みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2012/11/01(木) ~ 2012/11/11(日)
会場 駅前劇場
脚本演出 古川貴義
料金 2,800円 ~ 3,800円
サイト http://www.hakoniwa-e.com/

2005年再演。マンガ家という職業を題材に、原作者と作画者、編集者の葛藤を描いた作品。今回、全面改稿し、ほぼ新作公演。否定されたくてする質問とは、否定的な言葉によって自分を肯定されようという、何とも卑屈なコミュニケーション手法なのである。


第一印象は、「バクマン」と「ときわ莊」をミックスしたような話だな、と感じた。これを予測して、パンフで再演を強調しているのだけれど、全面改稿とのことなので、2つの本に影響された節を感じる。いずれにしても、再演のタイミングは、もう数年待った方が良かったと思う。バクマンの一つの未来像と捉えれば、面白かったかも。


話の流れとしては、核となるマンガ原作者と作画者の葛藤が曖昧で、最後の盛り上がりが唐突な印象。劇そのもののパクリ感が否めないのに、劇中で焼き直しやパクリがどうこう議論しても説得力に欠けてしまっていた。むしろ、視点をドジな新人女性編集者か居候の妹に当てた方が良かったような気もするのだが・・。


サイドストーリーのインパクトが強すぎて、メインが何なのかが曖昧になっていた。群像劇としても、バランスが悪く、女性漫画家以外はオチが付いていないと思った。また、吉富(小野哲史)は、落ち着いているというより、冷めている印象で、漫画への情熱が感じられなかった。かと言って、諦めているようでもなく。この役に共感出来ないことが観客(ワタクシがだが)が冷める一因かと思う。


羽生(爺隠才蔵)は魅力的に演じていたが、後半の議論で矛盾と感じられる部分があり、それによって羽生の人柄をグレー化させたことで更にインパクトが強調されたと思う。やっぱり爺隠才蔵はいい仕事するなぁ。


手塚(須貝英)、江橋(鷲尾直人)は、スパイスとして良い演技をしていたと思う。そして庄司(片桐はづき)、畝傍(牛水里美)は、アラサー漫画家や実力派アシスタントを印象通りに演じていて、違和感がまったくなく物語に溶け込んでいたと思う。


古渡(白石廿日)は、今時の新人編集者をとても良く表現していたと感じた。現実にはいないけれど、上手くデフォルメしていて、主役に抜擢しても面白いと思い、逸材だと感じて見入ってしまった。榎木田(村上直子)は、難しい役所だけれど、健闘していたと思う。やはり役者としては上手い。


気になった点は、場代わりの音楽が大きすぎて、少しうるさかったこと。劇中には音響効果を入れた方がいい場面があったように思うこと。照明は、良く分からないタイミングで夕焼けになったりしたが、脚本の問題であり、演出としては良かったと思う。


総括:今回の物語は脇が光る。劇中、あだち充の描くアニメは皆、顔が同じ・・・などのアニメネタが満載でヲタとしては楽しめた。