中尾彬さんが演じた平忠度 | 話のコレクション

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食べ歩き、旅行、散歩を中心に記事にします。が、それらに行けぬ時は、古今東西の興味深い話を記事にします。

 


先日、名優の中尾彬さんが亡くなった。81歳。

中尾さんというと、悪役のイメージが強かった。

実際、悪役として出演した映画、テレビドラマが多かった。

 

こんな中尾さんだが、昭和47年(1972年)に出演したNHK大河ドラマ「新平家物語」では、風雅な武将・平忠度を演じている。

 

「新平家物語」は、ほとんどセットで撮影された、という。

合戦シーンですら、スタジオで撮られたのだ。

このドラマは、配役がかなり豪華だった。

 

平清盛 仲代達矢 平時子(清盛の妻) 中村玉緒 後白河法皇 滝沢修

建礼門院徳子 佐久間良子 平時忠 山崎努

源頼朝 高橋幸治 北条政子 栗原小巻 源義経 志垣太郎

木曽義仲 林与一

 

この他に、芦田伸介、緒形拳、北大路欣也、田村正和、片岡孝夫、中村勘三郎、小山明子、山本学、古谷一行、中尾彬、郷ひろみ、西田敏行、木村功、若尾文子、藤田まことらが出演。

 

映画、テレビドラマの主演級の俳優さんを、ずらっと並べたのだ。

 

この記事の動画は、「新平家物語」のオープニングタイトル。

 

 

中尾彬さんが演じた平忠度(たいらのただのり)というのは、平清盛の弟である。

 

彼は日本史の教科書に載っていないから、知る国民は少ないと思われる。

 

が忠度は、文武両道に優れた武将だった、と伝わる。彼は、

 

さざなみや 志賀の都は 荒れにしを

 

昔ながらの山桜かな

 

という名歌を詠んでいる。

この歌には、「旧都は荒廃したが、長等山の山桜は、相変わらず綺麗だ」という意味がある。

 

平忠度は、甥の平宗盛に従い、一ノ谷の合戦に出陣した。

戦いの半ば、源義経の奇襲攻撃を受け、味方は大混乱に陥った。

 

平忠度は、源氏方の武将・岡部忠澄と、格闘となる。

この時、岡部の従者に、片腕を斬り落とされてしまった。

これではもはや闘えず、岡部に討ち取られた。

 

その後、岡部は、忠度の箙に結びつけられたふみを、発見した。

 

箙=えびら。矢を入れて背負う道具。

 

ふみには、

 

行きくれて 木の下かげを やどとせば花や こよひのあるじならまし

 

という歌が書かれていた。

 

平忠度は、合戦に臨む時でも歌を詠んでいた。

文武両道に優れた忠度の死を、敵味方とも惜しんだという。

 

私はNHK大河ドラマ「新平家物語」を、総集編で見た。

これには、平忠度と岡部忠澄の格闘シーンが出て来た。

中尾さん演じる忠度は、腕を落とされると、苦しそうな顔をする。

そして、顔がみるみる青白くなってゆく。

そして、うめくような声で、「殺せぇ」と岡部に言う。

 

このシーン、(さすが、演技の上手い中尾さんだ)と感心したものだ。

テレビドラマなんだから、中尾さんは、実際は負傷していないのだ。笑

でも、本当に痛がっているように見えた。

 

見る者を欺けるのが、名優である。

 

中尾彬さんのご冥福を祈ります。

 

●画像は平忠度の絵。後世の絵師が想像で描いたもの。