ウェブトゥーン連載中の韓国版の和訳です。

日本語版からはネタバレになりますのでご注意を。 

 

 

以下482話訳です。

 

 

 

(埼玉を連れ、宗教団体を訪ねた埼玉の母)

 

男巫女:よくお越しくださいました。息子さんの病気を治したいと?

 

(赤ちゃん人形が並ぶ祭壇の前で、子羊を抱いて座る男巫女)

 

母:はい、男巫女様。病院という病院を全部回りましたがダメでした。ソウルに住んでいましたがそうしてこの天倆まで来たのです。

 

男巫女:そうだったんですね。私が仕える赤子神様は現代医学では治せない病も治せますよ。

 

母:では本当に息子を治していただけますか?この子の名は埼玉貴仁です。

 

〔俺の目が原因だった。瞳孔過多症。二つ以上の瞳を持つ珍しい疾患〕

 

男巫女:息子さんにはひどく悪いものが憑いている。何度もお祓いの儀式をせねばなりません。

 

〔母は切羽詰まっていた〕

 

(男巫女の傍らには札束が入った紙袋)

 

母:お願いします、男巫女様!

 

男巫女:これほどの真心ならうちの赤子神様も満足していただけるでしょう。すぐに始めましょう。

 

母:はい?

 

〔そして奴は、母がどれほど切羽詰まっているかをわかっていた〕

 

(背後の障子がガラリと開き、男二人が入ってくる。その男は一姟会にいた日本語を話す本社の男たちだった)

 

男巫女:準備しなさい。

 

男:わかった。

 

(祭壇に供えられた、先ほどの子羊の首)

 

男巫女:祈り奉る、祈り奉る、赤子の神に祈り奉る!!!

 

(鉈を振り上げ、串刺しにした子羊の血を抜く男巫女)

 

男巫女:重眼の子を哀れに思い!その目に宿る呪いを払い給え!この子の目を治し給え!!!

 

(白衣を着た埼玉親子を囲み踊る信者たち)

 

男巫女:ほれ。

 

母:はい?

 

(男巫女がヌッと顔を近づけ睨む)

 

男巫女:真心を見せなさい、このクソ女。

 

(慌てて手を合わせ祈る母)

 

母:い…祈り奉る!赤子の神に祈り奉る!

 

男巫女:重眼の子を哀れに思い!その目に宿る呪いを払い給え!生贄を捧げますので呪いをお祓いください!

 

埼玉:〔生贄…?奴の言う生贄とは〕

 

男巫女:あの怪物を捧げますから!!!

 

(そこに現れたのは手を縄で縛られた裸の男の子)

 

〔中学生くらいの男の子だった〕

 

埼玉:〔あの子が生贄?生贄って何?おかしい!様子が変だ!指が6本ある!足の指も6本だ!〕

 

(その時、男巫女がこぶし大の石をその子に投げつける)

 

男巫女:子供の呪いが生贄に移った!!!あの子に神霊石を投げて呪いを追い出すのだ!!!

 

信者たち:神霊石を投げろ!!呪いを追い出せ!!子供を治せ!!!

 

(裸の子供に容赦なく投げつけられる石)

 

母:ちょ…ちょっとお待ちください!まだ子供なのになんてことをするんです!

 

埼玉:〔こんなのおかしい、こんなの間違ってるよ!〕

 

信者:ご心配なく。

 

母:え?

 

信者:これで息子さんの呪いは解けましたから。

 

(にやにやと笑い母ににじり寄る信者たち)

 

母:それがどう…

 

信者:我が天倆へようこそ。男巫女様は全知全能です。お困りごとがあれば男巫女様に伺うといいでしょう。

 

埼玉:〔何かが間違ってる!〕

 

(母の背後に女衆が迫る)

 

女衆:ヤリマン女。

 

母:は?

 

埼玉:〔おかしいよ〕

 

母:ソウルにいたくせに天倆くんだりまでなぜ来たのさ?男巫女様をたぶらかそうって魂胆かい?ふしだらに腰振って、あっちでもどうせ売春婦だったんだろ。

 

埼玉:〔ここの人はおかしい!〕

 

(血を流し倒れたまま動かない子供)

 

埼玉:〔ここの人たちみんな狂ってるよ!〕

 

(ショックを受ける母の尻を見て下衆に笑う男巫女)

 

 

(深夜、布団で眠る埼玉の部屋に母が荷物をまとめて飛び込んでくる)

 

母:貴仁!

 

埼玉:…母さん?

 

母:逃げるよ!!!

 

〔馬鹿じゃなきゃわかる、ここは普通の村じゃなかった〕

 

埼玉:母さん!?どこいくの?

 

母:早く来なさい!

 

〔僕らは走った。全財産はたいて天倆まで来たのに母は少しも惜しんでいなかった〕

 

埼玉:か、母さん、僕疲れたよ!

 

(バスターミナルの受付)

 

母:はい?バスがない?

 

職員:申し訳ありませんお客様。今日村の外に出るバスはございません。

 

母:どういうことです、バスの時刻表には外に出るバスはあるじゃないですか!

 

職員:あれですか?あれはお売りできません。

 

母:どういうこと…!

 

職員:赤子神様が売るなとおっしゃられたので。お引き取り下さい。

 

(ニヤリと笑う職員。埼玉の手を取り走る母)

 

母:行くよ!

 

埼玉:母さん!?

 

母:警察に行こう!

 

埼玉:警察?

 

母:母さんを信じて!

 

 

(交番)

 

警察官:児童虐待?!

 

母:ええ、そうです!子供を引きずり出して供え物だと言って石を投げたんです!

 

警察官:お祓いの儀式ですか?

 

母:ええ、これです!隠し撮りしました!男巫女の家に監禁されてるみたいでした!

 

警察官:これは…!

 

母:バスターミナルもおかしいんです!確かにあるはずのバスが無いなんて言って!

 

警察官:赤子神…わかっていましたよ。

 

母:何をですか!?

 

警察官:赤子神様があなたが来るとおっしゃられた。

 

(ニヤリと笑う警察官)

 

警察官:この携帯はお預かりしましょう。そしてちょっとお話を伺いしましょうか。

 

(慌てて外に飛び出す母)

 

母:タクシー!タクシー!

 

(埼玉と慌ててタクシーに乗り込む)

 

母:ソウルに行ってください!

 

運転手:こんな夜中にソウルですか?

 

母:ソウルじゃなくてもどこでもいい!

 

運転手:は?

 

母:村の外にさえ出てくれれば!

 

運転手:何かありましたか?すぐそこに警察署が…

 

母:いいんです!早く出発してください、これは天倆のタクシーじゃないでしょ?

 

運転手:天倆のタクシーじゃないです。お客様、よく聞いてください、もしかして…監禁されたんですか?

 

母:なぜそれを…!

 

運転手:だいたいわかります。ご心配なく、村の外まで確かにお送りします。

 

(夜道を走るタクシー)

 

運転手:どうぞ、降りてください。

 

母:あ…ありがとうございます!

 

運転手:感謝は私にではなく、赤子神様に捧げないと。

 

〔到着したのは、最初出た家だった〕

 

(家の前で待ち構える男巫女と信者たち)

 

男巫女:こんな夜中にどこまで出かけられたんです?赤子神様がどれほど心配されたか。

 

〔その時から、僕らは監視され始めた。ご飯は何を食べるのか、トイレは一日何回行くのか、何時に寝るのか。すべては男巫女の掌の上だった。地獄。天倆という地獄だった〕

 

 

〔それからどれくらい経った頃か、天倆という地獄での暮らしから〕

 

埼玉:母さん?寝ないの?そこで何してるの?

 

(夜中に寝ぼけ眼で起きる埼玉の前に、首をつった母の体がぶら下がっていた)

 

〔母が先に離脱してしまった。人は自ら命を絶つことができるのだと〕

 

埼玉:母さんなにしてるの、早く降りて寝よう。

 

〔8歳で自殺という言葉を知った〕

 

(後ろの障子がガラリと開き、日本語の男二人が現れる)

 

男:自分で死んだか。

男:面倒事が消えたな。

 

埼玉:誰?〔男巫女の護衛たち?〕

 

男:行くぞ、仕事だ。

 

(埼玉を膝蹴りして担ぎ出す)

 

(お祓いの儀式。串刺しの子羊の死体を前に踊る信者たち)

 

男巫女:祈り奉る!祈り奉る!赤子の神に祈り奉る!生贄を捧げます、厄を祓い給え!!!

 

(飾り付けられた大木の前、たくさんの供え物と共に裸で座る埼玉)

 

村人:おいおい、あの子見たか?怪物だよ怪物!前にいた生贄はどこに行ったんだ?

 

〔8歳で俺は生贄になった。指が6本あった生贄が逃げてしまい、重眼の俺を生贄に替えたのだった〕

 

男巫女:祈り奉る!祈り奉る!怪物の目を持つ生贄を捧げます、村の厄を祓い給え!!!

 

〔俺の目は男巫女に利用された。男巫女のインチキ劇を輝かせるために〕

 

(羊の血を埼玉に浴びせる巫女)

 

〔母が死んで俺はそうやって生きてきた。8歳の俺が見たのは母さんの背中ではなく、鉈をもって踊る男巫女の後ろ姿だった〕

 

〔寒くてお祓いは死ぬほど恥辱だった〕

 

(埼玉の前に、白衣を着た子供のころの天満が座る)

 

〔それでも俺はお祓いを待ち望んだ。お祓いが終われば飯をもらえたから。そして〕

 

(独房のような部屋にもどり、飯を手で食べる埼玉。そこに、笑顔でハンバーガーを差し出す天満)

 

〔あいつに初めて会ったのもその時だった〕

 

天満:寒いだろ?

 

〔天満泰治〕

 

天満:いつか俺の父さんが死んで俺が巫女になったらお祓いの時君が寒くないよう服を着せてあげる。君はおれのモノだ。

 

【天満泰治(8歳)】

 

〔あいつは男巫女の一人息子だった。奴の人生は俺と正反対だった〕

 

 

(子供に石を投げられる埼玉)

 

子供:地獄に落ちろ!村から消えろよ!その目がうつったら殺してやるからな!

 

〔すべてを持った奴と違って〕

 

(容赦なく投げられる石)

 

子供:黙ってろ怪物!

 

埼玉:僕は怪物じゃない…!

 

子供:うちの学校のみんながお前のこと嫌いだからな!

 

〔俺は絶望的に孤独だった。目のせいだと思った。この呪われた目じゃなければ俺も人並みに平凡になれると思った〕

 

(キリを目に突き刺そうとする埼玉)

 

〔幸せなんて望まなかった〕

 

(部屋には母と小さな埼玉を担ぐ屈強な父の写真)

 

(キリを枕に突き刺し泣きながら叫ぶ)

 

埼玉:なんで俺が自分の目を刺さなきゃならねえんだ!!!俺が何をした!!!俺何も悪いことしてねえぞ!!!誰が目の怪物だ、俺は怪物じゃねえ!!!怪物はお前らだ!!!

 

(自分に石を投げた子供たちを殴り倒す埼玉。幼い拳を握る埼玉。その拳が大きくなる。中学生になった埼玉は、同じように自分を傷つける周囲を倒していた)

 

〔中学生になった。目から始まった劣等感が俺を危険分子にした〕

 

(同級生たちがうわさする)

 

生徒:あれが埼玉?

生徒:あんま学校に来ねえらしい。

生徒:イケメンが嫌いなんだって?

生徒:あの目のせいらしいよ。

生徒:埼玉の目がどうしたの?

生徒:お前あいつの目のこと知らねえの?

生徒:シッ!静かに!埼玉に殴られるぞ!

 

(そんな埼玉の後ろ姿を天満が見ていた)

 

〔危険分子とみられるのは楽だった。誰も俺に近づかなかったからだ〕

 

生徒:怪物の話聞いたか?

 

埼玉:怪物…?誰が俺を怪物と…!

 

(だがそれは埼玉に向けた言葉ではなかった)

 

生徒:天倆山に怪物が住んでるんだって。

生徒:天倆山の洞窟?

生徒:お前も知ってるんだ。天倆山に洞窟があって、そこに怪物がいるんだって。近づいた人を捕まえて食うらしい。

生徒:イノシシじゃねえの?

生徒:角が生えてるらしいぜ?

生徒:俺はそんなの信じねえぞ。

生徒:知ってる!見た奴が数十人いるんだって!

 

埼玉:〔…小学生かよ〕

 

(回想:夜、埼玉の部屋に護衛の男が来る。

 

男:仕事だ。

 

埼玉:ああ、儀式か。

 

〔久々の呼び出しだった〕

 

(男たちに中指を突き出す埼玉)

 

埼玉:俺がまだ小学生に見えるか?だったらタイマン張ろうぜ。

 

〔もう勝てる自信があった〕

 

(男にまた膝蹴りを食らう埼玉)

 

〔殴られる前までは〕

 

(また裸で儀式に引き出される埼玉。舞い踊る男巫女)

 

〔久しぶりの儀式だった〕

 

男巫女:生贄を捧げます、厄を祓い給え!!!

 

〔今日だけ耐えればいいと思った〕

 

埼玉:〔寒いなちくしょう。でもこの時間の儀式でよかった、学校の奴らはまだ授業だから俺のこんな姿を見られなくて済む〕

 

(裸で歩く埼玉の耳に生徒たちの声が聞こえる)

 

女生徒:ホントだ。

女生徒:ヤバ~イ。

 

埼玉:〔え?〕

 

女生徒:ホントに埼玉じゃない?

女生徒:生贄だって噂ホントだったんだ!

女生徒:あれ素っ裸だよね?

女生徒:あいつこれからどうなるの?

 

埼玉:〔なんで?〕

 

男生徒:埼玉のやつチ〇コは1個なんだww

男生徒:目だけ瞳孔過多症なのか。

男生徒:生贄のくせに学校でイキりやがって。

男生徒:おい写真撮ろうぜ写真ww

 

埼玉:〔なんでなんだ?〕

 

男生徒:お前ら知らんかったのか?アイツ小さいころから生贄だったんだってさ。

女生徒:ホント?じゃあ学生じゃないじゃん。

 

(儀式の中で白衣を着て座る天満が見える)

 

女生徒:職業が生贄なんだね。

 

(埼玉を取り囲んで見つめる生徒たち)

 

埼玉:〔いったいなぜ、あいつらがここにいるんだ!!!〕うわあああああ!!!

 

(泣きながら裸でその場から逃げる埼玉)

 

埼玉:〔もう疲れた〕チクショウ!!チクショウ!!〔死のう。もう生きていたくない〕

 

(泣きながら山を駆け上る)

 

埼玉:出て来い!今すぐ出て来い!

〔死ねば楽になれる〕怪物でもなんでも出てきやがれ!!!

〔いつだか聞いたことがある〕ここに怪物がいるんだろ!!!

〔天倆山に怪物が住むと〕

 

“天倆山に洞窟があって、そこに怪物がいるんだって。近づく人を捕まえて食うしい”

 

〔洞窟に住む角の生えた怪物〕

 

(洞窟の入り口に立ち叫ぶ)

 

埼玉:どうか俺を殺してくれ!!!

 

〔俺は死にたかったから〕

 

(その時物音がし、尖ったシルエットが現れる。たじろぐ埼玉)

 

埼玉:ま…まさか…本当に怪物が…!

 

〔それは〕

 

(洞窟の脇のプレハブ建物から男が現れる)

 

男:おい。

 

〔俺の人生を変えた〕

 

男:誰が怪物だ。

 

(串に刺した果物?を手に持った若い男)

 

〔先生との初めての出会いだった〕

 

男:面白え、マジで殺してやろうか?

 

【1世代 天倆の王 「ユク・ソンジン」】

 

 

482話 終わり。