ネット開通により更新再開ー。
冒頭に出てきた2人の少年が何らかのかたちで絡んでくるんだろうとは思っていたので、アンドレイが出てきたときにはすぐにわかった。崇拝する兄に置き去りにされるという体験が、その後の人生にどう影響するのかを考えるとやりきれない気持ちになったし、その兄自身も自分の意志で弟を置き去りにしたわけではなく被害者だったと思うとなおさら。
でもまさかその兄が生きていて、置き去りにされた体験を執拗に再現し続ける弟の起こす事件を私的に捜査しているなんて考え付かなかった。ご都合主義とも言えるけど読んでいる限りはそんなに不自然ではなかったのがすごい。二人の関係性の異常さは言うまでもないけど、この二人の人間がどちらも依って立つところがないせいで何かに(正しいとか間違っているとかは関係なく)ひたむきに傾倒するという共通点をもっているところがコインの裏と表のようで、精神の双生児というかなんというか。
兄が英雄になったのはきっと家族から切り離されてそれでも生きていかなければいけなかったからで、弟が殺人犯になったのも兄と切り離されたからで、そう考えると当時のソヴィエトが英雄と殺人犯を(でもこの英雄は西側からすると大量殺人犯なわけで)生み出した、とうことがその体制の歪みとその歪みを持続させる力の両方を表していてとてもよくできた構成だと思う。実際の事件を基に書かれているというんだから余計に。
でもこの構成がうまくできすぎているところに、西側で育った筆者の価値観の偏りが表れている気もする。
いくら詳細に資料にあたっても、自分がどっぷり浸かっている社会のエクリチュールからは簡単には逃れられないと思うし。自戒。