みさの小劇場ウオッチ日記
公演期間 2012/10/26(金) ~ 2012/11/04(日)
会場 萬劇場
作曲 脚演出 浅井さやか
料金 4,800円 ~ 5,000円
サイト http://oneonone.jp/


2001年秋、早稲田大学ミュージカル研究会を引退した浅井さやかが、自身の作&演出&作曲でオリジナルミュージカルを上演するという体制で創立された“One on One”。その旗揚げ公演として上演された「しあわせの詩」の再演。

お話は、雑誌記者の健(内藤大希)と、キツネの桔平(上野聖太)の交流を描いた物語で心温まるファンタジー。


雑誌記者の健は取材の為に健の生まれ故郷・九州に訪れる。そこには、お稲荷として生きる狐たちがいた。彼らは健の再来を懐かしく想い、桔平が健に近づくと不思議ながら人間には見えないキツネたちの姿を健は見ることが出来るのだった。


それは今は亡き健の母・詩織(千田阿紗子)が崖から滑り落ちた際に、桔平の血で詩織の怪我を治癒し命を助けた事が起因していた。この時、詩織は健を身ごもっており、無事に生まれた健は「怪我をしても一瞬で治る…傷つかない」という不思議な力を持ち合わせていたのだった。


一方でキツネらは不老不死であったが、たった一つ、本当に心からの願いをかなえることができたら旅立てる-死ねる-という伝説があった。願いを叶えて旅立ちたいと日々祈る狐たちと、健が出会い、詩織の日記を鍵に、桔平が詩織の願い(この子が笑ってくれればいい。そして幸せな人生を送ってくれればいい。)と、健の願い(痛みの解る普通の人間になりたい)を同時に叶えて旅立つ・・・という秋の空にぴったりの、少し切ない、しあわせの物語。


キャストたちの歌がひじょうに上手い。これほどとは考えていなかったので凄く感動!そして身ごもった詩織の母としての願い。キツネたちの優しさ。普通の人間ではなかった健の願いを、世代を超えて一匹のキツネが叶え、この行為に満足して旅立つという構成があまりにもお見事だった。


いつの世も犠牲的精神に基づく物語は観客を感動させる。またキツネの掟を破ってまでも詩織を助けた桔平の心に泣けた。不老不死のキツネの血が混じると「怪我をしても一瞬で治る…傷つかない」というアイデアと自分の旅立ちに満たされた気持ちで逝った物語性が絶妙だった。全体的に童話的で美しい舞台だった。ワタクシ好み。

お勧めの舞台である。


それにしても、ワタクシもキツネの血が欲しいな。「怪我をしても一瞬で治る」というのはとてつもなく素敵なことのように思える。個人的に200歳まで生きたいと常日頃、考えてるのだから、いっそのこと不老不死でもいいかな・・って。笑