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2011年公開 日本映画
89分 年齢制限 無
監督: 砂田麻美
製作・プロデューサー: 是枝裕和
音楽・主題歌: ハナレグミ
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ネイティブアメリカンの言葉にこんなものがある。
あなたが生まれた時、あなたは泣いて、周りは笑っていたでしょう。
だからあなたが死ぬ時は周りが泣いて、あなたが笑っているような人生を歩みなさい。
最近よく聞く単語 「終活」
人はいつか死ぬ。それはすぐかもしれないに数十年後かもしれない。
そのため、いつか来る死に向けて、準備をしておこう、という終活。
エンディングノートは終活の道具。
遺された人へ向けて、葬式について、遺産について、遺された人へのメッセージなど遺言よりは少し軽めの文書。
この映画は、末期がんを宣告された男性を追った、その男性の娘によるドキュメンタリー映画。
男性の気持ちを娘のナレーションが客観的に支えている。
感情移入してしまったら終盤涙してしまいそうになってしまうので注意。
死とは悲しいもの?辛いもの?そんなに悪いもの?
残された日々をいかに明るく楽しく悔いなく過ごすために。
そんな実在する人が登場する終活マニュアル映画 なんて見終わって感じた。
自分が死ぬときは、こんな形で死にたい。
核家族が増え、平均寿命も上がり、死っていうものが身近でなくなった現代。
しかしいずれは身近な人の死に対面することになる。
そのときのための準備としてこの映画を観ておくと、こういうことをしなければならないと学べる部分がある気がします。
そんなわけで評価は★★★★☆
なぜ満点でないかは↓の方に。
ネタばれとか色々 ↓
撮影・演出・監督は砂田麻美さん。実の父親を含め家族を病気が発覚する前から映像を撮っていた。
この方、慶応大在籍中からドキュメンタリーを学び、卒業後はフリーの監督助手として是枝裕和の下で映画製作に関わっていたらしい。
初の映画作成でここまでできるとは。自らの強い思いがあったとしても、限界はある。
しかし、この出来。申し訳ないけれど初作品にしてこれが最高傑作になる気がしてならない。
お師匠さんの是枝さんは、身内を映画として撮るセルフドキュメンタリーは好きではなかったらしい。
特に新人ならば、次が作りにくくなるからやめておけというほど。
しかしその師匠をうならせ、プロデューサーを引き受けさせてしまうほど。
自分はこの映画の評判を聞き、製作・プロデューサーの部分に是枝裕和の名前があるのを見て、ああこの人が関わっているからこそ、すごい映画に仕上がったんだろうと勝手に思っていた。
しかしパンフレットを見る限り、砂田監督が完成した映画を是枝さんに見せた、とのこと。
是枝監督に下で学んだとはいえ、砂田監督の作品。是枝監督の手が入ってはいない(はず)。
シーンのレイアウト・音楽を含めた演出は、初作品とは思えないほど。
今年はドキュメンタリー映画何本も気付けば見てしまっていたが、これほど完成したものはないかも。
新人なんだから荒削りな部分が見えてもいいじゃないか。なんという才能。新人にしては実力がありすぎる。
次回作のハードルがすごく高くなってしまったような。
監督についてはこれくらいにして、内容について・・・
この映画は昔の映像も出てくることもあるが、基本は2009年5月から12月までの約半年を月ごとに、そして砂田知昭さんの作ったTo do LISTごとに物語は進んでいく。
砂田知昭さんを知る90分。この人にはどんな家族がいて、どんな仕事をしていて、これからどんな余生を生きていくのか。
砂田麻美監督の淡々とした、砂田知昭視点のナレーション。
自分の実の父親が体重も落ち、痩せこけて、どんどん弱っていく姿を冷静に客観的に撮った砂田監督。
ありえない。役割分担としてあったのだろうけれど、実際の葬式でも淡々とビデオをまわす。
自分の実の父親を被写体として撮り、もう映画の題材として使う気があったのだろう、もう映画を撮るプロとして、感情を出さず、撮ったのかもしれない。
ドキュメンタリー映画は、そのものを撮るからこそ意味がある。セルフドキュメンタリーは家族だから、知っているから、こう撮れるという弱点がある。(撮り易さという意味では利点かもしれないが・・・)
この場面・このシーンがほしい!というものを考えてしまったらドキュメンタリーではない。その人が作った創作映画である。自分はそう考える。その部分を越えて砂田監督は客観的に撮れたのではないだろうか。そんなことをラストのお葬式を見ていて感じ取った。
ただ、砂田監督、途中監督になれず、父と話す娘 砂田麻美 になっていたシーンもあった。
砂田麻美という出演者として機能させるならばもっとシーンがあってもいいはず。
監督失格なシーンだったのかもしれない。
最期のシーン。夕焼けの絵の中、音声だけが流れる。父親の死に顔はさすがに出せない。家族からストップがかかったのか・・・
ドラマなどの演出で、後は頼む・・・バタッ ご臨終です・・・
なんてのはやっぱりフィクション。これが現実。人が死ぬ瞬間なんてこんな感動的なものじゃないってのも分かる。
この映画は、末期がんを宣告された男性を支える家族の映画としても見ることが出来る。
いかに最期を迎えるか。本人も周りの家族も、笑顔で見送りたい。
そんな映画でもある。
パンフレットに 徳永進 医師からの文章が載っている。
徳永進(とくなが すすむ) 鳥取県にあるホスピスケアを行う 野の花診療所 の所長。
ホスピスケア、ターミナルケアは終末医療ともいわれる。末期がんなど治らない病気などを抱え、死の宣告を受けた方が、痛みなどを感じずに穏やかにその人らしく残りの時間を生きていくことを支えるケア。
今年の5月NHKの爆問学問で紹介されていた方。NHKが番組で取り上げるだけあって終末医療のプロ。
http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20110519.html
映画見た方は合わせて見ておきたい番組かも。つい先日アンコール放送していたけれど、人気の回だったのでまた再放送するかも?
この方は医者として、患者を支えていたが、この映画は家族がお父さんを支えていた。
途中、砂田智昭さんの担当医は言う。
余生1ヶ月と言われているほどの体の状態なのに、あれほど元気なのは驚きです。
それは家族が本人を支えて、明るく生きているから?
そんなことを感じます。
自分が死ぬときココまで幸せに死ねるかなぁと巳ながら怖くなってくる、そんな映画でもあるかも。
2011年ドキュメンタリー部門では遅ればせながら一位かも。
キネマ旬報にも絶対入ってくるであろう作品です。
ただ、評価が満点でないのは、夜が眠れないなどの弱音が出ている程度で、ガンの痛みと死への恐怖と色々なマイナスの部分が入っていなかったこと。
幸せに亡くなれるとはいっても、負の部分が絶対ある。
終活を考えている人へのメッセージならばいいところだけじゃなくて悪いところも出してほしかった。
すごい上からで申し訳ない。
最後に、芸能界でもちょこっとこの映画が話題になっているよう。
浅草キッドの水道橋博士がこの映画を絶賛していた
ってことを伊集院光のラジオで知った。でも伊集院さんはあまり・・・な様子。
自分も性格ひねくれているので、伊集院さんと同じ感想をちょこっと抱いてしまったのはひみつ。
感想気になる人は2011/10/17の回を聞いてみよう。(49 の数字にマウスカーソルをのせると再生されます)
http://itunes.apple.com/jp/podcast//id139443812
【関連商品】
野の花診療所の徳永進 先生が中学生向けに書いた本。
死ってそんなに怖いものじゃない。
誰もが通る道なんだから生きているうちにしっかり考えておこう。
よりみちパン!セシリーズは好きなんです。
砂田監督のお師匠さん是枝監督の死について考えさせる作品。
是枝監督の両親をこの映画に投影させたとか。
監督失格と言う点とドキュメンタリーという共通点から。
平野勝之という男が 林由美香という女を撮り続けた作品。
自分の身近で大切な人を撮ると言う点で見比べるのも良いかと。
R15な作品なので注意も必要ですが。



