みさの小劇場ウオッチ日記


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http://engekilife.com/play/23622/review


セットと照明が素晴らしい。まさに視覚的にも満足!

地方都市に生きる若者たちの閉塞感溢れる日常を、シニカルにけれども愛情をもって描く青春群像劇だったが、聞きしに勝るかなりの異色作だ。物語に結論はない。


「テキサス」「飛び加藤」等、手掛ける演出家・河原雅彦と、映画、映像界からも熱い注目を集める劇作家・演出家・俳優の赤堀雅秋(劇団THE SHAMPOO HAT主宰)タッグ。タイトルは“愚か者がだらしなく伸ばしている鼻毛はトンボがつなげるほど長い(途方もなく愚かな様子)”、という意味の諺(ことわざ)から。


物語は、とある片田舎で起こる連続通り魔事件。犯人が捕まらない中、被害者が増え、苛立つ刑事ら市民らの前に、奇妙なことを言い出す男が現れる。奇妙なこととは・・小惑星が地球に落下し、雨が降り続けて大洪水が起こる。これをペレイラの大洪水と言い、ここから脱出するためにはノアの箱舟に乗るほかない。しかしそこに乗るには選ばれたツガイしか乗ることが出来ない・・というものだ。劇中、エホバの神を祭った自己陶酔に浸っている。というセリフがあったが、エホバを題材にしたものどろうか?


序盤から犯人の種明かしがあり、中盤頃から完璧に犯人を映し出す。しかし、その犯人とやらは金物屋の息子で今は病院に入院してる患者だ。犯人の生きてきた家族環境、属性を描写しながらも、父親が終盤では吐く、「こうなることは分かっていたんだ。だから金物屋を継がせたんだ。家の暗闇でじっと風景を眺めて居ればよかった。外に飛び出すからこうゆことになったんだ。」と息子の殺人を暗に理解していたようなセリフを吐く。


ここで犯人が幼かった頃に捕獲した数十匹のザリガニを足で潰し、黄色い液体を出して眺めていた情景をも説明する。


日常の機微を淡々とした狂気を持って描く視点が抜群だった。そしてそこに関わる人々の闇、ドン詰まりの日常を生きる若者と犯人が織り成すバカバカしくも哀しい業の深さを描き出したサスペンスタッチのブラック・コメディーだ。不思議な面白さがあって、まさに虚構。