ウェブトゥーン連載中の韓国版の和訳です。

日本語版からはネタバレになりますのでご注意を。 

 

以下499話訳です。

 

 

(信じられない顔で陸を見る埼玉)

 

【あの日だった。あの日、二人を殺した】

 

埼玉:冗談だろ?全然笑えねえよ、なんでこんな悪戯するんだ?みんなして俺をだますために演技したんだろ?だから言ってくれよ、早く冗談だって言えよ!

 

(陸の胸倉をつかみ叫ぶ埼玉)

 

埼玉:この野郎なんでだよ!なんで何も言わねえんだ!言えってば!面白くねえから!もうやめてくれよ!

 

(陸の顔をめちゃくちゃに殴る)

 

埼玉:よし、お前が直接言え!スジン!聞こえねえのか!?早く言えよ!

 

(動かないスジンにハッとし、恐る恐る近づく)

 

埼玉:お前大丈夫か?

 

(口元に手を近づける)

 

埼玉:〔息をしてない〕…先生、スジンはどうしたんだ?

 

(スジンをかかえ家を飛び出す埼玉。残され呆然とする陸。発作で自分がスジンを襲ったと思い慟哭する)

 

陸:うわああああ!!!

 

(地面に頭を何度も叩きつけ、血を流し泣き叫ぶ)

 

陸:うわああ!うわああ!

 

 

(その頃、天満は家に帰りソワソワしていた)

 

天満:〔大丈夫だ、全部上手くいく〕

 

(回想:ぐったりしたスジンを抱え走る天満)

 

天満:〔ダメだ、死んじゃだめだ、俺が殺人犯になっちまう!死んだらどうしよう、今度は処理してくれる夜叉もいない!王になって間もないのに!死体を処理してくれる奴がいない!このまま燃やしちまうか?!山に捨てるか?最初からスジンなんて知らないふりで!?いやアイツに見られてる!何とか方法を考えないと!〕

 

(その時、陸のコンテナハウスが目に入る)

 

天満:陸壮史!大変だ!スジンがけがをした!山で転んで!…陸?

 

(部屋で気を失い寝ている陸に気付く。角津幹慈がジェウに言っていたことを思い出す)

 

幹慈:君らも聞いたことがあるか、PTSDだ。

ジェウ:PTSD?

幹慈:心的外傷後ストレス障害。陸壮史が生贄だったことは君も知ってるだろう。村人たちが自分を見る視線と侮蔑。陸壮史はその時からPTSDを患い始めた。陸壮史が山に住んでいるのも病気がその理由だ、村人と顔を合わせると発作を起こすからだ。

 

(その会話を、天満はコンテナハウスの外で聞いていたのだった)

 

天満:ちくしょう、あの時言っていたあの病気なのか?!よりによってこんな時に!こんなことしてる場合じゃない!早く村に行って助けなきゃ…!〔待てよ、もう手遅れだったら?〕

 

(天満はスジンの首に陸の包帯を巻き、スジンのズボンを脱がせ陸の傍らに寝かせてその場を去ったのだった)

 

 

(陸は海岸にいた。波打ち際に立ち、ゆっくりと海の中に入っていく)

 

陸:〔そうだ、早く死ぬべきだった〕

 

【とっくの昔、あの時に俺は死ぬべきだったんだ】

 

(回想:まだ幼いボロボロの陸が波打ち際に打ち上げられている)

 

【家族は俺を天倆に捨てていった。あの日俺は死ぬべきだった。ところが生かされた】

 

ムジン:魚を捕まえに来たんだが、こんなに小さい魚は初めてだ。

 

【ジン・ムジンに】

 

ムジン:見知らぬ出会いは嫌いなんだが、ほおっておくには幼すぎる。拾ってみるか。

 

【変わった男だった。世界を放浪していると言っていた】

 

(陸に上着を掛け、焚火で温める。尻に敷いているのは赤子神像だった)

 

ムジン:お前日本語はできるか?

 

陸:日本語?

 

(長髪で、埼玉そっくりの顔にサングラスをかけたムジン。その傍らには、金銀の財宝とあの赤い紙)

 

ムジン:手に入れたんだが日本語だから読めん。やはり都会に行って読める人を探すか。

 

陸:見せてください。

 

ムジン:え?

 

陸:俺、日本語読めます。

 

ムジン:なんて書いてある?

 

陸:え…と…その…これ何だっけ…

 

ムジン:読めねえんじゃねえか?

 

陸:き…急だから思い出せなくて…忘れたのもあるし…少し…もう少し僕と居てくれたら思い出せると思います。

 

【嘘だった。人恋しかったから。優しさが懐かしかったから】

 

ムジン:悪いな、俺は家族は要らないんだ。

 

【それに俺は】

 

ムジン:だが日本語を思い出すまで一緒にいてやるか。

 

(ニカッと笑うムジン)

 

【その男が好きだった】

 

(ムジンは陸に火のおこしかたや巻き割り、テントの張り方、寝床の作り方を教えた)

 

【男は俺に山で生きていけるように作った。泣かないように、寂がらないように作った】

 

(金の赤子神像を枕に眠る陸)

 

【俺がまた人を信頼できるようしてくれた】

 

(朝目が覚めると、財宝と赤い紙をそっくりおいて姿を消していた)

 

【それが最後だった。全ての物を男は俺に残して立ち去った】

 

(それから、天満神明の生贄として石を投げられる陸)

 

【生贄になった。人恋しくて下りた村で捕まり生贄になった】

 

【冷たい視線】

 

村人:指が6本?縁起でもない。子供たちが怖がるわ。

 

【暖かかったあの男の目とは違った。ようやく人を信じられるようになったのに】

 

村人:生贄にしておくつもり?死んでしまえばいいのに。

 

【作られた俺はまた壊された。地獄だった】

 

(小島兄弟に鍛錬を受ける陸)

 

【同時に夜叉として作られた】

 

小島兄:夜叉をなぜ増やすんだ?

小島弟:前に財宝を盗まれただろう。

小島兄:神明の奴、生贄に使いながら夜叉にもしようとするとは、正直哀れな奴だ。

 

(現在:海に沈んでいく陸。再び回想:夜、手下たちに追われ山中の車道を逃げる陸)

 

手下:捕らえろ!逃がすな!

手下:天倆から出る前に止めろ!ほかの村に行かれたら面倒なことになる!

 

【逃げ出した。自由になりたかった】

 

(だが村の外へ続く道を見て足を止める)

 

【世間が俺を見てどう思うかわかったから】

 

村人:おい見ろ、指が6本だぞ。

村人:気持ち悪い、縁起でもねえ。

 

(発作が起こり、吐いて動けなくなる陸)

 

陸:オエエエエエ!!!

 

【PTSDだった】

 

(発作が収まり陸が気が付くと、周りには血だらけで倒れた手下たちが転がっていた。記憶が飛んでいた間、無意識の陸が倒したのだった)

 

【あの時からだ。発作が起こると何も覚えていない。人は好きだが、人が怖くて隠れて暮らした】

 

(山の中のコンテナ小屋に籠る陸)

 

神明:陸壮史を捕らえられないだと?

 

手下:はい、山中に隠れ暮らしていると思われます。

 

神明:なぜ村を離れない?

 

手下:わかりません。

 

神明:まあ理由はどうでもいい、奴を見つけても捕らえなくていい。

 

手下:は、それはどういう…

 

神明:奴が必要だったのは生贄だったからだ。だがもう用済みだ。もっといい生贄がみつかった。

 

手下:では陸壮史はほおっておかれますか?

 

神明:近頃世間がサークルだなんだと騒いでおるだろう。そのサークルとかいう奴らに噂を立てるんだ。天倆山に怪物が住んでいると。奴ら同士で戦わせるんだよ。

 

(天倆のジャージを着た大勢の男たちが陸の元に現れる)

 

男:天倆山に怪物が住んでるっつーから来てみたら、怪物じゃなくてタダの人じゃねーか。まあいい、天倆山は俺たちが食う。

 

(男たちを殴り飛ばす陸。繰り返し様々なサークルの猛者たちが襲い掛かる)

 

【仕方なく、生きるために戦った。守るために戦った。仕方なく戦っただけだ。なのに世間は勝手に俺を天倆の王と呼ぶようになった】

 

(そんな時、陸の家をある男が訪ねてくる)

 

陸:誰だ。

 

幹慈:天倆に怪物がいると聞いて来たが、仕方なく戦っていただけだったのか。戦いと戦争に狂った時代だが、お前は俺たちとは違うようだな。話がしてみたい。

 

(現在:深い海の底に沈んでいく陸。回想:薪割りをする陸を物陰から見ている者に気付く)

 

【そして、あいつらに出会った】

 

陸:またサークルか?

 

(未玖と天倆ファミリーの4人)

 

陸:今度こそ本当に殺してやる。

 

ジェウ:うわあああ!!!ごめんなさい!!!天倆山の怪物、どうか食べないで!!!

 

(思わずフッと破顔する陸)

 

陸:怪物?まったく、お前らは馬鹿か?

 

【思いがけない縁だった】

 

ジェウ:あれが初めての出会いだったよな。赤子神がインチキなこととか、陸兄貴は俺たちにたくさんのことを教えてくれた。

 

(埼玉を加えた皆で輪になり焼肉を食べる)

 

ジェウ:その時から俺たちは先生って呼んでるんだ。

 

【一生ないと思っていた。一生俺には幸せなんて来ないと思ってた】

 

(現在:海底に沈むイカリの鎖を自ら首に巻きつける陸)

 

【あの時死ぬべきだった。家族が俺を天倆に捨てた、あの日に俺は死ぬべきだった】

 

陸:〔すまない〕

 

(埼玉とスジンを思い浮かべる)

 

陸:〔すまない、ひどいことをした。俺を赦さなくていい〕

 

(砂浜に、陸の腰巻だけが打ち上げられる)

 

 

(スジンと陸の葬儀。遺影を前に涙を流す天倆ファミリーの4人と未玖、埼玉)

 

(陸を殴り責めたことを悔いる埼玉)

 

埼玉:〔俺が殺した。あの時抱きしめてやるべきだった。殴るべきじゃなかった。俺が殺したんだ〕

 

(スジンを思う)

 

埼玉:〔ひとりにするべきじゃなかった。俺が守るべきだった〕

 

(葬儀場の隅で村人たちが噂する)

 

村人:どういう事だ?

村人:怪物が逃げて来た使用人の女の子を襲ったんだそうよ。女の子はそれを苦に自殺したって。

村人:怪物は殺されたのか?

村人:怪物も自殺したらしい。

村人:どこで?

村人:海に入ってくのを見た人がいるらしい。

村人:海?

村人:海岸で怪物の腰巻が見つかったそうだ。天倆の荒れた海に入れば生きてはいられん。

 

(松葉杖をついたジェウが叫ぶ)

 

ジェウ:違う!!!そんなはずない!!!

 

テボン:落ち着けジェウ!

 

ジェウ:先生がそんなことするはずない!天満泰治の仕業に決まってる!!!俺は天満がスジンを追いかけるのを見たんだ!!!スジンを殺したのは先生じゃなく天満だよ!天満がスジンを自殺に追い込んで!先生に罪を着せたんだ!

 

テボン:そんなこと言っても無駄だ!お前もわかってるだろ!この村は天満の味方だってこと!

 

 

(自宅で考え込む天満。警察官が天満に言った言葉)

 

警察:初めからご相談下されば私どもが手助けいたしましたのに。事件は完璧に処理いたしました、全ては赤子神様の御心のままに。

 

(その言葉を思い出しほくそ笑む天満)

 

天満:〔こんなに簡単だったとは、ハナから警察に任せればよかった。陸壮史は犬死だったが、まあ天倆に奴はもう不要だから〕

 

(その時、戸の向こうに物音がする)

 

天満:そこにいるのは誰だ?〔この天倆に、俺を邪魔する奴はいない〕誰がうろついている!さっさと姿を見せろ!

 

淳助:じゃあ入るぜ?

 

天満:え?

 

淳助:じゃ~ん。

 

(スターンと戸が開き、淳助が笛を手に現れる)

 

淳助:お前が天満泰治だな?天倆で好き勝手してるらしいじゃねーか。この俺が何しに来たと思う?

 

(眼鏡を上げ、ニヤリと笑う淳助)

 

 

499話 終わり。