Dopesick アメリカを蝕むオピオイド危機 (Disney+ ドラマ) | 英検1級のその先へ

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翻訳の仕事ができるようになったものの、やればやるほど奥が深い英語道。映画を字幕なしで8割以上理解できたり、英語の本を日本語と変わらないレベルで読めるようになることを目指しています。

アメリカではhuluで見られるドラマ「Dopesick」は、日本ではDisney+でしか見られないようなので、これを観たいがためにDisney+に加入しました。

 

アメリカで問題になっていたオピオイドクライシスの発端の経緯を、ノンフィクション作品(Beth Macy作の同タイトルのノンフィクション)をベースにドラマ化したものです。和訳も出ています。

 

ネットフリックスの「アンビリーバブル」で性被害に遭う被害者を演じていたKaitlyn Dever ケイトリン・デヴァーが出演しているので興味を持ったのですが、硬派な社会派ドラマで見ごたえがありました!

 

以下あらすじ、少しネタバレです。

 

オキシコンティンという中毒性の強いオピオイド系鎮痛剤を製造・販売した製薬会社と、中毒になる患者が1%以下であるかのようなラベル表示を認可してしまった米FDA(Food and Drug Administration 食品医薬品局)の責任を追及する麻薬捜査局DEA(Drug Enforcement Administration)の捜査官と連邦捜査官や、ウェストバージニア州の炭鉱の町医者(Michael Keaton マイケル・キートン)、その患者たちが登場人物です。

炭鉱の仕事で怪我を負い、かかりつけ医(マイケル・キートン)から鎮痛剤としてオキシコンティンを処方された若い女性ベッツイをKaitlyn Dever ケイトリン・デヴァーが演じています。今回も演技力が相当高いです。

 

かかりつけ医であるマイケル・キートン演じる医師本人も、鎮痛剤として使用して、依存症になり苦しみます。地域の医療を長年になってきた自分が、オキシコンティンを服用させて、依存症にさせてしまったことも彼を苦しめます。

 

そもそもストーリーの始まりは1995年、製薬会社パーデューがオキシコンティンを開発したときで、創業者でオーナー一族のサックラー家の営利追及のツールとしてオキシコンティンが開発され、依存性がないかのような文言や誤解を生むようなグラフを用いて医師や病院を信用させ、爆発的な利益を上げます。

 

ドラマでは1995年から2019年までを行ったりきたりして、その時々どのような状況だったのかが描かれますが、これが私には少し分かりづらく、今がいつなのかわからなくなってしまいがちで、苦手でした。

 

2007年には、本来よりも中毒性があることが問題となりパーデュー社は6億ドル相当の罰金を命じられます。ドラマではそのあたりまでを重点的に描いています。が、その後も成分を改良して他社が販売を続け、オピオイド系鎮痛剤の乱用による死亡者が増加し続け、トランプ政権時に「オピオイド非常事態宣言」が発令され、処方箋に乱発などが規制され、厳罰化がなされています。

 

また、2019年ジョンソンエンドジョンソンがNY州にオピオイド問題の蔓延を助長したとして約2億ドルの和解金の支払いに合意しました。今現在はオピオイドの処方数は減っているものの、依然問題はあり続けているといえるでしょう。

 

パーデュー社の創業家サックラー一族はこの一連の問題の和解金約45億ドルを支払うことになり、パーデュー社は破産申請し、2024年までに解散が決まっています。が、この一族が逮捕されることもなく、富豪のまま生活を続けていられることに遺族は納得しがたい思いでしょう。

 

日本では、がん患者の痛み緩和や手術でオピオイドの使用はありますが、使用数は圧倒的に少なく、法律の厳しさもあり、同じような問題がすぐに起こるとは思えませんが、このオピオイド問題は、製薬会社だけの問題でなく、炭鉱で栄えた地域の失業問題、貧困、無保険者の問題、さらには製薬会社と国の機関の担当者の癒着問題など、様々な要因があり、この件に関して英語で調べてみるだけでも、語彙が増えて勉強になります。原書、和訳ともに読んで理解を深めて、再度ドラマを見てみたいです。