みさの小劇場ウオッチ日記



-鎌倉編、会津編、2バージョン上演-


公演期間 2012/12/28(金) ~ 2013/01/06(日)
会場 こまばアゴラ劇場
脚本 吉田小夏、[会津編方言翻訳]古川貴義(箱庭円舞曲)
演出 【鎌倉編】吉田小夏、【会津編】古川貴義(箱庭円舞曲)
料金 2,700円 ~ 5,600円
サイト http://aogumi.org/


2004年の再演。ある一家の4年間にわたる大晦日の夜のみを綴った物語。つまり、1年間は空いてる形だ。暮れに家族が集まって静かだけれど濃密でふくよかな時間を描写する。ワタクシが観たのは鎌倉編。幼少期を鎌倉で過ごした吉田にとっては、筆が動き、たぶんきっと、自身の家族と風景と重なるのだろうと考える。


セットが綺麗過ぎて見た目は清楚で美しいのだが、物語は数十年を過ごしたらしい垢が欲しかったかな、と思う。場面は和室で起こる家族の情景。大晦日の4年間、つまり4回の場面。また、除夜の鐘が響く音響はいと、美しい。


今回、藤川修二の演技力が光る。しっとりと時間は流れ、郵便局と家の往復だけを規則正しく生きて、ただただ、姪や甥の成長を楽しみに温かく見つめてきた山本晴彦役だ。


松沢典子(羽場睦子)は夫に先立たれ、今は典子の弟・晴彦と、次男(林竜三)の3人で暮らす。どうやら典子は体調が悪いらしい様子だが、長男(荒井志郎)と長女(福寿奈央)の2人は年末に帰って来るのみだ。この二人が帰り5人になった家族の風景が物語の軸だ。


4年の月日の間に典子の年頃の子供たちの恋愛を織り込みながら映し出され、4年後、典子が亡くなり、皆が暮らした家を売却するまでの静かだけれど温かみのあるものだった。この時期、この物語を観ると、やはり家族があることの有難さをひしひしと感じる。


大晦日の黒豆を煮る場面や、カレーを作る展開は楽しくコミカルに描写されていた。典子が記した正月料理の作り方も心に残る場面だ。また若い家族と一緒に家も町も歳をとっていく描写はゆるりと想像できて、年月を感じた。ずっとこの家に暮らして居たかった晴彦と典子の会話、そして晴彦と長女の会話もしみじみと。晴彦がずっとこの家に居て、旅をしなかった事も勇ましいことだと思う、とのセリフもジーン・・と。切なくも静かでしっとりと密度の高い舞台だった。


アフタートークが長田育恵 (てがみ座主宰)の回。長田育恵 のトークを始めて聞いたが、本当に優しく話す人で、魅力的な人だった。あんな風に優しく話す人を始めて見たが、見習いたい。優しく命令すればきっと人は動くかと。笑