みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2012/12/08(土) ~ 2012/12/09(日)
会場 王子小劇場
脚演出 うんこ太郎
料金 1,000円 ~ 2,500円
サイト http://doropro.web.fc2.com/

まったく期待していなかった劇団どろんこプロレス。ダイタイ劇団名もフザケテいれば役者名もフザケテる。脚演出家に至っては、うんこ太郎なのである。女性のブロガーはこの生々しい名前を書けないだろう・・と舐めちゃアカン。なんだって書いてやる。


そんなわけで、うんこ太郎には期待していなかっただけに観た後の衝撃的なこと、この上もなかったのである。本編のルール、この劇では男性は左手が性器。女性は左手が性器を表しグローブ、つまり手袋をしている。そうだ、そんなもん人前で見せるもんじゃない。納得の手袋だ。更に「手袋がパンティー、自分で指をくわえる、または指をこすることをオナニー、相手の指をこすることが手コキ、相手の指をくわえることがSEX」などと解説が表記され、どんな芝居が始まるのか、やたらワクワクしちゃったよ。


ところがイザ始まってみると、この手SEXやら、手勃起やらが滑稽で可笑しい。エロというより、もう喜劇なのだけれど、素晴らしい!と感じたのは舞台の4つのコーナーでそれぞれの人間模様が繰り広げられることだ。


結婚が決まっている教師(則元秀之)が女子高制服フェチで実際の女子高生・春子(松本みゆき)を買春したり、その春子が根本的な愛を枯渇するあまり、売春に走ったり・・。しかしそんな春子を支える彼氏(古塩貴也)の深く、どでかい愛が素晴らしい。バカが付くほど深く大きな懐だ。


そして春子の母(ゆにば)の行き場のない寂しい心根。自分が寂しいばかりに春子を思いやれない母なのだ。その母が新しい男(秋元康)を結婚相手だと連れてくる。その男が春子を色めがねで観るという悪循環だ。


一方で誰とでもやりまくる特定の彼氏を持たない夏子(しまおみほ)。高校生の男子・相田(勃起崎鋼太)が片思いの吉川(藤井牧子)、相田に恋する一途なブス女子高生(背能じゅん)。メイド喫茶店長(和田哲也)とその恋人(じょん)の長い春がゆえの倦怠感。しかし店長が従業員の秋子(森みどり)と浮気をし、やっぱりお前がいいと気づいて元鞘的に彼女との結婚に踏み切るという刹那。その他、オナニー女、オナニー男、不満な主婦、上司に叱られ過ぎる男・・・と実に登場人物は入り乱れるのである。


それらが絶妙に絡み合い、これまた絶妙に交錯しながら四方八方で展開される。一見、解りづらそうな場面だが物語は単純だ。だから演出の冥利でこれだけの見せ場を描写することが出来たのだ。登場人物の全てがどこか、愛に飢えていて寂しいという設定だ。だからこそ投げやりになったり、時には自分を痛めつける。


松本みゆきの演技がいい。女子高校生らしい表情が素敵だ。そして心にぽっかりと空洞を抱えたシリアスさが素晴らしい。あまりにも悲しくて泣けた。それに相反したキャラクターの古塩貴也の演技に和む。背能じゅん、和田哲也、栗林まんぞう、則元秀之、秋元康も秀逸な演技で冴えていた。つまり、エロかと思いきや、真面目に喜劇さとナンセンスさ、人間の弱さを舞台化した秀逸な作品だった。心から素晴らしい!と絶賛したい。