みさの小劇場ウオッチ日記


公演期間 2013/02/09(土) ~ 2013/02/17(日)
会場 新宿シアターモリエール
脚本 濱田真和
演出 小林拓生
料金 4,800円 ~ 7,800円
サイト http://www.tokyo-engeki.com


地下鉄に乗り合わせた18人。大きな音と共に大きな揺れが彼らを乗せた車両を襲い、気がつくと地下200mに閉じ込められていた。どうやら地上でのロケット打ち上げに失敗したらしい。混乱、恐怖、絶望が車両を支配するも、政府当局は非常用電話で彼らの救出を約束する。しかし、その裏では首都を大阪に移し、東京の復興を優先し彼ら18人の救出を先送りしてしまう。


地下では先の見えない不安から人間の本性を徐々に現しサバイバルが始まる。生きぬく為に、死なない為に、人が人を殺し、あるいはこの場を支配する欲望から、バトルも始まる。そして強姦、人を食らう。目を背けたくなる人間の醜さと、誰もが持つ人間の美しさが対峙したとき、本当の人間の姿が見えてくるのだが、今回の舞台の主役であるノゾム(際等ヤスカ)の命に焦点を当てた作品だった。


常に死にたいと考え、同時に命の尊さを軽んじていたノゾムの生き方はノゾムの幼少の頃に起因していた。彼の母親は家族を見捨て別の男のもとへ走ってしまっていた。その後、父は他界し、小さかったノゾムは施設で育つことになる。一方で、ノゾムはひょんな事から小さな雀の命を間接的に奪うことになり、その悲しみや罪の意識が小さなノゾムの心を後悔で支配してしまうという心優しき子供でもあった。


この物語は人の命に直面したノゾムの心の成長と人の命の重さを身をもって知る。という事に視点をあてた、いわば脚本としては道徳的なものだったと思う。表現の仕方や見せ方が暴力的で問題はあったけれど・・。また今回、出演されたダンプ松本の演技力がイマイチ。この劇団にとって、ダンプは見世物パンダ的な客呼び効果もあったのだろうが、それならダンプの名誉の為にも、きっちりと練習させ叩いて教えるべきだったと思う。


この日はSバージョンを観劇したが、個人的にノゾムのバックで陽炎のような、死神のような役をしていた影(役者名は解らず)の演技力が実に秀逸だった。立ってるだけで雰囲気というか、その熱量がビンビン、伝わってきて不思議な魅力があった。また、ノゾムの母親をここで登場させるのも、いい効果があったと思う。


意外にもこういった本は珍しくない。しかし、それなりの見せ場はあってワタクシは楽しむことが出来た。一方で、別バージョンに出演する男優が当日の客席誘導を担当していたが、前3列がガラガラに空いているのに、先に座っているお客様の目の前に遅れてきた客を座らせるという(段差がなくて見えないじゃん)、観客に対して思いやりがなかったのが残念だった。慣れてなかったのは仕方がないとしても、気遣いというのは、社会で生き抜くのに必要だよね。