は次第に彼らを支配し始める。そして、いつの間にかリトルワールドの王となって君臨してしまうのだ。家来と化した小型族が王に傅くようになると欲しいものは全て手に入るこの現状に男は精神的に満たされなくなる。 多くの王がそうなるように。


そして男は小型族に人間の行いを要求するようになり、これを受けて小型族はだんだん凶暴になり、飲み屋でのヤクザ同士の抗争にまで発展するのだった。


ひじょうに面白い。男が描いた現実離れしたワールド。男の職業は家から一歩も出なくても出来るデザイン造形だ。作家や引きこもりがそうなように独自の妄想世界をまるでリアルのように構想し自分が主人公になるケースは多い。


ここでの男は小型化してしまったが為に、いかにもちっぽけな自分を王に仕立て世界を支配してしまう。しかし、いくらこの世界の王になったところで相変わらず妻のペットで妻なしでは生きていけない存在なのだ。男が悶々としていると、小型族も悶々とし、男の言うとおりに動く小型族に妻のみよちゃんと不倫相手のサキちゃんを重ねるも、男の言いなりになる彼女たちの幻影にはやはり満足できないのであった。


そして妻に哀願する。「僕は頑張るからセックスをしてほしい」と。しかし「そんな小さな体で私を満たすことは出来ないわ」と上から目線の妻に、「この体全体を君の中に入れればいい。」とチャレンジするも窒息しそうになる男。笑


男を演じた内田龍がいい。イケメンでもなんでもなく普通だ。この普通さがこの物語に一層の悲しみや哀れさや可笑しみを増長させる力がある。男は妻をこれほどまで愛しているのに妻のほうはそれほどでもない現状を考えた時、男は敗北感を抱き心根までも犬のようになってしまうのだ。


妻のセリフやカニサキのセリフを録音して流しているので男のセリフと噛み合わない場面が多々あった。しかしそんな欠点を払拭するように作品が面白い。男が描く妄想劇で妻に捧げる狂想曲ファンタジーのような舞台だった。エンタメとして常軌を逸するほど素晴らしい。

気になったのがVelmaの降板。これによって舞台に影響はでなかったのだろうか?
スタッフでは舞台美術:斉木信太朗、衣装:さかくらきょうこが特に秀逸。