第49条【議員の歳費】両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

 

≪私なり解説≫

○衆議院議員及び参議院議員は、法律が定めた歳費を受け取ります。歳費とは、一般的な会社員が受け取る給料(又は賃金)みたいなものです。それを国庫(要するに「国のお金」)から受け取ることになります。

 

【特集】国会議員は、いくらお金を受け取っているのか?

○それでは、国会議員がどのような歳費、及びそれに準ずる手当等を受け取っているのか確認いたします。

○まず、議員が国から直接受け取る歳費及び手当は、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」(以下「歳費法」と省略します。)で定められています。その歳費法第1条により歳費月額は、各議院の議長は217万円、副議長は158万4千円、議員は129万4千円を受けることになっています。ただしコロナ禍において、議長、副議長及び議員いずれもその額の8割支給(2割カット)が令和3年4月30日まで続くこととなっています(歳費法附則による)。そして期末手当は、夏と冬にそれぞれ歳費の2.45ヶ月分(合計4.9ヶ月分)が支給されます。これは歳費法第11条の2第2項で『超えない範囲内で』と記載されていますが満額支給されているものと思われます。

 それ以外に重要なものとして、『文書通信交通滞在費』が月額100万円支払われます(歳費法第9条第1項)。この文書通信交通滞在費は、同法9条第2項により『租税その他の公課を課することができない』とされ、つまり所得税などの税金の掛からない費用となっています。これは定額払いきりで、領収書も必要のないうえに税金も掛からないことから、一般的な会社員が受け取る給料以上に国会議員に対して特別に保護された費用が支払われることになっています。

 この文書通信交通滞在費とは別に、すべての議員は無料でJRが使える特殊乗車券の交付を受け、またはこれと併せて無料の航空券の交付も受けることができ(歳費法第10条)、また公務で旅行するときはほかに旅費も支給されます(歳費法第8条)。

 ほかに国会の役員等(常任委員長、事務総長ほか)に対して支払われるものもありますが、省略します。その他、国会議員と内閣の特別職を兼ねる者(内閣総理大臣、国務大臣、副大臣等)は、「特別職の職員の給与に関する法律」で定められた給与が支払われることになっていますが、歳費法第7条では「公務員の給料額が歳費の額より多いときは、その差額を行政庁から受ける」ことになっており、国会議員の歳費とは別に内閣の一員としての給与が満額支払われる訳ではありません。ちなみに現在、内閣総理大臣の俸給月額は201万円、国務大臣は146万6千円、副大臣は140万6千円です。

 ここまでで、なんの役職にも就いていない国会議員の受け取る金額は、3,400万円程度になります。ただし、これは歳費の2割カットを考慮していない金額です。

(参照)歳費法 国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律 | e-Gov法令検索 (e-gov.go.jp)

(参照)特別職の職員の給与に関する法律 特別職の職員の給与に関する法律 | e-Gov法令検索 (e-gov.go.jp)

○以上の歳費、手当等以外にも国会議員が受け取ることの出来るものがあります。それは『立法事務費』です。これは議員が国から直接受け取ることは出来ませんが、各議員が所属する各会派がこれを受け取り、そして各議員に渡されている費用だと思われます。

 これは「国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律」に定めがあり、その第1条で国は各議院における各会派(所属議員が一人の場合を含む)に対して立法事務費を交付することとなっています。これは、各会派の所属議員数に応じ、議員一人につき65万円で計算した金額が各会派に毎月支払われることになっています(同2条及び3条)。

 ここまでを合計すると、国会議員の受け取る金額は、4,200万円程度になります。

(参照)国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律 国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律 | e-Gov法令検索 (e-gov.go.jp)

○さらに政党交付金があります。これは「政党助成法」に基づき、政党要件(政党助成法第2条)を満たした各政党が受け取るもので、直接議員が受け取るものではありませんが、各政党を経由して議員に選挙資金等として渡されたりしています。この政党交付金は使途や金額に制限がないと言われており、今年2月3日に議員辞職した河井案里前参議院議員(2月5日に公職選挙法違反の有罪が確定)に2019年に渡された1億5,000万円が問題となりました。2019年7月の参議院選挙の広島選挙区での法定上限額について広島県選挙管理委員会に確認したところ、4,726万9,500円です。自民党本部から河井氏側に渡されたお金は、公職選挙法が認める金額を1億円以上上回っており、これは自民党本部が選挙犯罪を唆(そそのか)したとも言えるのではないでしょうか? 政党交付金の総額は、簡単に言うと国民の数に250円を乗じた額とされており、令和元年分は平成27年国勢調査人口(127,094,745人)に250円を乗じた額のようで、交付額の総額は317億5,537万9,000円とされています。

○ほかに国会議員の秘書(公設秘書)に渡される給与等がありますが、これは公設秘書に対して国から直接支払われることになっており、国会議員の収入とみなすようなものではありません。ちなみに公設秘書が受け取る給与等は、「国会議員の秘書の給与等に関する法律」で定められており、国会法第132条第1項により国会議員1人に秘書2人が(必ず)付され、同条第2項により秘書1人(一般的に「政策担当秘書」と言います。)を付すことが出来るとされています。政策担当秘書は、資格試験などで資格を得る必要があるのですが、議員に必ず付けられる秘書2人(一般的に「第一秘書」「第二秘書」と言います。)よりも低い給料表が適用されています。

(参照)国会議員の秘書の給与等に関する法律 国会議員の秘書の給与等に関する法律 | e-Gov法令検索 (e-gov.go.jp)

(参照)国会法 国会法 | e-Gov法令検索 (e-gov.go.jp)

 

【特集における考察】国会議員に渡されるお金で『無駄』なものは何か?

①まず金額の大きさから『政党交付金』です。これは正確には、国会議員に国から直接渡されるお金ではありませんが、国から交付金を受け取った政党が、それを所属議員や関係者に支払っているお金です。前述しましたように令和元年分の交付額が約318億円、令和2年分の交付決定額も約318億円です。令和元年分の交付額を、現在の国会議員の定数(衆議院465、参議院248の合計)713で割ると、国会議員1人あたりの政党交付金が算出できます。その金額は、なんと4,454万円です。これまでに計算した国会議員が受け取る金額約4,200万円よりも大きな金額になります。これだけの規模の金額が政党に渡されれば、国会議員の多くは所属する政党の執行部に逆らえなくなり、本来全体の奉仕者として国民のみに拘束されるべき国会議員が執行部の顔色を窺い、執行部に拘束され、国民にとって必要な政策等を考えなくなっては本末転倒です。政党交付金の根拠となる「政党助成法」の目的には『政党の政治活動の健全な発達の促進』と書かれていますが、健全な発達が阻害されているように見えます。

 政党の存在自体を否定する訳ではありませんが(ほとんどの国に政党政治はあり、戦前の日本でも政党政治は存在しました。)、政党交付金の額はあまりに大きいのではないでしょうか?政党にとって必要な額がいくらであるのか考え直す時期に来ているのではないかと感じます。必要なものとして挙げられるのは、政党本部や政党支部の設置維持費用、政党の広報費用くらいだと思います。それに対して、令和3年分の政党交付金の政党別の試算額(NHKのHPより)は、自民党が約170億円、立憲民主党が約69億円、公明党が約30億円、国民民主党が約24億円、日本維新の会が約18億円などとなっています。この交付金額が過大であることから、選挙のために政党の言いなりになる議員が増え、それが議員の質の低下をもたらし、政党交付金の導入がかえって国家の損失となっていると判断します。(また、選挙にお金のかからない仕組みづくりが必要です。)

 なお、共産党は政党助成法に反対の立場から、政党交付金の受け取りを拒否し続けています。その趣旨は理解出来ます。しかしながら、政党交付金の受け取りを拒否すれば、そのお金が他の政党に渡ることになり、特に与党を利することになっているのではないかと考えます。きちんと計算した訳ではありませんが、議員数や選挙での得票率を考えれば、これまでに年間15億~18億円程度のお金を受け取ることが出来ていたと思われます。

(参考)NHKニュース ことしの政党交付金 8党に総額317億7300万円交付へ | NHKニュース

②つぎに『立法事務費』です。これも国から国会議員に直接渡されるお金ではありませんが、『政党交付金』とは違い、議員1人あたり月額65万円として各会派に支給されるため、それがそのまま議員に渡されているものと思います。立法事務費の根拠となる法律の目的には『国会議員の立法に関する調査研究の推進(に資するため)』と書かれているのですが、これはそもそも国会議員の歳費(給料)に当然に含まれている性質のものではないかと考えます。国会議員の職務は、憲法から読み取れる主要なものとして3つあります。それは❶内閣総理大臣の指名投票、❷法律案の審議、❸予算案の審議、以上です。❶は1内閣につきほぼ1回で終わりますので、毎日のようにしなければならない職務は❷と❸です。その2つのうち、1つが立法作業であることから当然にその対価は歳費(給料)に含まれているとするのが、本来あるべき姿ではないでしょうか。よって、この『立法事務費』は廃止すべきだと考えます。

③最後に『文書通信交通滞在費』です。前述しましたように、毎月100万円が歳費とは別に国会議員に支払われております。しかも税金がかからず領収書も必要がありません。結局、何に使っても分からない、フリーハンドのお小遣いです。こんなお金を渡されて、庶民の暮らしに思いを尽くすことが出来るでしょうか? せめて、定額ではなく領収書を提出した金額だけを実費支給するように変えさせる必要があると思います。また、歳費(期末手当を含む)約2,200万円だけをとっても、世界の国会議員の中でもっとも高い給料だと言われています。次々回の【特別考察2】『一票の格差、その是正について(参議院)』の中で取り上げますが、議員歳費も引き下げるべきです。