正祖24年…サンの在位最後の年です。

ソンヨン亡きあと別の側室から無事に王子を授かり、
世子としてサン自らが帝王学を叩き込んでいます。
「王として、民が安らかに暮らせるようになすべき最も
 重要なことはなにか?」
この質問はかつて英祖からサンが受けたのと同じもの。

幼いなりに懸命に答えを探してもことごとく却下され、
笑顔を見せてもくれない祖父の厳しい叱責にも屈せず、
健気に向かっていったサン。
今その子は、父の質問の答えが見つかるまでは民と同じ食事
しかとらない!となかなか骨のある王世子ぶり。王様も満足げです。
サンは英祖とは違って温かく見守りながら、
「答えを急ぐことはない。焦らず確信が持てたときに答えよ」
と励ましの言葉をかけてやります。

相変わらず政務に没頭するサン、お忍びで街にでかけ、
活気のない市場の様子に驚きます。
実は両班と商人が金銭をため込んで市場に出回らず、
深刻な銭苦(デフレ)がおきていたのです。
財政難で十分な貨幣を作るゆとりもなく、パク・チェガの発案で
清国から古い銅貨を安く買い取り市場に投入することになります。
ヤギョンは民が混乱するのではと心配な様子ですが、
他に解決策もなくその案が採用されることに。

そうそう、ヤギョンとチェガは紅の官服になってました。
すっかり国の重鎮になり他の検書官らと共に王様を支えて
いるようです。

それからテスは、両班みたいな服装で立派なお屋敷に暮らし、
なんと!おじ夫婦が迎えた養子に学問を教えていました!
これにはびっくり。札付きの馬鹿、とクギョンにあきれられていた
あのテスが…です^m^
まあ、学問とは別の意味で頭のよい人だから、その気になれば
ちゃんと習得できたのでしょう。
「こんなことも知らんのか!う~ん、私も意地になってきたぞ!」
なんて、クギョンの台詞をそのまま使っちゃって(~o~)
「その方のおかげで今の自分があるんだ」
とクギョンを懐かしむテス、ちょっと嬉しいシーンでした。

そのテスが新しい武芸書を書き上げてサンに献上します。
その内容を実演するのは、以前パク・チェガと共に諸国を巡り
サンに斬新な技を披露して驚かせた、あの武芸の達人。
彼も壮勇衛に迎え入れられたのですね。その後どうなったのか
気になっていたので最終回のフォローに思わずにんまり^m^

楽しいシーンがもう一つ。
スラッカンで料理の味見をする中殿の尚宮とソンヨンの尚宮の二人、
つまりチャングムのミン尚宮とヨンノの二人の掛け合いが再び♪
前世はスラッカンで働いていた気がするわ~なんて二人でボケまくり^m^。
ビョンフン監督のチャングムファンへのご褒美ですね、きっと(~o~)

ソンヨンのお墓参りに出向くサン。何周忌になるのでしょうか…
母后と中殿は、王様の持病が悪化していると聞き心中不安でなりません。
墓前でソンヨンに何を話したかと尋ねるサンに、テスが答えます。
「王様のお体をお守りくださいとお願いしました。お休みになるように
 言ってください、と。」

サンは都が一望できる場所にテスを連れて行きます。
「私は民にとっていい王でありたい。額に汗して生きる彼らが
 心安らかに楽しく暮らしていけるよう、私の持てる力を尽くしたい」
そういつも決意を新たにしているというサンに
「その願いは叶えられました。これほどの太平の世はありませんでした」
とテス。しかしまだまだ満足していないというサン。
「私にはまだやりたいことが残っている」
サンのやりたかったこととは何だったのでしょうか…
人生のほとんどを老論との政争に費やさざるを得なかったサン、
ようやくその足かせから自由になり、思い描いた通りの絵が描ける
ようになったのに…

都ではまたも難問が起こっていました。
城門に殺到した商人たちが訴えを起こしています。
都に贋金があふれ、銅貨が信用できないため、お金を回すことができない
というのです。

贋金…清から取り寄せた銅貨はつくりがシンプルで偽造しやすいのが
原因でした。しかしいまさら全てを買い戻す余裕はありません。
贋金造りをしている犯人たちを取り締まっても余り効果はなく、
そんななか、サンは疲労のあまり眼がかすみ体調に異変を感じつつも
己の体を顧みている余裕もない状態です。

結局御前会議を開き、清国の銅貨をすべて撤収すると決断する王様。
チェガが自分の不手際だと謝罪しますが、サンは贋金が出回るなど
予測不能だったのだからと励まします。
今までの老論派なら、すぐに糾弾して大臣の処分を迫ったでしょうが、
そういう横槍がなく失敗に動じず、良かれと思うことを積極的に
推進できる土壌こそ、サンが朝廷に求めたあるべき姿だったろうと
思います。

今度はヤギョンが知恵を絞り、高価な銅に変わる鉱物を探してみることに
なります。
ヤギョンの開発に立ち会っているサン、宮殿では御医が、
王様に差し上げる薬を用意したのに肝心の王様が不在と聞いて仰天します。
「病状が悪化しています!無理をされてはいけないのに…」
チェゴンが急いで伝令を走らせます。
そのころ、ヤギョンが座をはずした僅かな間に、めまいを起こしたサン。
警備にあたっていたテスが駆けつけ、独り床に倒れている王様を発見、
皆、騒然となります。

宮殿に戻された王様、高熱にうなされ、御医からこのまま意識が戻らない
かもしれないと聞いて絶句する母后と中殿。
その中殿に御医はある薬を処方する決意を告げます。
実はこの薬は、熱を下げる効果はあるかもしれないが、体中に広がった
腫れ物には効かないからと医務官たちが反対していたのですが、
王様は処方を希望しておられたというのです。
しかし3日たっても熱が下がらなければ、回復の望みはないという御医。
王様の枕元で「三日です。どうか眼をあけてください」と祈りながら
王様はきっと回復されるはず、涙を見せてはいけないと周囲の者を
戒め、気丈に耐える中殿。

一方テスはソンヨンの墓前にいました。
「もう少しお待ちを…今はまだ駄目です。王様を連れて行かないで下さい。
 王様にはやり残したことがおありです。王様の命を救ってください…」
涙ながらに天国のソンヨンに頼むテス。

別宮で寂しく暮らす大妃のもとにも王様の病状は伝わっていました。
手にするのは英祖の肖像画。
「不思議なことに目の敵にしていた王様が倒れたと聞いても嬉しくないのです。
 あれほど消えて欲しいと願っていたのに」
名目上は祖母とはいえ、王様とさほど歳の変わらなかった大妃。
そもそもなぜこれほど若い人が新たな王妃として迎えられたのか。
国母の座が不在ではいけないとはいえ、世子もいたのです。
結局、王室存続のため若くして老いた王に嫁がされた、ということだとすると、
この人もまたこの時代の犠牲者だったのかもしれません。

三日目の夜、寝殿の戸がそっと開いて、音もなく入ってくる女性…
足元しか映っていないその人は王様の枕元に薬の椀を下ろします。

実は見ていた私、ひょっとして大妃が毒を持って来たのか!?と
内心冷や冷やしておりました^_^;…「漢城別曲」の影響ですね。
監督も正祖毒殺説を念頭に入れてこういう演出をされたのかしら。
それとも普通はあそこでソンヨンだ♪って気づくべきシーンなのかしら。

そう、この人は亡きソンヨンだったのです。

落ち窪んだ王様の頬をそっと撫でるソンヨン。
「随分おやつれになられましたね。でも大丈夫です。
 王様は病に負けない強いお心をお持ちです…」
ソンヨンの涙がこぼれ、王様は目を覚まします。
「そこにいるのは本当にソンヨンなのか」
王様の手を握り涙を浮かべながら力づけるソンヨン。
「元気を出してください。まだ志半ばではありませんか。
 王様にはやるべきことが残っているのです」

意識が戻った王様、ソンヨンの面影を思い浮かべて微笑みます。
「まだそのときではなかったか。そなたの元にいくには早すぎたか…」

急いで粥を用意させる尚膳。駆けつけたテスも安堵します。
しかし、普段は冷静な尚膳が涙を見せながら話す事実は重いものでした。
病はもはや手の施しようがなく意識が戻ったのは奇跡だと。

テスは王様のもとに。死の淵から戻った王様の顔色はその苦しみを
十分に物語っていました。
政務のことは忘れ今はお体を治すことだけを考えて下さい、と訴えるテス。
王様はテスが病のことを知ったのだと悟ります。

「私は自分の病のことも残された時間が少ないことも承知している」
そして、まだ年端のいかない世子を残して逝く不安を漏らしつつ、
テスに頼みます。自分にしてくれたように世子を見守って欲しいと。
「命に代えてもお守りします」
力強く答えるテスに、笑顔で語りかけるサン。
「生涯、私の友でいてくれてありがとう。そなたのような一生の友を
 持ったのは何にも代えがたい」
サンを生涯の主として仕えたテスにとって、なによりも嬉しい言葉だった
でしょう。

大殿でいつものように王様に上奏文を届ける尚膳。
「心配するな、無理はしない」
微笑みかける王様に尚膳も笑みを返します。

眼鏡をかけ上奏文を広げるサン。
初めは眼がかすみますが、やがてしっかりと焦点が合い、
よし、とうなづきながら文に目を通す王様。
その姿は次第に遠ざかり、小さくなり、やがて画面は暗闇にのまれ…

壮勇衛大将のテスが大殿の王に謁見します。
可愛らしい王様・純祖はまだ11歳。
王世孫のサンがソンヨンやテスと初めて会った頃と同じ歳です。
「そなたの話を父上からよく聞いていた」と王様。
「そなたは親友であり心の友だった、と」
しかし幼い王様は不安げです。王でありながらまだ何も知らない、
そんな純祖をテスは勇気づけます。
「私が命をかけてお守りします。王として信念を持ち正しい政治を
 行ってください」にっこりする純祖のあどけないこと。

この先、純祖の行く手には老論と大妃の復活が待ち受けています。
でもそれはまだ先のことです。
幼くともサンの教えを受けた純祖です。偉大な父に恥じない立派な王になろうと、
その小さな胸いっぱいに希望を膨らませていたに違いないのです。

王様の墓前に立つテス。あの丘でサンが語ったことを思い出しながら。

「私は民にとってよい王でありたい。
 飢えや差別や抑圧から彼らを開放したい。民が生きる喜びを実感できる、
 そんな国を作りたいのだ」

壮大な希望を語る王様のまなざしには、この世で一番美しい夢が輝いていた…
感慨にふけるテスの瞳もまた明るく輝いています。

「その夢を叶えるのは私たちです。王様が愛した民が受け継ぎました。
 王様の夢は世の中を動かし続けます。
 いつかこの国の民はその夢を形にしてくれるでしょう」

ラストは幼い日のサンとソンヨンとテスが戯れる姿。
桜が舞っています。その中を若きサンとソンヨンが手を取り合い
王宮の彼方に消えていきます…

テスの最後の言葉は、偉大な王を称えその遺志を受け継いでいこうと願う
韓国の人たちの誇りを代弁しているのかもしれません。

正祖の一代記。これほど波乱万丈とは思ってもみませんでした。

正祖毒殺説は本国韓国では今も活発なようです。
真偽のほどは学者さんたちの研究にお任せするとして…
ビョンフン監督が描いたように、サンは息を引き取る最期の瞬間まで
決して屈することなく希望を捨てなかったはず、そう祈りつつ、
わたしの「イ・サン」もおしまいにしたいと思います。

正祖に乾杯!!