いほう-じん ―はう― 2 【異邦人】
(1)外国人。異国人。
(2)聖書で、ユダヤ人以外の人々を呼ぶ語。
(3)書名(別項参照)。
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「きょう、ママンが死んだ」で始まる
カミュの小説「異邦人」。
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母の死の翌日
海水浴に行き、女と関係を結び、
映画を見て笑いころげ、
友人の女出入りに関係して
人を殺害し、動機について
「太陽のせい」
と答える
主人公ムルソーの姿を通し、
生の不条理を描く。
・・・
たしか10代後半の頃に初めて読んだのだが、
わたしが激しく同意した一文に賛同してくれる人は、
周囲にはいないだろう、と静かに受け入れたことを覚えている。
「私は、肉体的な欲求が
よく感情の邪魔をするたちだという、説明をした。
ママンを埋葬した火、
私はひどく疲れていて、眠かった。
それで、怒ったところのことを、
よく了解できなかったのだ。
私が確信を持っていいうることは、
ママンが死なない方がいいと思った
ということだけだ」
心の内で何を感じ、思っていようとも、
外の社会で人と接する時には、見えない
ルール(常識)があり、
日本では「世間様」という神様が
歴史ある宗教のように個々の精神に
宿っていて、
その頃の自分は、理解されない苦しみを持つ
若く幼くつたない子どもだった。
「異邦人」を読んで、すっきりしたことを覚えている。
これだけのベストセラー、同じキモチを持つ人が
世界には存在するのだ、と。
久しぶりに読み返してみると、
主人公のムルソーは、極めて受動的で温厚な性格で、
危険思想のひとかけらもない人物に見える。
ただ、彼の時代設定から
神を信じない、ということは危険思想因子を持つことに
あっけなく繋がる。
「精神的に母を殺害した男は、
その父に対し自らの凶行の
手を下した男と同じ意味において、
人間社会から抹殺さるべきだった」
わたしはテレビの「情報番組」系が苦手だ。
殺人事件などが起こると、首ねっこを掴んだ
かのように、正義をふりかざしてコメントする人々。
お悔やみの言葉も、儀礼的になりがち。
マスコミの論調は、
やはり世間様にそって形成され、
激しく煽っているように見えてしまう。
対立構造しか成立しないかのように
見えてしまうから、情報番組系が苦手。
善か悪か、正義か悪徳か、
常識か非常識か。
人間の感情は、行いは、こうあるべき、
そこからはみ出してしまう
人間も少なからず存在するのでは?
・・・と思うのだが、
繊細で複層的な機微は、すくってくれない。
まあ、だからこーいう小説があるのね。