実話をもとにした映画「あんのこと」
いい映画、ヒロイン・あんの親からの虐待・買春・薬中から立ち直ろうとした人生を、多くの人に観てもらいたいと思う。
ただ、パンフレットを熟読した結果、あんについてちがう視点が生まれた。
以下、映画のネタバレになるので、知りたくない方、未見の方は読まないでください。
映画では、あんに寄り添っていた刑事が、同じくあんに寄り添っていた雑誌記者の記事によってセクシャルハラスメントが露見して逮捕され、あんとの接触が断たれる。あんは記事を書いた記者にも心を閉ざす。
二人を失ったその最中にコロナが起きて、せっかく立ち直ろうと学校で勉強したり、介護士見習いとして施設で働いていたのに、その施設も学校も閉鎖されてしまう。
まったくの孤独となったあんは自死するーそれが映画の結末。
実際には、刑事が逮捕されたのはあんの自死のあと、そのきっかけとなった記事を書いたのはあんに寄り添っていた記者ではなかった。
この二点を、パンフで知って、立ち直ろうとしていたあんが自死してしまったのは、施設からの給料が入らなくて生活に困窮したこともあったかもしれないけれど、もう一つ、隠された理由があったのではないかと想像した。
つまり、刑事があんにもセクシャル・ハラスメントを仕掛けたのではないか、ということ。
信頼していた刑事にそんなことをされたら、死にたくなる。
社会派として名を馳せた男性の中には、セクシャル・ハラスメントをする人がいる。
女性編集者をセクハラどころかレイプしていた松本清張はその典型だし、ストレスを女性へのセクハラで発散させていた報道ジャーナリストの広河隆一もその一人。
福島原発集団訴訟の弁護団に入っていた某弁護士も原告の女性の一人にセクハラをしていた。
社会悪に対して正義感をもつ男性が、どうして女性の心と体を踏みにじるのか。
女性は、正義の対象にならないのか。
もちろん、そういう悪質な社会派男性ばかりではないけれど、この手の男性が絶滅しない限り、女性にとって住みやすい世界にはならない。