その子は母親に連れられて、札幌にきた。


すすきののパーラーでアイスクリームをあてがわれ、母親は消えた。


その子は母親を待っていたが、トイレが我慢できなくなった。


ウェイターにトイレに連れて行ってもらったが、アイスクリームで冷えたからだには我慢の限界、廊下の絨毯に大までも漏らしてしまった。


気付いたウェイターに「きったねえなお前!」と罵られ、店長に告げられた。
店長は気付いていた。その子の母親は近くの病院に堕胎に来たのだと。


更に暫くして母親がその子を迎えに帰ってきた。麻酔の抜けきらないフラフラした足取りで。
店長は母親にクリーニング代を請求した。母親は毅然として啖呵をきり、何も支払わずに店を出た。


帰りの列車で、その子は母親に散々嫌みを言われた。汚れた服のまま町に帰った。


それから、その子の儀式が始まった。1日何度も、時間を決め、何十分もトイレに籠もり、それは強迫観念そのものだった。


その子は大人になり、不動産会社を興して成功し、そして儀式はより緻密なものとなった。


車で移動する時も、コンビニやファミリーレストランなど、トイレを借りられるルートを指示した(30年以上前の話だ)。すぐに行けるルートを、なぜ社長は入り組んだルートにするのか、社員は誰も知らなかった。


社長は背任罪で逮捕された。
取り調べ中の尋常ではないトイレへのこだわりに、精神科を受診することになった。


社長のマンションのトイレには、ふるさとの写真が飾ってある。社長はそこで、朝は2時間の儀式をしていたのだった。


その町とは、ちなみに夕張だ。