てがみ 【手紙】
(1)考え・用件などを記して送る文書。書簡。書状。
「―を出す」
(2)葉書に対して、封書。
(3)常に手元に置いて用いる紙。半切り紙。
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携帯から年賀状が作成できる時代。
手紙を書く人が減っているからこそ、その価値は上がってきている。
とはいえ、ショップにはカードやら便箋やら充実したコーナーが健在。
需要はあるのだろう。
手紙からメールへ。
言葉を乗せて運ぶ機能としては同じ。
「手紙」というタイトルの歌や小説はきっと、
数多く存在する。
手紙、というキーワードが示す暗号的要素や
関係性を露呈してしまう危うさや、
時として証拠としての現実感など、
言葉から連想させる幅が大きいからだと思う。
ジェフリー・アーチャー氏の短編小説「手紙」の冒頭を記載します。
(本当は全文記載したいのですが、何か問題があるとよろしくないので・・)
客が一人残らず朝食のテーブルについたとき、ミュリエル・アーバスノットが午前の郵便物を手に持って大股に部屋に入ってきた。彼女は郵便物の束から白く長い封筒を引き出して、昔からの仲好しに渡した。
アナ・クレモントの顔にけげんそうな表情がうかんだ。彼女がこの週末アーバスノット家に滞在していることを、いったい誰が知っているのだろうか?
やがて見おぼえのある筆跡に目をとめて、彼の頭のよさにほほえまずにはいられなかった。
テーブルの向かい側の席に坐っている夫のロバートが気づいていないことを祈り、彼が、ザ・タイムズ>の記事に没頭したままなのを見てほっとした。
アナが注意深くロバートを見張りながら、封筒の隅を親指の爪で剥がそうとしたとき、急に彼が妻のほうをちらりと見て微笑をうかべた。
彼女は微笑を返し、封筒を膝の上に置いてフォークを手に取り、生ぬるくなったマッシュルームに突き刺した。
夫の顔がふたたび新聞のかげに引っこむまで、手紙を取り上げようとしなかった。
彼がビジネス欄に視線を戻したところで、初めて封筒を自分の右側に置き、バター・ナイフを手に取って、
親指で剥がした封筒の隅に滑りこませた。そしてゆっくり封を切りはじめた。開封しおわると、ナイフを元の場所、すなわちバター皿の脇に戻した。
次の動きに移る前に、もう一度夫のほうをちらと見て、彼の顔が依然として新聞のかげに隠れているかどうかを確かめた。間違いなく隠れていた。