鮎川哲也「りら荘事件」 | 話のコレクション

話のコレクション

食べ歩き、旅行、散歩を中心に記事にします。が、それらに行けぬ時は、古今東西の興味深い話を記事にします。

 

私がブログを始めたのは、2009年だ。

それから、文章をせっせと書く側にまわったせいか、読書はあまりしなくなった。

 

しかし、二昔前までは、よく読書をしたものだ。

 

 

30年ぐらい前、読んで気にいった推理小説に、

 

りら荘事件

 

があった。

 

この小説、「リラ荘殺人事件」というタイトルでも、出版されている。

 

原作者は、鮎川哲也という推理小説の大家。

代表作は、他に「黒いトランク」「黒い白鳥」「死のある風景」がある。

 

りら荘事件のあらすじを、下に紹介する。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

荒川の上流、埼玉県と長野県の県境付近に、りら荘がある。

りら荘は、秩父鉄道の影森駅で下車した後、三峰口方面へ20分ほど歩くと着く。

日本芸術大学の学生の、レクリエーション用の寮である。

 

りら荘に学生7人が滞在した日から、次々と殺人事件が起こる。

最初の被害者は地元民であり、死体の脇に、トランプのスペードのAが置かれていた。

 

第二の犠牲者は、学生の1人であり、死体の側には、トランプのスペードの2が置かれていた・・・。

 

殺人鬼は、一体誰なんだろうか?

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「りら荘事件」は、トランプを使ったトリックが冴えわたり、1986年に、出版された「東西ミステリーベスト100」(文藝春秋編)では、日本の推理小説部門で48位になっている。

 

しかし、不思議なのは、この名作推理小説は、1956年に発表されて以来、映画化、ドラマ化された事が一度もないのだ。

 

ストーリーも優れているし、登場人物達には個性がある。

それに、星影龍三という探偵も出てくる。

秩父地方の山や渓流は、腕の良い撮影監督なら美しく見せる事ができるだろう。

 

霧の中で死体が発見され、その近くにトランプが置いてある場面もあった。

その場面は、映像ならより印象的になるはずだ。

 

ドラマ、映画に、うってつけの題材に私には思えるのだが・・・。

 

たぶん、原作者の鮎川哲也が、映画化、ドラマ化を許可しなかったのだろう。

映画会社、テレビ局から、

「先生、映像化させてください」

と頼まれたことは、名作なんだから幾度もあったと思われる。

 

しかし、何らかの理由で鮎川先生は、首を縦には振らなかったのだろう。

 

 

そんなわけで、この作品は、本でしか味わえない傑作なのだ。

 

※なお、りら荘、日本芸術大学は、現実には存在しない。

 

 

 

余談だが、りらは、英語ではLilac。仏語だとLilas。

皆さんもご存じの花ライラックのフランス語名が、りらなのだ。

和名だと、ムラサキハシドイ。