みさの小劇場ウオッチ日記

東京セレソンDX最終公演を観られて感慨深かった。見納め公演としてはすこ~し期待はずれだった。歌姫から話題の作品は観て来たワタクシとしては、もうちょっと泣かせて欲しかったのだ。実際、数年間、観て来たセレソン舞台では号泣に近いほど泣かせてもらったものだ。意外にもセレソンは再演の繰り返しだから、その度に脚本の練り直しをして完璧に近いものを提供してきたふしはあるのだが。


しかしながら今回の『笑う巨塔』はなんだか、いにしえのコメディで斬新さがまったく感じられなかったし、また泣けなかったのも不満の原因。思えば、旗揚げから14年。俳優・脚本家としてもノリに乗ってドラマ、映画等で活躍するようになった宅間孝行だが、たぶん、ヒット作「歌姫」あたりから有名になったのだと推測する。宅間が主宰で、数々の笑えて泣ける名作を上演してきた東京セレソンデラックスだが、宅間がドラマや脚本家として有名になり、ひっぱりだこになると、立ち上げ当時からの劇団員との舞台に対する考えや比重が溝を引き起こし、これらの軋轢も加味して「歌姫」公演後、劇団員が激減したのは観劇マニアの知るところだ。


いつの世も、劇作家だけがのし上がると劇団自体が消滅あるいは解散してしまうのが常だが、個人的に思うことは、チャンスがあればそれを逃がさず掴むのは当然のことだし、また男として(古いな、女もだが)名声は欲しいだろうし経済的にも上を目指すのは当たり前のことだと思う。小劇団というカテゴリーからいつまでも脱出できなかったら、それはただの趣味に過ぎないのだと思う。以上のことから宅間のしてきたことは決して悪いことではないと単純に思う。


しかしながら、今回の舞台はキャストを生かしきれてなかったし、個々のキャラクターがイマイチでインパクトに欠けたのも事実だ。意外にも松本明子の歌が上手かったのはびっくりなのだが。笑


物語は都内某所のハイソな病院を舞台に、カン違い、行き違いのオンパレードで巻き起こる連鎖反応だが、こういった筋の物語は多い。暗転なしのドタバタシチュエーションコメディで、宅間のアドリブによる役者いぢりが面白かったが、この役者の受け答えで、観客が楽しめるかどうかの博打的公演だ。最後は上手くまとめ、みんな幸せ!で終わるあたり宅間ワールドだ。


幕後、観客を巻き込み、スタンディングさせ手拍子させる場面はやはりその場の空気を盛り上がらせる。そして以前から何度も観て来た場面、宅間の観客にお願いする「ぜひに口コミをお願いします。」は相変わらず神妙な表情で訴える。これで観客を味方につけ本当の芝居は終わるのだ。とんでもなく巧妙な構成力だといわざるを得ない舞台なのである。


今後も、是非に活躍して欲しいと願う。「くちづけ」の映画化も決まり、油の乗り切ってる宅間なのであった。