大昔の日本人というのは、手づかみで食事をしていた。
それが、箸(はし)で食べるようになったのは、奈良時代だったと言われている。
607年、聖徳太子は小野妹子を隋に派遣した。
小野妹子は、遣隋使の第一号である。
翌年、小野妹子は帰国したが、いっしょに隋使が答礼の使節でやってきた。
ここで、聖徳太子は、
(困ったぞ)
と思った。
日本では、手づかみで食事をしているが、隋の国ではどうやって食べているのか?
失礼な供応、接待はできない。
聖徳太子は、小野妹子に、
「隋の国では、人はどうやって食べ物を食べているのじゃ?」
と尋ねた。
すると、小野妹子は、箸で食事をしている事を聖徳太子に伝えた。また小野妹子自身も、接待を受けた際は箸を使ったという。
これを真似て、箸作法で、隋の使者をもてなしたのである。
そんなわけで、日本で初めて箸を使い食事したのは、隋の国へ行った小野妹子であったようだ。
そして、箸を日本に広めたのは、聖徳太子である。
日本では箸食は、まず朝廷から始まったが、これが庶民に伝えられるのも早かったようだ。
奈良時代には、既に庶民も箸で食事するようになっていた。
ちなみに、中国では今から3500年前の殷の時代には既に箸食が行われていたらしい。
※注 古代の日本は、確かな記録が残っていない事が多い。この箸の話も、異説がある。日本で初めて箸を使った人が、小野妹子でなかった可能性もある。