JR駅で老婆がエレベーターを探していた。


長靴を履いていた。


母親も長靴だった。
古ぼけたのと、新しいの。古い方は本当に古ぼけていた。長靴の用を足さなかった。


捨てなかったのは、戦中派だったからか。


母親は何でも捨てなかった。家中要らん物だらけだった。

私が捨てようとすると烈火の如く怒った。
…使わんもんは捨てようや。




じきにもう、家ごとなくなる。
父親も母親も、帰る家がなくなる。



使えもしないくせに、のせられて買ったウオッシュレット。


馬鹿みたいに何度も改装した外壁。



全部無駄になるんだ



要らんことに財産使って、こんな老後になるなんて思わなかったろう



長靴



そういえば父親も年中長靴だった。


町の名物だった。



長靴、いや、レインブーツを私が買う気にならないのは、
親のせいか。