みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2012/12/05(水) ~ 2012/12/09(日)
会場 シアターグリーン BOX in BOX THEATER
前売・当日とも\4,000
サイト http://haishou.co.jp/backnumber/sabu/


「さぶ」の原作者・山本周五郎の描く人情の世界をそのまま描写していた。本当に素晴らしい舞台でした。観た後に爽やかになり、心に深く染み入る美しき世界観!


さぶと栄二(志村史人)は江戸下町の経師屋である芳古堂に住み込みで働いていた。男前で器用な栄二と、愚鈍だが心根の優しいさぶ(金成均)は二人で助け合いながら日々を送っていた。しかし、金襴の布切れを盗んだという無実の罪で栄二が人足寄場に送られる。ヤケになり、自分の殻に閉じこもろうとする栄二。足しげく栄二の元へ通い、励まし続けるさぶ。そして、栄二を慕う、おすえ(桂ゆめ)、おのぶ(市川奈央子)も彼の支えになろうとする。そんな彼らにさえ冷たく当ってしまう栄二だったが、彼らの愛情や人足寄場での体験によって、だんだんと考え方が変わっていく。そして栄二は本来、もっている人間らしい感情や人に対する思いやりやいつくしみの心を取り戻し、人間不信に陥った彼が見事に立ち直っていくのだった。


まずセットの使い方が絶妙。そして今回、主役を演じた志村の演技力が抜群だった。まるで映画を観ているよう。タイトルは「さぶ」だが、やはり主役は英二だ。英二と真逆の設定である、そして重要な役割を担う、愚鈍なさぶのキャラクターの立ち上がりも見事だった。


今回は人足寄場での人間関係の描写が殆どだった為、気の荒い人足たちが織りなす争いや賭け事、あるいは事件に発展する情景を描いていたが、合間に英二が無実の罪にされた過去を思い出して悔しがり恨む場面の転換も見事であった。


とにかく役者がいい。そして役者のキャラクターに合った役柄への配置がいい。そして悪役を演じきった義一(大川原直太)の演技力にも感服したのだった。ワタクシは勝山了介が登場すると「糞尿譚」を思い出してしまうが、勝山は爺くさく、しょっぱい役が似合う役者だ。だから決してお代官様や岡安喜兵衛は似合わない。思うに、「演技しなくても、そのまま、素で大丈夫ですぜ!」みたいな役者だ。つまり素も爺くさく、しょっぱいのだ。


世の中は能のない人間が能のある人間を動かしている・・というセリフがあったが、そういえば、いつも能のある人間を動かしてるよなぁ。とか思った。