●上の画像は、現代の人形浄瑠璃の一場面
「のろま」という言葉がある。
この言葉、いい意味ではまず使われない。
「のろま」の語源は、江戸時代の中頃活躍していた人形遣い野呂松勘兵衛(のろまつかんべい)の名前に由来している。
野呂松は、当時、人形浄瑠璃一座に在籍していた。
彼自身はけして、動作が鈍いわけではなかった。
そして人形浄瑠璃で、失敗ばかりやらかしていたわけではない。
いや、それどころか、彼の人形の扱い方は、とても素晴らしく「名人」と言っても良かったという。
つまり、人形の扱いは、超一流だったのだ。
ところが、彼が動かす人形というのは、身なりが悪い上に、ぐずな役柄が、多かった。
それでいて、その人形の動作が、とても上手かったもんだから、江戸の街で、大評判になった。
その為、誰かが、動作の鈍い人の事を指して、
「のろまつ」
と呼ぶようになった。
この言葉が、江戸の街にしだいに広がってゆき、やがて、短縮されて、
「のろま」
と呼ばれるようになった。
でもって、「のろま」という言葉は、明治時代以降も、使われ続けている。
言葉の語源になるぐらい、野呂松勘兵衛の人形の扱いかたは、素晴らしかったのだ。
もし、今の世にタイムマシーンが存在するのならば、江戸時代へタイムスリップして、野呂松の妙技を、1度見てみたいものである。