みさの小劇場ウオッチ日記


公演の詳細は演劇ライフを見てください。

ワタクシは脚本家のひがしじゅんじが好きだ。そして彼の作品はここ数年でかなり腕を上げていると思う。たぶん、それは彼自身が観客を意識した作品を作り上げているからではないだろうか。

今回の作品の全ての登場人物はなにかしら闇を抱えて生きている。主役の安田(海老根理)だって親が有名でなければあのようにはならなかったかもしれない。弱い人間だ。また安田の父が囲っていた愛人の娘・須永(大塚実紀子)だってその属性の為に病んだともいえる。かくして須永と同じメイドの武藤(松島輝枝)にいたっては安田の父親の愛人だったという。

つまり、みんな兄弟!なのである。笑
こんなオモチロイ芝居があっていいものか!これがワタクシの第一印象だ。更にその安田の親友である岩元(横島裕)は常に安田の傍に張り付いていてメイドの二人、須永と武藤、そして友人の田村(新名亜子)をも同時に狙っているという設定だ。その田村は安田に告白するも何度も振られるフラレ女だ。これらを全部知りながら、機会をじっと待つ男、岩元。

舞台は安田家の居間から始まり、傍若無人に贅沢に振る舞い俺様になった安田が、メイドをこき使い、いびりながら天下を取った気で居たが、安田家の当主である父が死んでから坂道を転がるように立場が逆転する。安田家は田村の父の手に渡り、田村が今度は安田を、メイドたちをこき使うという逆転劇は、演劇ならではの味わいだ。

現実にはそうない。そうないからこういった虚構を演劇で楽しめばいい。そうしてこれらの会社同士の争奪に絶妙に絡み合うコンサルタントの川原(谷仲圭輔)。更に何のために登場していたのかが解らない坊主の金子(伊藤毅)。この坊主の登場は後になって般若心経のような音楽が導入されたあたりから、「ああ、なるほど!」と感心してしまった。

静謐な機械のように話す二人のメイド、安田の妹・洋子。これらは安田にとって家族なのだが、これに気付くのが、自分は裸の王様だったと気付くのと同時期だ。この舞台の捉え方は個人の感情に左右されるものだが、ワタクシはこの舞台が面白くて仕方がなかった。それはきっとこの物語を織り成す構成があまりにも滑稽だったからだ。一番コミカルだったのは二人のメイドとモデルだ。

導入音楽が素晴らしい。また物語を魅惑的にさせる音響。だから演劇は面白い。そしてひがしじゅんじに小さなエールを贈りたい。