歌白くるみのブログ

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  「━━━…み」
え、何?
「…くるみ」
誰?私のことを呼んでるのは…。あ、木々実花さんかな?
 「………くっるみー!」
ばふんっ。
視界の端で布団が翻る。そして、一瞬で体が冷やされていくのを感じる。部屋はエアコンで冷やされていて、6月中旬だというのに室温およそ18度。冷気が体を包み、とにかく寒い。それなのに私から布団を取り上げた人物に枕を投げつける。顔面に気持ちの良いほどにクリティカルヒットした枕がぼとりと落ちると、そこには顔をさすっているポニーテールの少女がいた。
「くるみ、酷いよ!折角人が起こしに来たのに、この仕打ち!」
まったくもう…と声を洩らしながら、少女はリビングの方へ向かっていく。私は眠い目を擦りながら制服に着替えようと、クローゼットへ向かった。
ポニーテールの彼女の名は伊藤ユウカ。私の友人で、運動能力が著しく優れている人間なのだが、限りのない馬鹿な人間でもある。先月行われた実力テストでは、全科目一桁の点数というある意味ミラクルな結果を生み出したりもしていた。私たちが通う「私立桜ヶ丘中学校」は、頭のレベルがそれなりに高くないと入れないような学校なのだが、そこに何故ユウカが入れたのかと疑問を持つ者はたくさんいる。
「伊藤ユウカは家がすごいお金持ちだから、数千万という大金を積んで裏口入学をした。」
「ユウカの綺麗な容姿と器用な話術で、学校のお偉いさんを口説き落とした。」
そんな噂がたったこともあるが、真実であるかは定かではない。後者は絶対あり得ないとは思うが。
「くるみー、ここにあるパン食べていいのー?」
「イチゴのジャムのパン以外なら。」
ユウカは勝手に人の家の食料を漁っていたが、これは日常茶飯事である。
この家には私以外の人は暮らしていない。なので、学校のある日は朝の弱い私をユウカが起こしに来てくれる。そのお礼に、朝食を賄う。かれこれ3年くらい、この生活が続いていたりもする。
私に両親はいないのだが、家族はいる。記憶に全く無いので人に聞いた話だが、何らかの理由で両親を失った私は、親戚の家などをたらい回しにされ、遠い親戚である夫婦の所に落ち着いたのだとか。両親がどうしていないのか、気になったこともあるが、親戚の人などにいくら聞いても誰も知りはしなかった。もしかすると私には内緒にしているのかも、などと勘繰ったりもしてみたが、明らかにそういう態度ではないので、それも違うようだ。不思議な話だな、と今では他人事のように思う。

家族らは、いつも仕事の関係で家にいない。実質、一人暮らしみたいな状態ではあるが、時折メールや電話をしてくれるし、学校に行けば友達もいるので特に寂しかったりなどはしない。

ついでに、朝が弱い理由は……。
 「くるみ、そろそろあの変なアニメの再放送の時間じゃない?」
ユウカがあんぱんを頬張りながら私に問いかける。

その言葉を聞いて、制服の一番上のボタンを締めることも忘れてテレビへ飛びつき、リモコンでチャンネルを光の速さで変える。すると、現代風のポップな曲が流れだす。画面に映るは、明らかに子供向けと思われるようなアニメーション。それを私はテレビの目の前に正座しながら見つめた。

「くるみ、テレビ近すぎ。」

ユウカの声がして後ろを振り向くと、パンが私に向けて投げられてきた。キャッチして見てみると、先程ユウカに食べるなと注意を促していたイチゴのジャムのパンだった。

「結局いつもオープニングの後の『良い子のみんなはテレビに近づきすぎないで離れてみてね』みたいなのを変なキャラクターが言ってるのを聞いて、こっちにくるんじゃん。」

こっちにおいで、というようにユウカは食卓の自分の座っている席の向かいの場所に手を向けた。

「変なキャラクターって何よ。みみたんはすっごく可愛くて、しかも変身すると強いんだから!」

私はユウカに講義をしながら結局ユウカの向かいの席へ座った。

「ユウカは単なるお子様向けの下らないアニメだとか思ってるんでしょうけど、この『マジカルみみぃ』は他の作品とは全然違くて、奥が深いんだから!特に37話の友達が実は敵で、みみたんが悶々と悩み、決断する回なんて、涙モノなんだから!今は割とクライマックスの方で、敵のボス的存在はみみたんの…。」

「ああ、もういいわ!」

耳を塞ぎながらユウカが叫んだ。つい、また熱くなってしまったようだ。

成績は中の中の上くらい、運動も得意ではないがそこそこ出来る私、歌白くるみはどこにでもいるような普通の女の子であると自負している。

しかし、そんな私だが人と少し違った一面もあったりする。それがコレ。

「あ、CM終わった!」

『よいこのみんな~!マジカルみみぃを見るときは、』

「『離れてみてねッ☆』」

みみたんのセリフの最後の方に自分の声を重ねる。

「本当、くるみってアニメオタクだよね。」

パンは食べ終えたようで、ユウカが頬杖をつきながらじとーっとこっちを見ている。

そう、私はアニメオタクなのだ。それも、かなりの重度の。生活費として家族から与えられるお金は殆ど、アニメのグッズを買うことに使っていたりもする。

「あれ?そういえば今日ってくるみ、日直じゃなかったっけ?」

「あっ……!」

「やっぱり?じゃ、日誌早く先生の所に取りに行かなきゃね。」

ユウカは通学用のリュックを背負い、テレビの電源を消した。

「何するの!?」

「だって、日直じゃん。早く行く用意しな。私、玄関で待ってるから。」

「だけど、だけど~…。」

アニメを最後まで見たかったが、仕方がないので私は泣く泣く諦めることにした。録画もしているし、学校から帰って来た後でも見れるわけだが、リアルタイムでみることに意味がある訳で……などと、心の中で呟きながら学校へ行く用意を進めた。


 職員室で日誌を入手し、教室に辿り着いた時にはもう8時を過ぎていた。

「くるみ、遅い。」

黒髪ショートカットで、制服をきっちり着崩さず着こなしている如何にも真面目そうな少女がこちらを睨んでいる。

「遅刻はしてないし。」

「職員室で先生が、いつになったら歌白は来るんだーって怒ってたよ?」

知ってる。だってつい先程こってり怒られたばかりだし。

 私の目の前にいる少女の名は尾上ミズカという。学級委員をやっていて、成績も常に首席。『優等生』って言葉はこういう人の為にあるのか、と感心するほどに優良な生徒である。その証拠に、「ESB」を持っている。この学校では、学年ごとに最も優秀な生徒にそのESBを与えている。エクセレント・スチューデント・バッジを略して…という限りなくダサいネーミングではあるが、学費が免除になったりと凄い特典があるらしい。それを持っているのだから、彼女がいかに優等生であるかは言わずもがな…。彼女は尾上の「おの」の部分が訛って「おにょ」と皆に呼ばれている。

 「おにょは、なんで職員室なんかに?」

「数学の先生に聞きたい事があって。ワークの187ページの問2が解らなかったんだよ。」

「…まだ習ってない所じゃん。」

気だるそうにユウカが机に突っ伏して小声で呟いた。





(~続きはまたいつか~)


中々更新出来ませんね…((((:3」 )_


何せ、受験生なモノですから……(*'・ω・)