ウェブトゥーン連載中の韓国版の和訳です。

日本語版からはネタバレになりますのでご注意を。 

 

 

以下488話訳です。

 

 

(男巫女の屋敷。男巫女がグラスにウィスキーを注ぐ。練馬との取引のことを考えている)

 

【0世代 「チョン・シンミョン」】

 

男巫女:練馬との共同開発が始まるが、一つ懸念がある。山にいるユク・ソンジンだ。野放しにしておくと変数になるかもしれん。ウチの夜叉なら簡単に奴を片付けられるが、奴らにも仕事がある。そこで実力がある君らを呼んだのだよ。

 

(男巫女の前の酒宴には、3人の屈強な若者が座っている。それは若かりし頃の現・新子星羅チームの3人だった)

 

【0世代 前迫田甲竜組】

 

保良:はいはい、だいたい分かった。俺たちにそのユク・ソンジン?とかいう奴をシメてくれってんだろ。

 

【0世代 前迫田甲竜組「保良与太郎」】

 

野暮:報酬は弾んでくれんだろうな?俺たちまだ若く見えるが、そろそろ老後の準備もしなきゃなんなくてね。

 

【0世代 前迫田甲竜組「野暮助蔵」】

 

大艶:迫田甲竜組も地に落ちたもんだ。金のために1世代のガキを始末しなきゃなんねーとは。甲竜のボスが政界進出さえしなきゃ。

 

【0世代 前迫田甲竜組「大艶出」】

 

男巫女:報酬は弾もう。だがそう簡単ではないことを肝に銘じてくれ。ユク・ソンジンは並みの奴ではない。君らが返り討ちにあうこともあり得るのだ。

〔ユク・ソンジン。悪縁を終わらせよう〕

 

(屋敷を出る3人)

 

大艶:我々がやられるだと、面白いことを言う。俺たちは今が全盛期なんだぜ。

〔奴はお終いだ〕

 

 

(少女の言葉を聞き涙を流す埼玉)

 

埼玉:俺の母さんが死んだ理由…言え。言えよ、早く言えって!

 

(少女の肩を掴んで迫る)

 

埼玉:俺の母さんは何で死んだ!母さんはなぜ死んだ!早く言わねえか!?今すぐ言えよ!

 

(その剣幕に涙ぐむ少女。その時、同じように天満に肩を掴まれ言われた言葉を思い出す)

 

天満:大丈夫、今は君に手は出さないよ。でも俺が巫女になった時は、分かるね?

 

(その時の恐怖がぶり返し、過呼吸になる少女。ハッと手を放し我に返る)

 

埼玉:ご…ごめん!脅すつもりはなかった!俺つい興奮し…いやその興奮じゃなくて!水要るか?ほら水飲め、ほら!

 

(少し落ち着いた二人。少女に背を向けて座る)

 

埼玉:…頼むよ、教えてくれ。俺はずっとそのことを引きずって生きてきたんだ。俺を置いて死んだ母さんを憎んで生きてきた。母さんのことで知ってることがあるなら教えてくれ。俺はそれを知る権利がある。でなきゃ…でなきゃ…俺この先一生母さんを恨んで生きてかなきゃならないんだ…!

 

(大粒の涙を流す埼玉。その様子に悄然として重い口を開く)

 

少女:…7年前。

 

(回想:男巫女の屋敷。まだ幼い少女が大人の使用人に交じって整列している)

 

【7歳の頃だった】

 

使用人:みんな集まりましたね?今日から私たちと一緒に働く、巫女様の身の回りの世話をされる方です。さあご挨拶してください。

 

【巫女様の家に新人のおばさんが入ってきた】

 

埼玉母:…こんにちは…ソウルから来ました。このたび天倆に住むことになりまして。

 

【綺麗なおばさんだった。綺麗だけど悲しそうに見えた。綺麗なおばさんは頑張って働いていたよ】

 

使用人:おばさん頑張るねえ。

 

埼玉母:巫女様との約束がありますから。

 

【理由は分からないけど、どんなことにも一生懸命働いていました。巫女と息子さんに関する約束をしていたみたいで】

 

使用人:おばさん、巫女様のところに行ってください、さっきからおばさんを探してましたよ。

 

【息子さんのために綺麗なおばさんは何にでも一生懸命だった】

 

埼玉母:そこのお嬢ちゃん?

 

(埼玉母が少女に声をかける。少女にキャンディーを差し出す)

 

【私はそんな綺麗なおばさんが好きだった。母親がいない私の】

 

埼玉母:うちの息子と同い年くらいだわ。

 

【おばさんは母親がわりになってくれたの】

 

少女:キャンディー…!こんな貴重なものを…!

 

埼玉母:いいからお食べなさい。無くなったらまたあげる。食べたいものがあったらおばさんに言えばいいからね。

 

【私には天使みたいな人だった】

 

使用人:おばさん、ここにいたんだ。

 

埼玉母:え?

 

少女:これは噛んで食べるの、舐めて食べるの?

 

使用人:早く体育館に行ってください。

 

埼玉母:体育館になぜ?

 

使用人:巫女様がお呼びですよ。

 

(体育館で埼玉母を待ち構えている男巫女)

 

埼玉母:…はい。

 

【私は不思議だった。巫女様がなぜおばさんをしきりに呼びつけるのか】

 

埼玉:…舐めて食べなさい。おばさん行くわね。

 

【きれいなおばさんと何を話しているのか】

 

少女:〔こっそり美味しいものでも食べてるのかな?〕

 

(埼玉母の後をつけて体育館をのぞく)

 

【そしてその日、見てはいけないものを見てしまったの】

 

【いけないこと】

 

【おばさんはいけないことをされていたの】

 

(髪留めが落ち、呆然とベンチに座る埼玉母)

 

少女:おばさん、大丈夫?私、全部見ちゃったの。巫女様がおばさんを殴ってたよね?巫女様はどうしておばさんを殴るの?おばさん、どうして巫女様に怒られたの?おばさん、巫女さんに何か悪いことした?

 

(呆然としていた埼玉母は、少女の頭に手をやり悲しげにほほ笑む)

 

埼玉母:違うの、体育館だったでしょ。

 

【わかったの。そう言ったおばさんの目】

 

埼玉母:おばさんは巫女様と柔道をしていたのよ。

 

【それは嘘をつく目だった】

 

 

(その夜も埼玉母を呼び出した男巫女が服を脱ぎ始める)

 

男巫女:何をしている?脱ぎなさい。

 

埼玉母:もうやめてください。

 

男巫女:何だと?

 

埼玉母:もうこれ以上こんなことしたくないんです。

 

男巫女:そうか?ではやめよう。

 

埼玉母:本当ですか?

 

男巫女:だがお前の息子は可哀そうなことになるな。私はお前が仕事に励めばソウルに帰してやると言ったのに、これが嫌だと言うならソウルには帰れんな。私にこの家から追い出されれば、金はどうやって稼ぐ気だ?私の天倆の中で、息子を食べさせることができると思うのか?それに、私がお前の息子を生贄にするかもしれんぞ?

 

(その言葉に衝撃を受ける)

 

埼玉母:…いったい、いったいなぜなんです…私がどんな過ちをしたと…私たちが何か悪いことをしましたか…私たち、何も間違ったことをしたことないのに…!

 

(床に伏して泣く埼玉母。その姿を見て男巫女の脳裏に過去の光景が蘇る。同じように男巫女の前にひざまづき、涙を流す浅黒い肌の女と、怒りに燃え目を光らせ睨む屈強な男の姿。激高して埼玉母に掴みかかる男巫女)

 

男巫女:このクソ女!!

 

埼玉母:きゃああ!

 

男巫女:何か悪いことしたかだと?!何か悪いことしたかだと!?お前は自分が被害者だというのか?俺が悪党だというのか?!

 

(男巫女が思い浮かべるのは、浅黒い肌の女の笑顔。泣きそうな顔で拳を振り上げる男巫女)

 

男巫女:本当の被害者は誰かも知らんくせに!!!

 

(埼玉母をめちゃくちゃに殴り始める)

 

男巫女:そんなに辛いなら死ね!!そのまま私の前で死ねよ!!死ぬこともできんくせに!!もしお前が死んだら、俺は感動してお前の息子を生贄にするのをやめるかもな!?

 

(殴られながらその言葉にハッとする)

 

男巫女:死ぬこともできんくせに…本当に死にたいのは誰かも知らないで…お前が何か悪いことしたかだと?そんなに理由が知りたいか?教えてやろう。

 

(男巫女が何かを告げる。その言葉を聞き呆然とする母に男巫女が馬乗りになる。その一部始終を物陰から少女は見ていた)

 

【その日が、きれいなおばさんを見た最後だった】

 

(現在:話を聞き、埼玉が床に手を突き慟哭する)

 

少女:二人が何を話していたのかはわからない、でもこれだけは確かだよ。お兄さんのお母さん、きれいなおばさんは、チョン・シンミョンのせいで亡くなったのよ。

 

 

(夜更けの男巫女の屋敷。門の前で手下が一人見張りに立っている)

 

手下1:おい。

手下2:ああ来たか。

手下1:交代だ。

手下2:もうそんな時間か。こんな静かな村でなぜ警備が要るのかわからん。

手下1:前に侵入者でも出たんじゃねえか。

手下2:まあいい、頑張れ。

手下1:お疲れさん。

 

(手下2が行き、代わりに見張りに立つ手下1)

 

手下1:眠いな、今日はどうやって眠気に耐えようか。

 

(そこへ、怒りに燃えた埼玉が現れる)

 

 

(天倆山。ソンジンとの稽古で息を切らすジェウ)

 

ジェウ:今日はここまで!もう吐きそうです!

 

ソンジン:情けない奴め、埼玉に勝ちたい奴がこの程度で音を上げるのか?

 

ジェウ:むかつく〜!

 

(地面に座り込むジェウ)

 

ジェウ:冷静になって考えると、埼玉はなぜあんなに強いんです?シルムも空道も一番遅く始めたアイツに、俺たちはその指さえ触れないじゃないですか。勝てるのは未玖だけ…

 

未玖:いや、埼玉はあたしには本気でかかってきたことない。

 

ジェウ:え?

 

未玖:埼玉は柔道でだけあたしにかかってきた、あたしは「柔道ロマン」の埼玉に勝っただけよ。

 

ソンジン:潜在能力の差だ。

 

ジェウ:潜在能力?

 

ソンジン:俺たちと埼玉ではスタート地点が違う。あいつがそれを知らずに生きてきただけだ。

 

(ソンジンは腰に絞めている布を見つめる。そこには「ジン・ムジン」と書かれている)※前話で「ジン・ムジン」は埼玉の母の名と書きましたが違いました、訂正しています。ちなみに埼玉の名はジン・ホビン。

 

ソンジン:埼玉があれほど強い理由は簡単だ、あの人が俺の潜在能力を破ってくれたように、

 

(その頃、同じ「ジン・ムジン」と書かれた母の形見の布で門番の首を絞める埼玉)

 

ソンジン:俺が埼玉の潜在能力を目覚めさせてやったからだ。

 

埼玉:チョン・シンミョンは中だな?

 

手下1:それは…!

 

埼玉:黙れ。

 

手下1:くああああ!

 

手下たち:侵入者だ!侵入者がいるぞ!

 

(大勢の手下たちに囲まれる埼玉)

 

 

ジェウ:埼玉とはスタート地点が違う?俺たちとは血筋が違うとでも?いったい誰の血が流れてるんですか!?

 

ソンジン:0世代。大韓民国シルムの伝説。

 

 

(手下たちの前で構える埼玉)

 

【生涯どこにも所属せず放浪した。生涯を野人として生きた男。迫田甲竜に匹敵するという「ジン・ムジン」シルムの創設者。そう、俺たちの知る埼玉は】

 

(あの男巫女の記憶の中で男巫女を睨んでいた屈強な男)

 

ムジン:チョン・シンミョン。このろくでなしめ、どこに居やがる。

 

【そのジン・ムジンの息子だ】

 

488話 終わり。