みさの小劇場ウオッチ日記
公演の詳細はこっち→ http://engekilife.com/play/23196/review


豊かな感情表現と圧倒的な歌唱力で劇場全体を掌握した韓国ミュージカル。すんばらしいです!切り裂きジャック事件をモチーフにし、チェコで生まれ、韓国で大胆にリメイクされたミュージカルですって。ですってと書くと他人事のようですが観てきました。八王子に台風が上陸したっていうのに。苦笑!


時は1888年ロンドン。捜査官アンダーソンは、売春婦だけを狙い殺人を続ける「ジャック・ザ・リッパー」(切り裂きジャック)」を追っていた。売春婦だけを狙う残忍な手口のため、マスコミに公開せず捜査を進めようとするも、ロンドンタイムズ紙の記者モンローはコカインに溺れるアンダーソンの弱みにつけこみ事件の情報を探る。結局アンダーソンはモンローにスクープ記事のネタを提供し、事件に関する記事への対価を得る取引をする。


4回目の殺人が起こったある日、アンダーソンの前に犯人を知っているという情報提供者が現れる。その情報提供者とは7年前に臓器を求めてアメリカからロンドンに渡ってきた外科医「ダニエル」だ。アンダーソンとモンローはダニエルの証言を聞くことになる。そしてジャックの正体が次第に露わになる一方でダニエルは火事で焼かれた恋人の命を救うために臓器移植を試みる。


数日後、ロンドンタイムズ紙の1面に「ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)」の殺人予告が掲載され、事件はますます混迷の度合いを深めていく。アンダーソンは囮捜査を計画するが、ここで予期せぬ別の事件に巻き込まれ、囮となった売春婦も殺されてしまう。これを殺ったのがダニエルだった。つまりジャックはダニエルで、ダニエルはジャックだったという筋。この全容を知ったダニエルの恋人は自害し、ダニエルもアンダーソンに殺される。こうして事件の真相は闇から闇へと葬り去られついに未解決事件のままになる。



美しいバラード、狂気を帯びたロック、感情をむき出しに壮絶に歌い上げるナンバーなどなど、全編歌で綴られるこの作品は、韓国で4年連続上演されただけあって、その歌唱力、熱狂が、そのまま青山劇場にやって来たようなもの。まるで嵐の夜を呼び起こしたような熱量だった。とにかくハンパない。


退廃的なロンドンの街を舞台に、残忍な連続殺人の真相究明というスリルにドラマティックなラブストーリーが絡み合い、一瞬たりとも気が抜けない展開。そしてキャストらは韓国語しか話さないから、字幕を見たりキャストの表情を観たり、歌唱力に酔いしれたりと、別の意味でも気が抜けない!


更にスタイリッシュなダンス、ショーアップされたシーン、そして細やかな演技と圧巻の歌声が劇場全体を支配し圧倒的な力強い舞台だった。素晴らしいのはキャストの全てがものすっごい歌唱力だったこと。特に、狂気の男ジャックのドラキュラ的な声に震えた。お勧めできるミュージカル!