みさの小劇場ウオッチ日記

2012/10/17(水) ~ 2012/10/21(日)
会場 サイスタジオコモネAスタジオ
出演 山下純、如月萌、政井卓実、中尾至雄、油井原成美、ヒマラヤケン、他
脚本 林灰二(Oi-SCALE)
演出 林灰二(Oi-SCALE)
料金 3,000円 ~ 4,500円

サイト http://www.oi-scale.com/index2_if.html/


相変わらず導入音楽が素敵。物語の構成も相変わらず物語の軸を伏線として撒き散らし、終盤でこれをかき集め、観客を納得させる。だから中盤までは誰もが精神病院での一こまと考えたに違いない。しかし、観ているうちに5人の老人達の物語りなのだと解ってきた。


舞台は人里はなれた森の中に建つ老人ホーム。看護師を交えた連想ゲームのシーンから。この連想ゲームは老人達が痴呆にならないように毎日、訓練するものでリクレーションの一貫だ。


リクレーションの合間にも老人達は特有の思い込みや過去の思い出に浸りながら、自分が作り出した世界の住人になってしまっている状況を描く。ある老人は17歳の頃からずっと歳をとらない。ある者はこの施設に隔離され自分達は人体実験(新薬や細菌兵器の)にされてるのではないか?と勘ぐる。


この施設では看護師が鏡と時計を老人たちが持つことを禁止しているせいか、彼らの時はある一定の年齢から刻まれていない。また鏡で本当の自分を見られないから、しわくちゃの年老いた自らの顔を確認することができない。ある意味、現実を見ないで暮らせるというものだ。


物語は老人達の脳が少しずつ萎縮し痴呆になる行程を表現しながら、老人達の独特の思い込みや世界を表現していた舞台だった。終盤では5人の老人達に現実を見せつける。リアルな表現だっただけに怖い。


団塊の世代の観劇者やこれに近い年齢の方は身につまされる舞台だと思う。そうでなくてもこれから老人の比率が高くなる日本。人事ではないのだ。観た者にしか解らない切実な問題だと思う。