行方知らずの水脈が葉脈のような構図にそって散歩する姿を透視した占い師は煌びやかな岩塩鉱の残響の中でやはり散歩する自分の眼球の艶やかさを気品溢れる冷気との僅かな摩擦の中に感じとっていた
妄りに散歩された構図の分子内と分子間の電子と格子の振動が協調して光誘起相転移が奮い立ち 気高い慰めで体心立方格子を養う聖母たちは構図が兆の兆乗の格子で織り成す永遠の深淵に素粒子の詩歌を司る大天使の栄光を映し出す

るみなするみなすいんどくとす るみなするみなすいんどくとす

こ の時永遠の深淵にあらゆる誘起が湧き起こり大天使の栄光は花園のようにささくれ立ってソーダ水の泡のようにはじけながら消えていった この爛熟した虚無の 遊びをうさぎ組の園児たちは夢中になって練習し担任の乙女たちは園児たちの眼を見張るような上達に次回おゆうぎ発表会の初々しい大成功を確信したのであっ た
ふり返る
彼方がある
霧の向こうの記憶が
うっすらと輝き
歩み寄ってくる

人 想い 
景色 歌
いつの間にか
花園のように
鮮やかな眼差し

語った声が
語られた言葉が
喜び 恨み
はしゃぎ 悩み
こだまする

語らなかった時
ことばもなく
思いだけがさざめいていた
伝わるはずもなく
百万光年へ旅立ったまま

僅かな煌きを
散らしながら
思いは旅を続ける
煌きがこぼれる度に
やせ細りながら

思いが消えた跡に
煌きの楽譜
歌となる
かぼそい永遠が
やさしく震えて

ふり返る
やせ細った彼方に
ひとすじの光
ささやかないのちが
小さな歌を歌った
響きは
この星の
風の
はじまりに
あった

響き
空の星を
浮かばせる
やさしい


ここと
ここに
ひろがり
深く
満ちる

掬っても
ちらしても
ちらない
はかなく
満ちるもの

沈みながら
立っている
にじみだした
光がのこす


影が
のこす匂い
ゆらぎ
うつろに
引くもの

手放せば
たゆたい
うつろいの
あそび
うれし

歌いもすれば
輝きもする
おとなしの
遠い雲に
こだまして

梳きとかされた
雲の綾が
ふるえて
編んだ


空と
空を
つなぐもの
幾億の空の
連なり

響きの中



キューピッドの翼の蔭

宝石の香りでさがす

かくれんぼ

匂うぞ匂う

サファイアからくり抜いた煌きが


穏やかに安らかに

深海の潮流は

仄暗い入水者を解体してゆく

魚たちが撒き散らす精液の濁りが

生命の輪を回すように


壇ノ浦の亡霊は

あてどなく霊海を彷徨して

サラミスにたどり着き

いつの日かペルシャ艦隊と撃ち合って

エーゲの海へと沈むのだ


春の雷が宮殿にも届いた

遠くの葬鐘が

象牙の香水瓶を揺らし

漏れくる馥いは烟のごとく

真珠の眼にくすぶる


ヒマラヤを愛撫する流雲

哀悼する黒髪が

菫色の夕空になびくと

咲き乱れるタンポポが

星となって舞い上がる


大地の絃 天空の絃

淡い花 苦痛の星

亜麻色の昏倒に沈めども

銀河に浮かべた小舟は

青白い星群を曳き連れて歌いつづける


月影の暗い網が

葡萄のたてがみを掬っても

涙のような

淡い雫に潤った虹が

天地の絃となって伴奏するのでしょう


たまゆらの響きが


銀色真珠の波紋となって


ひたひたと打ち寄せる


この潮騒は


あなたの血ですね


耳鳴りが 潮騒が 頭痛が 流星が


ひとつの闇となり


荒寺の梵鐘の


どす黒いうなりが


はらわたを揺るがす


あらたまの花吹雪


痛々しく目を射る白銀のささくれよ


そのマイナスの重さは呪いのように


真白な闇の渦となって


魂を貪る蟻地獄

 

都にて山の端に浮く月影をそっとすくってすするような ほのかな苦味が囁きかける時 ピンクの飴色に溶けてしまったヘッドライトの曳光が幾筋も幾筋も刹那 の傷を網膜に残して暗がりへ沈んでゆく疲労の呟きが泡立ちあふれ吐瀉物にも紛うような慰めの調べの中をしんしんと しんしんと何かに解き放たれてゆく音波 の脱皮のような戦慄きが冬眠を求める春の乙女たちの透き通った振袖に纏いつく戦闘機の急降下と見紛うばかりのきらめきを木枯らしの叫びの記憶のように掻き 消しながら己の芯の甘い滴で地平線を包み込むようになめしてしまう
甘ったるくなった砂漠ではいつものように色とりどりの龍たちが互いを嬲り殺しに 沈めつつ極彩色の血しぶきで天空を万華鏡に染め上げて全北半球あげての花血大会を開催し月の女神たちの優雅な余興として土星の各衛星にまで配信されタイタ ンやハイペリオンの龍たちがファンクラブを結成するだろう その時、土星の軌道には龍たちの恋の波動が加えられすべての衛星もろともにアセンションし聖な る地球の霊界へ本当にやってくるのだ 土星とその衛星の生きとし生けるものすべてを受け入れた地球霊界の豊饒は急激に熟成を進めシリウスの光よりも甘く熟 れ切って軌道の上からポトリと落ちた いや、落ちるとか上がるとかの相対の世界を超越する程に成熟したその惑星はただその姿を軌道から消し 月とそこに住 まう女神たちを残したまま永劫の彷徨へと向かったのだ 女神たちは歌う 楽しかった龍の花血大会の日々を 漆黒に輝く青き水の星の思い出を 自分たちへ向 けられた数え切れない祈りを想い出しそこに住まう山川草木すべての幸多き彷徨を夢見て