おい
静寂の中の声
おい
たった一言
放課後の汗まみれの顔
夕暮れの陽の当たらない水飲み場
水滴の流れる顔で振り返る
やっぱり
その声は
聞きたかった
話したかった
みどの声
みど…そう名付けた
みどのことで溢れるノート
隣同士席を並べておしゃべりしてたのに
クラスは違う
校舎も違う
靴箱の場所さえ
登下校の入り口さえ
今は違う
会えるのは
バレーコートの向こうのみどだけ
友達と笑ってる
声は聞こえない
笑顔だけがキラキラしてる
テスト交換してマルバツつけた隣同士
なのに今はバレーコートの網目から見え隠れしてる
恥ずかしかったあの頃
好きのフタモジ言えなくて
ホントの名前忘れるくらい
みど…って呼んでいた
バレーコートの向こうを探しながら一年たった頃
からかわれた
みどが好きなんだろう?って
恥ずかしくバレたくなかったんだよ
咄嗟にでた言葉は
心と正反対
「あんな奴大嫌い!二度と顔見たくない!」
みど…
あなたはその言葉を聞いていたんだね。
知らなかったよ
みどからの返答は
「俺の前に二度と姿を現すな」
だったね
そうなって当たり前
大好きすぎて誤解をときたくて
みどに謝れたのはもう中学三年生になってたね。
汗くさい体育館のバレーコートの前で
その時
周りの友達は言ったよね
みどはあなたが好きだったんだよ
でも今は好きな人がいる
って
誤解…いや違う
みどを傷つけてたのは自分だった
泣いた大泣きした
申し訳なさと悔しさで
数年後
東京で同級生何人かで集まった
みどの暮らしてるとこにお邪魔した
お互い言葉を交わしてない
覚えているのは
ピンクの公衆電話
高校の同級生のキレイな女の子の名前と電話番号が見えた
だからまた何も言えなくなった
数年後地元で結婚したと風の便り
帰省した時、みどは自分ではなく友達に聞いた
「帰ってきてたと?」
そう あの時の夢叶えたんだよ
そう伝えたかった
言えなかった
中学卒業20年同窓会
1人で歩いていた
おい 姫川ちゃん
あの頃と同じように優しい声で話しかけてきた
緊張してた
あまり話せなかった
ちゃんと伝えられないまま
今度会ったら子どもの頃の思い出話できるかな…
なのに
もう
みどは
いない…
おい
って呼んでくれた
大人になって
ようやく名前呼んでくれた
隣同士席を並べてたあの頃みたいに
なのに
もう
みどは
いない
ずっと終止符打てずにいた
あれは照れ隠しなの
ホントは
バレーコートの向こう
ずっと目で追っていた
みど…
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もういない
この空の上
に
いますか…