みさの小劇場ウオッチ日記


期間 2012/10/10(水) ~ 2012/10/14(日)
会場 劇団キンダースペース アトリエ
出演 瀬田ひろ美、深町麻子、大桑茜、森下高志、朝日望、桝谷裕、西村剛市
脚本 演出 坂上朋彦
料金 1,500円 ~ 3,300円

チケット/
前売券 3,000円 
ペア券 5,700円
養成所割引券 2500円
学生割引券 1500円

サイト http://www.kinder-space.com/


劇団キンダースペース新進若手演出家 坂上朋彦の作品。坂上の作品は「どん底」をベースにした「明け暮れ狂騒曲」も観ておりワタクシ好みの演出家である。今回の作品の原作には「夢の酒」「天狗裁き」「芝浜」と落語の題材を選び、演劇として立ち上げ、三作品にしたもの。


「夢の酒」 
夫が居間で、ニタニタ笑いながら転寝をしている。それを見た女房がどんな夢を見ているのか気になり、夫を起こす。夫が言うには、ひどいにわか雨に遭い、軒下で雨宿りをしていたら、中からこの世の者とは思えない程の美しい女性が現れ、家に上がって休んでいって下さいと言われ酒も馳走になったという。それを聞いた女房は夢の話とはいえ大いに嫉妬し、父親に「淡島様に願掛けて夢の中に行ってその女を叱ってくださいまし」と詰め寄る。父親は「淡島さま、倅の夢にお導き下さい」と願い夢の中に入るのだが、息子の時と同じように美しい女性が現れ冷酒を勧めるも、冷を飲んで失敗した事柄を思いだしこれを断る。しかし息子の女房に揺り起こされ目が覚めると「失敗し
た冷酒でも飲んでおけば良かった」と悔いる。


「天狗裁き」 
不精な夫が女房に言われる。「ゴロゴロばかりしてないで、何か商売のことでも考えたら! 隣の主人はいい夢を見て、商売大繁盛だよ。だから、あんたも何かいい夢をお見よ!」強引に寝かされた夫は、ウトウトとまどろむ。そこで女房が、夫を起こしどんな夢を見たんだいと聞く。夫は見てないと言い、女房は見たに決まってるという。夫婦喧嘩になり、近所のものや、大家、果ては奉行や天狗までが仲裁に入るも、隣家の男もその夢を聞きたがり、家主が聞きたがり、奉行が聞きたがる。そして奉行所で拷問にかけられそうになると天狗がやってきてこの夫を助けるも他の人々同様に夢を聞きたがる。夫は見てない夢は話しようがないと言うと、「天狗を侮ると八つ裂きにしてしまうぞ!」と胸ぐらを捕まえ、脅し始めた。「痛いイタイ!助けてください!勘弁して~くださいよ~」。


「何だね。この夫(ひと)、うなされて? チョイと~、お前さん、どんな夢見ていたんだい?」「夢? ・・・夢なんて見ていないよ。」「ウソだよ。見てたよ。ブツブツ言ってたよ」「見ていないよ」「アンタって、いつもそうなんだから。夢の話ぐらいしてくれたって良いだろ」と詰め寄った。  この噺は永久に回り回って、終わりのない噺だ。



「芝浜」 
酒ばかり飲んで怠けている夫に女房は、仕事に行ってくれと泣きつく。しぶしぶ夫は、仕事に出かけるが、その道中で皮の財布を拾う。その中には五十両という大金が入っていた。夫は仕事に行くのを止め、また家で酒を飲みだす。翌朝、再び女房に仕事に行ってくれと言われる。夫は、昨日拾った五十両があるんだからもう働く必要はないと言うと、夢でもみたんだろうと女房……。夫は現実の生活を突きつけられ、「なんだ夢だったのか・・」と落胆するも気を取り直し真面目に働きだす。そのかいあって3年後、夫は借金も返し店を構えるまでになった。ここで女房はあの時の五十両を告白するのだった。


3本の作品ともとても面白い。勿論、そこには演者の演技力あってのことだ。また女優陣の着物姿の佇まいが美しい。どれも人情の機敏さの本筋がきちんと押さえてあり楽しめた。特に「芝浜」での妻(瀬田ひろ美)と夫(桝谷裕)の表情の見事さ。素晴らしい役者だと心から思う。 緻密な構成と人情味、そして素晴らしい賢夫人。誰もが、こんな良い女房に出会えていたらと願うほどの賢夫人で、この作品を終盤に持ってきたのはやはり絶妙。