現在視聴中ドラマの中から感想を頑張ります。まずはこちら。
『花たちの戦いー宮廷残酷史』KNTV 全50話 → KNTV番組HP

※画像はKNTVさんからお借りしました
JTBC 制作 2013 3月~9月
■出演:キム・ヒョンジュ イ・ドクファ ソン・ソンミ チョン・ソンウンほか
■演出:ノ・ジョンチャン『キム・スロ』『インス大妃』、キム・ジェホン
■脚本:チョン・ハヨン『インス大妃』『王と妃』
あらすじ(KNTV HPより引用)
17世紀朝鮮王朝、第16代王・仁祖は清の侵攻により、冊封国となることを受け入れ、長男ソヒョン世子たちも人質として清に連れ去れてしまう。8年後、朝鮮に帰国したソヒョン世子と嬪宮姜カン氏は、清で学んだ西洋の思想や文明を、自国の新たな国づくりにと夢と希望を抱く。異国の文明を取り入れた基礎改革を考案する世子に仁祖は激怒。その後、親子関係は悪化するばかりであったが、その背後には、王が寵愛する側室・ヤムジョンの存在があった…。ヤムジョンは自らの欲望と野望のために仁祖を心理的に操り、重臣、王妃や後宮と激しくぶつかっていくのだった…。
16話まで感想&解説など(ネタバレです)※画像はすべてお借りしました※
仁祖と悲劇の昭顕世子…以前『推奴』に絡んでこの時代の歴史背景をまとめたのですが、そのときから二人を真正面から扱ったドラマを観たいな~と思っていました。
記事です→「推奴より時代背景あれこれ」
なにせ、朝鮮王朝歴代王のなかで一番の愚王じゃないかと思えるくらいの仁祖、まさか主役にされることはないだろうと思っていたのですが、実は過去にしっかり主役を張ってる作品があります。→ イ・ビョンフン監督が演出した『朝鮮王朝500年』→ウィキペディア記事というテレビシリーズ、その中の『傀儡王・仁祖』(原題は『南漢山城』)です。タイトルからしていかにも…(笑)
このシリーズ、どの作品も面白そうで観てみたいものですが、テレビ放映は期待できないでしょうねぇ。。


■三跪九叩頭の礼■
第1話では、上のご紹介記事で触れている通りの、清の侵攻に屈して籠城していた南漢山城を出た王が、太宗ホンタイジの前で三跪九叩頭をさせられるという屈辱シーンを、悲壮感たっぷりの演出で見せてもらえます。
ウィキペディアによると、仁祖は当初江華島に逃れるつもり(武権政治のときと同じですね)だったものの、清の進軍があまりに早くて間に合わず急きょ南漢山城にこもったため、兵力はわずか、食料も50日分しかなく、その上世子ら家族を江華島で人質にとられて万策尽き、45日めに降伏を決意したようです。
ときは1637年1月30日。激しい雪のなか、輿に乗って城門から出てきた仁祖に対して、出迎えた清の将軍は輿を降りて歩くように強要します。言われるままに一行の先頭にたって歩き始める仁祖。腰まで届きそうな豪雪のなかをよろめき雪にまみれながら、地を覆うばかりに広がる清国大軍の間を抜けて進んでいきます。前方には高々とそびえるようにしつらえられた皇帝の玉座。そこから見下ろすホンタイジの前に跪き、一度目の三叩頭をする仁祖。次に段をのぼり二度目、そしてさらにのぼって三度目と、9回も地に頭をうちつける王様の額は割れて血が流れ…。見守る臣下や内官らは膝をついて号泣し…。

いやぁ、ほんっと、屈辱的、悔しいなんてものじゃないでしょうね。血の涙を流すとはまさにこのこと。朝鮮半島は高麗時代の元への服属とともに、こんなに悲痛な歴史を背負っている。お隣の国の国民性を理解する上でも、この事実を踏まえておくことは(いろんな意味で)大切だと思います。
■主人公、廃貴人趙氏■
ところで肝心の主人公は仁祖の側室で、昭容ソヨン(のち貴人)趙氏、本名ヤムジョン、演じているキム・ヒョンジュさん。

史劇では『商道』『名家の娘ソヒ』でお目にかかってますが、凛とした正統派のお嬢様の雰囲気がお似合いでした。が、こちらではメイクもきつめの野心爛々な妖女に変身です。
この趙氏、末路は廃され賜薬された「廃貴人趙氏」として悪名高いようです。
朝鮮史で悪女といえば、張禧嬪チャン・ヒビン、張緑水チャン・ノクス、鄭蘭貞チョン・ナンジョンの三人が有名ですね。(もう一人キム尚宮を入れて四大悪女とも)
悪女、まだまだいるんですねぇ
彼女の場合はおそらく、仁祖をたぶらかして昭顕世子を毒殺させてしまったことが一番大きな悪女レッテルの要因だと思います。英祖をたぶらかして思悼世子を米櫃死させてしまった廃淑儀文氏と同等ってところでしょうか。

廷臣チョ・ギの側室の娘として、実父にすら顧みられず悔しい思いを秘めて育つ彼女、仁祖側近・キム・ジャジョムの野心の駒として養女になり、王の側室にあがる。
このキム・ジャジョム、朝鮮王朝史でも有名な奸臣の一人だとか。
この方も史劇常連ですねぇ~。チョン・ソンモ氏。

王の側近として信頼され、清の侵攻時には王との作戦を遂行するために大軍を任されていた、のが結局出陣できずに終わってしまったということで、仁祖の激昂を浴びて無人島に流されます。しかしこれは、王が自分の作戦の誤りだったことを隠すために、また、自分が受けた屈辱のはけ口として、ジャジョムに罪を着せたのが実情。
やがて許されて宮廷に復帰するものの、ジャジョムにとって愚王仁祖を打倒することが宿願になっていて、利害の一致するヤムジョンと結託する。
このふたりの関係、張禧嬪と、彼女を後押した東平君の関係に似ています。
彼女には落ちぶれた両班の恋人がいる。
演じているのはハ・ジウォンさんの弟のチョン・テスくん。

『成均館スキャンダル』で両班姿がとても似合っていてぜひまた見たいと思っていたので、彼の史劇登場、うれしいですもっとも、登場後すぐに抹殺されてしまいますが…。
ヤムジョンが入宮するにあたり、もと恋人の存在は邪魔ですからね。
その後数話は亡くなったことになっていますが、実は生きていたってことで復活するはず(笑)←このパターン、定番です
仁祖に気に入られて懐妊したヤムジョンですが、生まれた娘の父親は明らかにこの恋人です

仁祖の第一王妃・仁烈王后はとても気性が激しく、仁祖は頭が上がらなかったそうな。彼女を亡くし、激動の時期を経て憔悴しきっている王のもとに送り込まれてきたのが若いヤムジョンというわけで。すっかり夢中になる仁祖ですが、後見の養父キム・ジャジュムの下心も実は察知していて、次第に彼女を遠ざけます。
王の心を取り戻すには王子を産むしかない!…ヤムジョン、二度目の出産にあたって、もしも女の子だったらこっそり街中から見つけてきた男の赤ちゃんと入れ替えようと画策…!
これまた、英祖側室の文氏と同じことをやってる~

もっとも文氏のときは失敗に終わりますが、ヤムジョン=趙氏の場合はものすごく用意周到で出産も実家でするのですんなり成功してしまいます。
つまり仁祖が息子だ~♪と喜んで抱いてるのは赤の他人、しかも下層階級の子…ってそんなの有りかしらん

こういう設定は近頃の韓ドラ史劇、流行なんでしょうかね。だって『奇皇后』でも同じパターンの展開が…

件のこの王子、実は歴史上とても重要な方とつながりがあります。
前述の張禧嬪の後見=東平君のお父様がこの王子様。
つまり東平君はヤムジョンの孫なわけですね~~。(粛宗にとっては叔父)
たしか、東平君は当時随一の風流人、文人だったはず。その父が名もない庶民夫妻の子だったなんて…いくらなんでもウソでしょう~(笑)←ウソだと思いたい…

まあとにかく、どんどんエスカレートしていくヤムジョンの悪女ぶり、まだ16話でこの先なが~~いです。どこまでいくのやら…
■清での昭顕世子夫妻■
さて、観たいと思っていたもう一人の人物、昭顕世子です。
チョン・ソンウン氏。陰のある思慮深い世子の雰囲気、素敵です。

世子はとても孝心の厚い、どちらかというと小心な人柄で描かれています。実録でもそのように書かれているようですね。
清国に、世子嬪姜氏、弟・鳳林大君 (17代王孝宗)とともに連行され、8年ものあいだ瀋陽にとどまることになります。
清の実力者ドルゴンとの関係を悪化させないように配慮しつつ、妻・姜氏とともに清で売買される朝鮮奴隷たちに心を痛め、彼らを解放して本国に返すための資金づくりに尽力します。
この辺り、とても丁寧にわかりやすく紹介されています。
そもそもは世子嬪・姜氏の提案したことで。清国は農業技術が未熟で野菜の生産量が少ない。そこに目をつけた姜氏、みずから作物栽培に乗り出し清国で売って高い利益をたたき出すのに成功、手にしたお金で奴隷たちを買い戻しては本国に送り返すわけです。
この姜氏がなかなかの女傑。タイトル『花たち…』の花の一人です。
こちらはソン・ソンミさん。

世子のことばかり気にしていたら、奥様のほうが実はすごかった…

どうやら、この女性が世子の悲劇の種を蒔いてしまったようで。
慎重派の世子に対して、姜氏は積極的で物おじせず、進歩的な考え方の持ち主。
清国では女性も乗馬するというので、早速馬に乗る術を会得して周囲を仰天させたり、鍬を手に畑を耕してみたり。たとえ蛮族であっても、見習うべきことは見習い吸収する。なぜ清国がこれほど強大になったかを知らなければ、勝つこともできない。
感銘をうけた世子、妻と共に生産活動を進めます。
■世子夫妻と仁祖との軋轢■
本国では、世子の境遇を案じつつも、ドルゴンに気に入られて清の操り人形にされるのじゃないかと心配な仁祖。実は仁祖には息子に負い目があったようです。世子嬪にはもとも世子と相愛だったユン氏があがるはずだったのが、仁祖の反対のため実現せずユン氏は自害したため、仁祖は息子に恨まれていると思っています。
一方、重臣らも仁祖擁護派と反対派にわかれる。反正主導した功臣たちには、側室に溺れ気性の安定しない仁祖を、しょせんは担ぎ出されただけの一時しのぎ、清国に頭を下げた情けない王など廃して、そろそろ世子に譲らせようかという動きも。
奸臣ジャジョムがこれに拍車をかける。父子の溝を深めようと、清から戻った重臣に入れ知恵して世子夫妻の善行や真意は伝えず、ドルゴンに可愛がられていると王に伝えて疑心をあおります。
姜氏の行動がこれを助長してしまうことに。
生まれて間もない息子を朝鮮に残してきた姜氏は、義父である仁祖がなんの便りもくれないことに腹をたて、しかも新しい王妃が決まり婚礼があるというのに、息子である世子は帰国を許されない理不尽さに怒りを爆発させます。
当時、まだ明の抗戦にてこずっていた清は、朝鮮からの支援を保障するためには人質の世子を手放すわけにはいかない。ドルゴンとしてはゆくゆくは清の意向を汲める世子を王位に就けたい。しかし孝心厚い世子は受け入れない…。姜氏はドルゴンに直談判して、ようやく姜氏のみ一時帰国が許される。
夫である世子の無念を想いながらも、一刻でも早くと馬に乗って朝鮮に戻る姜氏。
本国では女性が馬に乗るなどご法度。なのに世子嬪みずから馬を走らせていると聞いて王宮は騒然。怒った仁祖ははるばる帰国した嫁の前で王宮の門を閉めさせてしまいます

ところが民のほうは大喝采。さっそうと馬を走らせる世子嬪、きっと民にとっては希望の光のように映ったんでしょうね。その様子を噂に聞いた仁祖、ますます嫁への不信感を強めるように。結局、仁祖は一度も嫁に会わずに追い返す。
清にもどった姜氏、夫に怒りや悲しみをぶちまけ、世子も心を痛めます。
こんな感じで、世子と仁祖というより嫁と仁祖の関係のほうがどんどん悪化するんですねぇ

そのころ、清の要請を受けて朝鮮は軍を派遣するも、もともと親明派の将軍、明に投降してしまいます。そのため清は人質の昭顕世子を投獄、世子を牢から出したければ仁祖自ら謝罪に瀋陽まで来いと要求されて激怒する仁祖。ところが王の代わりに行けと言われると尻込みする重臣たち…

この重責をキム・ジャジョムが押し付けられることに…
実はこれはヤムジョンの企み。
後見のジャジョムにいいように扱われるのに危機感を持っているヤムジョンが、こっそり追い払おうと画策したのでした。
仁祖ばかりでなく手駒のはずのヤムジョンにまで煮え湯を飲まされるジャジョム。結局、清の太宗ホンタイジの死去に伴う恩赦ですぐに放免されるものの、ますます仁祖に憎悪を膨らませるジャジョム、養女のヤムジョンをも警戒しなければならなくなります。
今後、この二人の確執がさらに深まり物語が複雑化しそうです。
釈放されたジャジョム、好機を逃さず世子に吹き込みます。本国では民心は仁祖からすっかり離れ、世子様を待ち望んでいると。
さらにはドルゴンから王位を狙うならば援助を惜しまないと水を向けられ、心は揺らぎながらも、父の苦境を思いやって決して受け入れない世子です

さて、姜氏の実父が亡くなります。ところがそれを知らせもせず、事実を知った姜氏が葬儀のために帰国を希望しても許可しない仁祖。
民心をつかんでいる嫁が帰国するのは、葬儀は口実で別のたくらみがあるのじゃないか、自分を廃して世子を王にするつもりじゃないかと勘繰っている。
怒りをぶつける姜氏にドルゴンは、本国に残してきている夫妻の長子を代わりに清国に送るならば夫妻は帰国してもよいと許可しますが…。姜氏にとってはむごい措置です。人質として清に旅立つときに泣く泣く手放した乳飲み子の長子を、今度は清に来させて代わりに自分が帰国するんですからね…。
ともあれようやく、帰国がかなう夫妻です。
しかしこの帰国に絡んでさらなる軋轢が…。
王宮近くでいったん宿舎に入った世子夫妻のもとに仁祖から、夜になってから王宮の裏口から入れという命が届く。理不尽な命令に困惑する一行。送られた輿には黒い覆いまで被せられ…。民の歓呼を浴びるのを危惧した仁祖の非情な仕打ちにも、「夜道を落馬しないようにとの父上のお心遣いだ」とあくまでも父を立てようとする世子に姜氏のジレンマは鬱積するばかり。
■壮烈王妃の台頭■
こうした父子の問題を解決するために尽力するのが、前述した仁祖の二番めの王妃、荘烈王妃です。初々しい王妃をコ・ウォンヒちゃんが演じます。

この荘烈王妃、どこかで見たなぁと思っていたら、そうそう、張禧嬪を入宮させて後見した南人派の擁護者=大王大妃さまなのでした。粛宗の曾祖母ですね
タイトルの「花たちの戦い」に彼女も参戦します。
もっともこの王妃様、他二人よりはずっと年下。15歳で40歳の仁祖に嫁ぎ最初は王から見向きもされないただのお飾り王妃さま。
この王妃さまを巻き込んでの、ヤムジョンと側室たちとのいざこざは、おなじみの呪いあり毒ありのドロドロ路線~
年若い王妃様、ヤムジョンの策にはまって別宮に移されてしまう。

しかししかし!若いながらも賢く情勢を見極め、したたかに足場を固めていく壮烈王妃。さすがはのちの壮烈大王大妃さま(笑)
捨て身の席藁待罪(ござを敷いて白衣で座り込みする、あれです)で仁祖に和解を促します。実はけしかけたのはヤムジョン、親子の問題に王妃が関われば、仁祖の怒りを買うはずと踏んで(つまり王妃を陥れるため)のことでしたが、逆に和解の糸口をつくってもらったと仁祖の王妃への心証を良くする結果に。
人質生活から戻った息子と嫁に晴れて対面する仁祖も、表向きは嬉しそう~。
しかし、実家の父の墓前に参りたいと食い下がる嫁にまたまた苛立ち。
今度は世子夫妻のもとに出向き、矛を収めるようにと諭す壮烈王妃。
年上の世子や嫁を前にしても、堂々と言うべきことを言ってのける、この王妃さまが実は一番賢明です

16話視聴までの流れをざ~~っと追ってみました。
8年目にして、ようやく帰国がかなった世子夫妻ですが、清としては明国が滅びて朝鮮の援助を必要としなくなったから、というのが大きいですね。
記録では、明滅亡にともない北京に入場した順治帝とともに、世子夫妻も北京に入り、そこでアダム・シャールと親交を深めるはずで、そのあたりの描写をとても楽しみ~にしていたのですが…
もう帰国してしまったので、そこは割愛されてしまったのかしら~?すごく残念…

それとも今回のは一時帰国で、また清に戻るのかしらん。世孫も清に残しているし。。
物語の中心はヤムジョンの巻き起こすドロドロ展開ですが、そのあたりは『女人天下』や『王と私』等々でさんざん堪能してきたので(笑)軽~く流して、彼女が絡んだ仁祖と世子夫妻の悲劇を中心に今後も楽しみたいと思います
