みさの小劇場ウオッチ日記


公演期間 2013/02/14(木) ~ 2013/02/24(日)
会場 SPACE雑遊
脚演出 鐘下辰男
料金 3,000円 ~ 4,000円
サイト http://gazira.info/#contact


ゴルゴン・・このタイトルで観たい気持ちが一気に募る。ギリシャ神話に登場する三姉妹の怪物の総称だ。そしてこのタイトルに似せた三姉妹はこの物語の中での、瀬川恵子(西山水木)、恵子の娘・里美(とみやまあゆみ)、恵子の妹・良枝(大沼百合子)・・といったところだろうか。劇中のこの3人の役どころの、内に籠った捻れっぷりが実にいい。笑


物語は恵子の夫の不倫相手である谷村さゆりが起こした「クリスマスラブホテル放火殺人事件」から始まる。恵子の夫はさゆりと結婚の約束をしながらも、ずるずると2年の間、不倫の関係にあった。その間、さゆりは子供を身ごもり堕胎していたが、男から別れを切り出される。そしてそのラブホテルで男を焼き殺し、騒ぎとなった事件だった。


一方で残された家族、恵子と里美はこの事件があってからというもの、恵子は自分の狂った人生を生き直すかのように里美に重い期待をよせ、いつしか、恵子の思い通りのレールを歩ませる。これに対して里美は母を悲しませないようにと、その期待に応える一方で全ての事柄を母親が決めてしまう里美の人生に疑問を抱いていたのだった。そして同時期、クラスメイトから苛めを受けていた里美。


この母と娘の見えていた世界は完全に歪みだし、恵子は亡き夫の幻覚を見るようになる。そして里美は大学卒業後、まるで輪廻のように、あるいは宿命のように職場の上司と不倫し、子を堕胎し、2人目を身ごもるのだった。


劇中、「何故人は親と同じような生き方しか出来ないのか。他の生き方を知らないから。」という行があったが、かつて父親の不倫相手だったさゆりと同じような展開になっていく里美の道程が恐ろしいほどリアルに表現され、かつ、母と娘の容赦のないバトルが壮絶でもあった。


以前、家族とは直線の関係は良くないと聞いたことがある。なんでも面積が出来るように3人以上が望ましい、らしいのだ。そして二人のクライマックスは屋上で終結する。この屋上での里美の告白がこの物語の核だろうか。母親の過剰な期待を裏切りたい本能。この物語は被害者となった親子の欝の連帯感みたいな情景が沸々と湧き上がってきた舞台だった。


恵子の妹・良枝のポジションが面白い。良枝は年下の不倫相手を妻から奪い取って結婚した経緯を持つ。そして良枝が何かと恵子のかたを持ち里美に意見する立ち回りだ。


暗い闇の様な過去からの記憶を持ったそれぞれは、自分の身に起きたことがいかに悍ましく、この先の長い道のりに消えない烙印を押し付けられた事実を悟る。それは、それぞれが抱えた深い亀裂の様な恐怖と絶望と屈辱の混じったようなものだ。もはや拭い去ることの出来ない印が自分たちに刻まれ、その不条理は己の身の上に押された烙印の深さを思い知らされるのだ。人間の業のようなものを観た舞台だった。


闇が深すぎて面白い!
そして全員の役者の演技力が素晴らしい。ある意味、残酷な舞台だが観客をねじ伏せ、ひれ伏させてしまう舞台だ。その熱量がハンパない。