劇団・団体 シンクロナイズ・プロデュース
公演期間 2012/8/9~2012/8/19
満足度 ★★★★★
出演 早川毅, 草光純太, 水谷純子 他
脚本 安部公房による久次米健太郎構成
演出 久次米健太郎
料金 3,500円 ~ 3,500円
【発売日】2012/06/01


サイト http://synchronize-p.com/



みさの小劇場ウオッチ日記


結構、コミカル。笑
出だし、どーでもいいような歌唱ショーあり。キャストによっては気恥ずかしいのか、そのまま表情に出ているのも可笑し。

「人命救助法」
少年・ワシオのいたずらから発展し大人たちの思惑で、名誉や金を得んものとでっち上げた人命救助。しかし悪徳業者のように、絞れるだけ絞ろと企んだワシオの父親は3人のニセの救助にあうも溺れてしまう。死んだかと錯覚した3人だったが、ワシオの父は生還する。この時点で別のヒーローが登場してはまずいと考えた3人は本当にワシオの父を殺してしまう。

不条理ど真ん中な作品。阿部公房作品の魅力はいつも最後に待っているドンデン返しの皮肉だが、ここでも存分に味わえる。キャスト陣の演技力も魅力だ。



「タニンノカオ」
作者の代表作の一つ。施設の爆発事故で「自分の顔」を喪失してしまった男。顔を失ったことが原因の一つとなって、妻の真情を疑う夫が仮面を作って「他人」になりすます。ここで妻の真意を確かめようとするあまり、他人の顔になった夫は妻を誘ってみる。すると妻は簡単に誘いに乗り、抵抗なくセックスにも応じてしまう。

あまりにも簡単すぎる妻に失望した仮面の夫。一方で仮面の男は自分の夫であると解っていて、夫はお芝居という虚構を楽しんでいるのだと承知していた妻。

仮面が象徴する「顔」がワタクシたちにとって何を意味するかを考えさせられる。そして、あくまでも表面的な象徴である「顔」の考察と共に、舞台上で繰り広げられる男女の間に存在する心の闇を映し出した演出が見事だった。

我々は個性を持つ、そのために、性格規定がなされ、自身の能力に限界が設定されていると言えないか。名誉を求める人がいるが、そうでない人もいる。前者にとって不名誉は苦しみだが、後者にとっては無意味であるだろう。

作品の中にエピソード的に語られる少女が印象的であり、作品全体のテーマを暗示しているように思われる。少女は不幸を背負っているが自覚のない不幸は不幸ではないという行も緻密で詩的な表現だ。

ヨーヨーの少女役を演じたのは水谷純子で間違いないだろうか?
素晴らしい演技力であった。
鏡を使用した演出、構成、入れ替えのキャストを使用したトリック、面白い!

全体的に過去の作品と比較すると解りやすく大衆的になったと感じる。