知人が、被災地での約1週間のボランティア活動を終え、
自宅のある関東へ帰ってきました。

彼は、自衛隊でも消防士でも警察でもなく、
いわゆる「民間ボランティア」として、
単独で自家用車に職場で集めた物資を詰め込み、
被災地を巡って必要なものを手から手へ渡して行ったのだそうです。

その間、寝泊まりはほぼ自分の車の中。
自分の食料は、登山用の食品でまかなっていたそうです。
こんなボランティアは初めてだ、とは言っていましたが
極寒の雪の中で、一人で何日でも
寝泊まりできるサバイバル術を身につけている人なので
やってのけられたのだと思っています。

最初はトラックで物資を運ぶ計画だったそうですが
肝心のトラックを借りることができず(みんな出払っているそうで)
やむなく自分の車ででかけることになったのだそう。
職場の方々から、
新品の衣料品、大人の肌着類、石けん、歯ブラシ、洗剤、衛生用品など
たくさん集まったそうですが、それでも
「個人では行くべきでない」「一人が行って何の足しになるものか」と
反対する声も多かったそうです。

それでも彼が行くと決心したのは、
友人がいたり、職場の取引先があったりと、
そう言う理由ももちろんありましたが、
なにより「現場で人が足りていない」のがわかっていたから。

彼から来たメールの一部です。
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22日、東北道が使えないため、日本海側から秋田経由で岩手・釜石へ入りました。
凄まじい都市崩壊の光景に立ちすくみ、何も言葉が出ないまま、
町長が行方不明(その後、遺体で発見)の大槌町へ。
ここも町ごと壊滅状態で浜近くに出ると魚が腐ったような死臭が漂い、
頭がいたくなりました。
吉里地区もほぼ壊滅、雪の中、700人が避難する大槌高校に物資を搬入。
その後、宮古の避難所に搬入、道が崩落し孤立していたワカメ生産地・重茂へ。
隣の海沿いに住宅が広がる山田町は、水責め、火責めで壊滅状態、
各所で救援物資を配りました。
一昨日は、陸前高田から気仙沼へ、
昨日、三陸は雪から雨に、気温2度の南三陸町へ。
ここは1万人が不明で宮城の中でも、壊滅してしまった町です。
何日も寒気とガレキの中にいると心が折れ曲り、押し潰されそうになってしまいます。
今は、無力感に陥っている状態で、上手く立ち回れません。
暗闇の夜、ガレキが余震で擦れる音を聞くと、眠れなくなります。

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テレビで映される大きな避難所には物資が山積みされている。
そして、テレビで報道された品物ばかりが集中して送られて来て
それらはもう余っている場所もあるとのこと。
毛布、水、トイレットペーパー…。使い切れないほど備蓄されている場所もある。
その一方で、マスコミに上がってこない孤立した避難所には
もう本当に何もない状態で、
車もすべて流されてしまっていて移動手段もなければ、情報を得るすべもない。
買い物する場所なんてあるはずもなく、
そんな避難所を、彼はできるだけ多く回り、
「今何が足りないですか?」と聞き、
石けんと言われれば石けんを、歯ブラシと言われれば歯ブラシを
水はいらないと言われれば、そのかわりのものを、というように
物資を手渡して行ったそうです。

まったくモノが足りてない場所のあまりの多さに
愕然としたそうです。
そして、そう言う避難所の人たちは、
話を聞いてほしいという欲求がとても高かったそうです。
なので、物資をただ渡すのではなく、
被災者の方々(お互い初対面の見知らぬ人たちです)の話を
できるだけ聞いていたと言っていました。

放射能汚染のこともあり、なかなか民間のボランティアが今活動しづらい
状況ではありますが、彼はこんな事を言っていました。
「震災のあと、自衛隊ががんばって道はずいぶん通れるようになっている。
だから、あまり車両の制限などせず、現地で働ける民間ボランティアが
もっと組織だって活躍できるようにしてほしい。
小さな4WD車でなければ行けないような場所も多いんだから。」

道路が海に崩落して、小型車1台が
やっと通れるだけの道幅しか残っていない場所を通り、
その先の完全に孤立した避難所へ行ったときには
石けん1個を渡しただけで涙を流して感謝されたと…。
そんな中、おばちゃんたちは
少ない食材をやりくりしてごはんを作り、
カメラを向けると笑顔でピースサインを出してくれたと…。

支援物資の種類があまりにも偏りすぎていて、
どうにもこうにも「足りない」状況だそうです。
店がない、足がない、電気もガスも水道もない。
しかしその場から動く事もできずにいる人たちが
必要としているものは、本当に多岐に渡ります。
何が足りていないのかを正確に把握するためには
「そこにいる人に聞き」、それらを届けるためには、
「そこに行く」しか方法がないんです。

彼は、来月また行くそうです。
ガソリンや宿泊のための費用はぜんぶ自分の持ち出しです。

携帯画像より「釜石市内の惨状」
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「気仙沼の瓦礫の海」
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