みさの小劇場ウオッチ日記



公演の詳細はこっち→ http://engekilife.com/play/23852/review


プレビュー公演を観劇。一言で、ものすっごく楽しい。
ままごとの柴幸男の作品というだけで客が押し寄せるという現実は流石。かつて・・というか劇団を立ち上げたばかりの彼の作品は正直申し上げて好みではなかった。しかし、その数年後、作品の描写が変わり「わが星」でヒットを飛ばし、第54回岸田國士戯曲賞受賞してからは魅力溢れる舞台を作り続けていると思う。


そして今回の作品も□□□(クチロロ)の三浦康嗣、モモンガ・コンプレックスの白神ももことのタッグだ。もはやこの3人ありきなのかもしれない。肝心のキャストらの歌唱力だが、正直申し上げてバラツキがある。そのバラツキが妙なアンバランスをかもし出し、まとまって聞こえてしまうところが謎なのだが。笑


そういう面で新世代の音楽劇『ファンファーレ』なのか?笑


序盤、アンバランスな歌から始まるが、何故か夜のサーカスや、パレードを彷彿とさせる場面は演出の効果なのだと改めて思い知らされる。そんなだから序盤から会場全体が妙に楽しい雰囲気に飲み込まれ気分はパラダイスだ。


第一幕「ファーレ 旅立つ」
とある田舎の一軒家。ファーレ(名児那ゆり)はレッサーパンダ先生(重岡佐都子)と暮らし先生から音楽を教わって育つ。ファーレには両親が居ない。そしてうまれつき「ファ」と「レ」の音しか歌えない。ある日、ファーレは捨て子だったことを先生から告げられる。その事実を聞いたファーレは先生の下を離れ両親を探す旅を始める。なんだか、「母を捜して三千里」みたいな展開だが、あまり悲壮感はないものの、ファーレの悲しみが活発な彼女の裏側に見え隠れして、ホロリ・・とさせられる。快活なファーレを演じる名児那が素敵だ。
ワタクシは第一幕のファーレが素朴で、かつキュートで一番好きだ。


第二幕「ファーレ 決意する」
旅立ちから数年後。ファーレ(初夏)はbable、あしのうらみょうが と一緒に町の劇場裏で音を盗み暮らしている。町奉行の人生に追われながら生活するも人生によってその歌唱力を認められアロンアロハ(西尾大介)が主催するオーディションに参加する。


第三幕「ファーレの結婚式」
更に数年後、ファーレ(坂本美雨)はオーディションに受かったものの、「ファ」と「レ」の音しか歌えない事から歌手・地引網(清水久美子)のマネージャーをしていたが、地引網は彼女の歌唱力を認め歌手になることを推薦する。そしてファーレとアロンアロハは結婚し、式場ではファーレに関わった人々の思いがかけめぐる。時を同じくしてカレーレディオで歌を歌ったファーレの歌詞を聴いたカレーライス(柳瀬大輔)は聞き覚えのあるその歌をヒントに、ファーレに実の両親の事実を教え今はもうこの世に居ないことも告げる。落胆と絶望に苛まれたファーレだったが、「ン」しか話せない親友のポリ夫(大柿友哉)に慰められ、両親を想い歌を歌うファーレ。


これらの物語をパッション溢れた楽曲に載せて、あらゆる要素を盛り込み構成された舞台だった。物語のナビ的役割を担った5$(今村洋一)の絶妙な語り口が素晴らしい。ユーモアな語り部だ。歌唱力で魅せたのが重岡佐都子、柳瀬大輔、坂本美雨、今村洋一など。


全体的に解りやすいドラマだ。しかし演出の効果で、ふんわりとしたユーモラスな部分と、賑々しく愉快な部分の両方で魅了させられた。回想すれば、観劇中ずっと頬が緩みっぱなしでニコニコして観ていたように思う。まるで玉手箱のように精神的な宝物が凝縮された作品だったと思う。


幕後、拍手は鳴り止まず、役者は再登場しお辞儀をしていた。成功でしょ。だってほんとうに楽しかったもの。もう一回観たい舞台。


てんでバラバラでデタラメな世界を生きる、ファとレしか歌えない少女の成長を描いたファンタジー。