みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2012/10/30(火) ~ 2012/11/11(日)
会場 シアターサンモール
脚本演出 鴻上尚史
料金 4,500円 ~ 4,500円
サイト http://kyokou.thirdstage.com/


鴻上尚史の描く世界は基本的に好きである。まず、作品がひじょうに解りやすいこと。差別や闘争における集団による問題提起が明確であること。いつの世も人は集団によって動かされる生き物だということが示唆されていることだ。しかし、これらを決して絶望的見解で描写してはいない。むしろコミカルに笑いを組み込み、その媒体として富山恵美子を笑いの対象に据えキャラクターを立ち上げたことに今回の作品の可笑しみであり生の舞台の醍醐味だ。


自分達と異なった宇宙人たちに「地球を乗っ取られるのではないか?」と疑心暗鬼になった人間が半ば恐怖心から宇宙人狩りを始める。宇宙人狩りを行うのが日本防衛隊・ジャパレンジャー。日本に安住の地を求めてやってきたのが25万人のエピクラル人だ。彼らは人間として暮らすためには、まず人をコピーして人間としてこの世界に溶け込むのが一番と考え変身をする。


今回の主役はアオイホタルことエピクラル人とその彼氏の人間・沢渡健吾(小沢道成)だ。可愛いホタル役に小野川晶、ホタルの緊張が解けると太ったホタルに変化してしまう役に富山恵理子を起用。豚ホタルと罵倒され、プロデューサーや恋人の健吾に弄られながらも健気にキュートに立ち振る舞う富山の表情がいい。ワタクシはかねてから富山のファンだ。彼女の放つエネルギーは舞台全体を引き締めながらも笑いを一身に受け取る。無くてはならない存在だ。


そしてこの二人のホタルが何度も交互に入れ替わるのである。なんとも巧みな設定だ。流石は鴻上。また、エピクラル人には王位継承権があり、ホタルは皇位継承権第九位なる第83代女王だという。こんなエピソードもファンタジーだ。ここに地球人同士の差別から逃れようとするプロデューサーの思惑が加わり、エピクラル人VS地球人の戦いに発展させようと企む。


終盤では北海道の釧路に宇宙人だけの特別区を作ってそこに移住する計画が持ち上がり、また宇宙人を迫害するために罠も仕組まれる。そして「誤解です。私達は地球人と仲良く暮らしたいだけなんです」と訴えるホタルを庇うように健吾がその罠を暴露させるが、この健吾の心意気をホタルに悟られないように身を隠す健吾。


全体的にコメディ。富山恵理子の登場で一瞬、何が起こったか解らなかったが、「ああ、なるほど!」と納得したところで大爆笑!パタリロ的な動きの彼女には相当、笑わせられる。


また、当日パンフにはキャスト名は印刷されてあっても役柄は無い。有料パンフレットにも役柄は載ってない。これは鴻上の意向だそうで、脚本を売るときに全てを明らかにしてしまうとマズイらしい。つまりは今後のギャランティーに影響するということなのかしら?役柄の公表ぐらい、あまり影響なさそうだけれど・・。

相変わらず、当日配布される、鴻上の「ごあいさつ」文が素敵だ。これは毎回楽しみにしている。


イントレランスとは不寛容ということ。たとえば、全ての人類がなりたい自分になれたら、自分を好きでいられたら無駄な争いは無くなる。