みさの小劇場ウオッチ日記


公演の詳細はこっち→ http://engekilife.com/play/23933/review

素晴らしか~!!何が素晴らしいってキャストの演技力!
そして照明を薄暗くすることでその時代の労働者たちの経済状態をも想像させる。
更に演出の見事なこと。まったく欠点の探しようもない舞台だった。みんないい仕事するなぁ。


1950年代、NYブルックリンのイタリア系移民社会を舞台に、港湾労働者エディー(吉原光夫)と妻ビアトリス(末次美沙緒)と姪キャサリン(宮菜穂子)との慎ましくも平穏な暮らしは、仕事を得るため不法入国という危険を冒してイタリアからやってきたビアトリスの従兄弟:マルコ(斉藤直樹)とロドルフォ(高橋卓爾)を匿い始めることによって歯車が狂い始める。


やがてエディーが慈しみ愛して育てたキャサリンがロドルフォと恋に落ちてしまうのを平常心で見ていられないエディーは業を煮やして弁護士アルフィエーリ(中嶋しゅう)の元を訪れるもアルフィエーリからは「キャサリンがロドルフォと付き合うのは違法ではない。温かく見守ってやれ。」と窘められる。


一方でエディーがロドルフォを毛嫌いする態度に反感を持つキャサリン。キャサリンが自分の手から離れてしまうのを恐怖にさえ感じたエディーはあらゆる手を使って二人を離そうとするが、やがて二人は結婚を決意する。そんなキャサリンとロドルフォの結婚式が決まった矢先、移民局にマルコとロドルフォを通報してしまったエディーはマルコと争いになって刺されてしまう。


物語はエディーがいつしかキャサリンを愛しすぎてしまったことからはじまる愛憎劇だ。主人公エディ役の吉原光夫(レミゼラブルのジャンバルジャン(2011)→ジャベール(2013))をこんな間近で見られるなんて・・。家族を愛しながらも複雑な感情を抱えるエディを、おっきな背中と温かい声、優しいまなざしで作り上げてた。


そして芝居のキーパーソンとして登場するのは、「今は亡きヘンリー・モス」に出演されていた中嶋しゅう。舞台に登場した瞬間の重厚なあの感じはなんなんでしょうか。


エディの妻ビアトリス役の末次美沙緒は、独自にサブストーリーを作り上げる役作りでホント素晴らしい。そして最愛の姪役を演じるのは宮菜穂子、溌剌とした中に芯の強さを感じる女優(アンナ・カレーニナのキティ役、サンセット大通り等)で今回の役もすっごくキュート!


更に登場するキャラクターの人物描写が非常に深くて緻密!愛情、憎しみ、恐れ、同朋への道義心、そして虚栄心・・・人の感情の渦の先にあるものが舞台上で繰り広けられる役者らの力量によって充分に充実した芸術だった。100席ほどの劇場でじっくりと舞台を堪能できる贅沢感をひしひしと感じ満たされた1時間45分だった。


「正義なんて行えるのは神様だけだ。神様がいたらの話だが。人はほどほどで満足するようになってる。そのほうがいいんだ、物事は過ぎると自分が破滅するほどほどで手を打つほうがいい。」という劇中で吐く弁護士の言葉に共感した。