みさの小劇場ウオッチ日記



公演期間 2012/12/13(木) ~ 2012/12/16(日)
会場 シアターKASSAI
脚演出 久間勝彦
料金 2,500円 ~ 6,000円
サイト http://tokyostoryteller.jp/next-tst.html

「紅い華のデジャヴュー」を観劇。
公演前に、作演出の久間勝彦が挨拶されてたが、ひじょうに誠実なご挨拶で胸を打たれる。こういう作家にしてこういった作品が書けるのか、と納得。約15年前に書いた作品の再演だ。

死地を求めて旅に出た男・山本が辿りついたのは南の島。絵に書いたような楽園の景色の中で、山本はここで死のうと決意をするも、ふと、目に留まったかたわらのハイビスカス。花を手に取った瞬間、男の心は不思議な既視感に包まれた。そのデジャヴューとは、千年の時空を超えるピュアな愛の物語だった。


千年前、荒くれ者で卑屈のコンピョウが天井から降りてきた美しく穢れのない乙女・メイランと出会い、恋をし改心し、真人間になろうとした矢先に神の悪戯で余命3ヶ月だったメイランを突然失ってしまう。こうして自暴自棄になったコンピョウを一輪の赤い華によって目覚めさせるという物語だった。このコンピョウが現世での自殺願望の山本だが、メイランが現世で蘇り人間となって再び山本の前に現れる。


なんとも輪廻を感じさせるファンタジーだ。見習い能化として登場する二人、大塚みどりと木村望子のコントのような間合いが絶妙で特に大塚みどりの格好には笑えた。そしてコンピョウを演じた下井顕太郞がいい演技をしていた。またメイラン役の佐々木悠花の初々しい演技やシリアスな演技もきっちりと魅せていた。白い衣装を着用したメイランのほうが美しい。更に千年後の現世での明子はもっと美しい。一方でレンカ役の演技がちと硬かったような・・。


メイランの慈しみの母性が、強がって生きてきた孤独なコンピョウを全うな生き方をしようと改心させる場面は見ていて清清しい気持ちになれた。また生まれて初めて人としての幸せを感じたコンピョウが、メイランを失って、やり場のない憎しみを演じた場面は落涙し、釈迦の慈愛でメイランを不条理な人間界に戻し現世の男に巡り逢うせる場面では、温かな心持になれた。


前世での関係が深かった人たちは現世でもその人の周りに居る、というのを硬く信じているワタクシとしては、こういった物語は文句なしに感動し号泣してしまう。脚本が素晴らしい。またこれに答えて音響、役者もいい仕事をしていて満足度の高い舞台だった。


強いていえば、当日パンフに配役とキャスト名の提示は必要だと思う。