みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2012/10/25(木) ~ 2012/10/28(日)
会場 「劇」小劇場
出演 龍田知美、与古田千晃、齋藤友映、小田島亜庭、海原美帆、菅谷和美(野鳩)、林剛央、星野恵亮、宮崎雄真
脚演出 大橋秀和
料金 3,000円 ~ 3,300円
サイト http://www.garadama.net/stage/hoshiyomi/


生保レディのお話。信じるとは何なのか、改めて考えた。鰯の頭も信心というが、日下(龍田知美)の占いもエビちゃん(宮崎雄真)のトークも、結局は相手をコントロールするテクニックであると同時に、自分自身をもコントロールする手段なのだと思った。


そもそも、保険は賭に近い性質の商品であり、不払い問題を背景に契約説明もかなり改善されたが、人間関係が希薄になっても未だに「信用」で高額な契約が成立する分野の一つだ。また、歩合制で営業成績がシビアとも聞くので、テーマの舞台に最適であり、脚本の着眼点がすばらしいと思った。


ミユ(与古田千晃)のように、最初から信じ込みやすい人のみならず、キリコ(齋藤友映)のように気丈な女性でも、心に隙間が出来ると取り込まれてしまう恐ろしさを感じつつ、これらを演じる役者らは、それぞれ個性豊かに演じていて、生保レディあるあるをみているようだった。


その中で、龍田知美は他とは一線を画する演技で、難しい役所を見事に演じていたように思う。日下が放つ「依存しない人は依存してる人を不安にさせる。だから弱い人間から嫌われる。」というセリフがずしん!と心に響き、龍田知美の持つ独特の強い目線がカッコよかった。


堅実そうな所長、怪しい海老名(宮崎雄真)もありがちな上司像を上手く演じていた。生保レディ達の話は、似たようなことが色んな職場であるだろうし、会社員にとって共感しやすい内容だったと思う。


演出面では、舞台を挟むように客席が配置され、方向によっても違った見方が出来そうで、面白かった。「劇」小劇場では初めての対面式だったのではないかなぁ。こちらからも反対側の観客が視界に入るのだけれど気にならなかったのは、役者らの演技力が優れていたからだと思う。


場面転換も工夫がこらされていたが、喫茶店の場面は持ち帰り用のコーヒーカップだけでは辛かったと思う。シュガーポットや紙ナプキン程度の小道具があれば、見え方が違ったように思った。


終盤では、オオタ(林剛央)が納得したのか、日下の占いは当たり続けたのか、キリコは立ち直ったのか等々、気になったが、問題提起として良い作品だったと思う。