とある町の便利屋「ジェントル」。ここには江崎不動産(森一弥)が休憩だといって毎日のようにやってくる。次の市議会議員立候補の票集めとやらで何かと忙しそうだが、そうは見えない。そのうち、「ストーカーされてる、匿って!」などという女が転がり込んでくる。そうかと思えば高血圧と診断され、再検査を余儀なくされた広田(吉村京太)が「自分は余命いくばくもないからと、幸せな家族の風景をビデオに収めて欲しい」と便利屋の門をたたく。


物語はシリアスに展開していくのかと思いきや、どいつもこいつもしょもない理由でやってくる。つまり、法律に引っかからない仕事なら何でも請ける便利屋にこれまた、どうでも良さそうな案件を運んでくる依頼人とのドタバタ喜劇だった。


終盤に便利屋の娘が「お父さんが一番のジェントルマンだよ。」なんてホロリ・・とさせるセリフを吐き、涙ぐむシーンもあったりで、便利屋の社長はこの商店街で憩いの場としてずっと仕事を続けていくことを決意するのであった。


なにげに江崎不動産(森一弥)のキャラクターが実にいい。彼が居るのと居ないのでは舞台全体が醸し出す雰囲気がまったく違う。またどの役者も演技力に安定感があり、特にオカドミキと前澤航也と深沢邦之がきっちりと締める。本は実に解り易くベタだ。安心しての~んびりと観ていられる舞台だった。