1991年11月5日記 《未来21世紀の若者たちへ》

訪れる未来を視れば、そこは神の栄光に満ちた世界。
老人の笑顔は輝き、乙女の純真さはそのまま花となる。

猟を競う、若人の放つ矢は命を脅かさず、
風は安らぎの香りを運び、星辰は快い音楽を奏で、
人は怒りを知らず、病と苦悩は忘却へ消え去り、
飢えて泣く孤児の叫びは聞こえず、
誰が磨くのか、岩も土くれも珠と光り、
大河の流れは犠牲を欲せず、ゆるき流れは神の栄光を讃え、
太陽は地上を焼かず、快い暖かさで世界を包む。
  
人々が、神の腕に抱かれて生きる。
若い日の幻、春の陽射しが見せた一時。
それが未来であったか過去であったのか、

夕立のあと虹を降りて、
花畑に遊ぶ天使を見て、花びらの陰に妖精を探した。
あの頃の夕陽は、ギラギラと一日を惜しんで晩た。
   
まだ自分の存在すら理解しなかった頃、
この世の〈美しさ〉に、目を見張る毎日だった。
雨に震える一輪の花に魅せられ、一日が暮れた。
嵐に散った枯葉が、かけがえのない宝だと思えた。

人の口から出る言葉が、魂を裂く剣だと知ったとき、
その理想郷はもろくも消え去り、この世は地獄と化してしまった。

人は人に傷つき心砕かれ、天使は一人去り二人去り、
あの頃の夕陽が恋しい、あの日の花が恋しい……
《光》に抱かれて視たあのひとときが…… 。

この心さえ、あの時に留めていたら、
垣間見た理想郷が再び現われるのだろうか―

人は人に傷つき打のめされ、天使は十人去り二十人去り、
人は自分さえ愛する事もできず、孤独を道ずれとする。
人は人を愛して疎まわれ、人は人を信じて落し穴にはまる。
  
天使は百人去り千人去り、
世は、弱者を嫌い、人の優しさを食ってはびこる。
人は人の温かさに触れたくて気弱になり、
人は人に愚かさを見せ、虚しさを重ねる。

人は人に疲れ果て、世は命を買うものとなり、
やがて訪れる新しい世紀に〈天国〉を夢見る。
そんな人の悲しさが《終末》を望むのか…

《若人達よ》、新しい世紀はあなた方の世紀。
立てよ、若人よ善き人等よ、古き衣を脱ぎ捨てよ。
新しい世紀はあなた方を喜ぶ。

立てよ、若人よ善き人等よ、新しい衣をまとえ。
そしてその指を胸にあて、魂の叫びを聴けよ。
あなたを生かす霊の声を聴け。
未来はあなた方の一念に在る。

『覚めよ若人よ善き人等よ、天の声を聴け』。
あなたの胸の鼓動は、一体何処から来るのか。
あなたのその血は何故、からだを巡るのか。
あなたはなぜ此処、(今)に存在するのか。

『覚めよ若人よ善き人等よ』
あなた方を祝福する《天の声》を聴け。