「てるさん、俺向こう行きたいんですけど」
「いいや、こっちに行きましょうよ」
立ち止り、全く別の方向を指差して口々にそう言う2人に、てるは小さく溜息をついた。
「全く・・・」
囁き
「なんだよたいしろう。本当ならてるさんと俺、2人で来る予定だったんだぞ」
「ふん、甘いな兄貴。そうやすやすと2人っきりにさせるかよ」
ばちばちと火花を散らすたいぞうとたいしろう。
兄弟、顔は全く一緒なのに、考えることは驚くほど真逆で。
今日もそれに散々振り回された。
しかも。
・・・2人して、俺のこと好きなんて言うから。
その間に挟まれて歩いている俺はもうどうにかなりそうだった。
たいぞうを見上げれば、優しく微笑みかけてくるし。
たいしろうは普通に腰に手回してきたりするし。
その度に真っ赤になってる俺は、他人の目にどう映っただろう。
「てるさん?どうしたんですか?」
気がつくと、ぼーっとしていた俺の顔を、二人が覗き込んでいた。
「疲れましたか?」
「ん、・・・まぁ」
「大丈夫すか?どっか休むとこねぇかなぁ・・・」
「ここちょっと行ったとこに喫茶店あるけど、」
再び歩き出そうとした二人の腕を掴む。
もうどのくらい歩いたか分からない。
足が棒になる、とはこのことだ。
それに夕方になって一段と寒くなってきた。
正直、出来れば。
「帰りたい・・・」
「え?あぁ、じゃぁ俺と兄貴で送っていきますよ」
「あ・・・帰りたいって言うのは、その・・・」
言いたい言葉がなかなか出てこない。
確かに、疲れてはいるんだけど。
帰りたいんだけど。
2人と離れるのは、無性に寂しくて。
今日は、いつも以上に。
「2人とも、今から俺の家・・・来ないか?」
恐る恐る2人の顔を見上げる。
きょとんとしていたその顔は、すぐに笑顔に変わった。
・・・あ、やっぱり似てるな。
その顔を見比べて、改めてそう思った。
「良いんですか!?」
「てるさんの家かぁ・・・」
嬉しそうなその顔を見てると、自然にこちらも口元が緩む。
言って良かった。
「じゃぁ、なんか適当に夕飯買って行きましょうか」
「そうだな。まぁ、俺は軽くで良い」
「てるさん少食ですね」
「たいしろう、お前が大食い過ぎるんだよ」
「兄貴に言われたくねぇなぁ」
また、3人で歩き出す。
2人に挟まれた真ん中は心なしか、温かい。
先程のきょとんとした2人の顔を思い出して、声には出さずに笑う。
その時。
わーわーと言いあっていたたいぞうとたいしろうが突然俺の左右の耳に口を押しあてて。
優しく静かに、囁いた。
「「今夜は3人で、楽しみましょうね」」
その良く似た2つの声色の中に。
少しだけ、危険な色が滲んでいたのは。
・・・気のせい?
end
気のせいじゃありません(笑)
まさかの3P風味なネタになりました。
楽しいですね、これ←
たいぞうとたいしろうの2人に攻められるてるさん良いですねww