株主優待はNISAが盛り上がる前から個人投資家の人気となっていました。
最近では、テレビで優待おじさんとして有名になった桐谷さんなどの活躍もあり関心がある方も増えている様です。
野村インベスター・リレーションズの調査によると、株主優待制度を持つ上場銘柄の割合が2022年9月末時点で1473社が株主優待を実施しています。
株主優待が始まったきっかけは諸説ありますが、株主総会に来場したときの手土産の名残りといった説が有力です。
日本で一番初めに株主優待を始めたのは、今の東武鉄道株式会社とされています。 同社の社史に、「明治32年(1899年)、優待株数300株以上、範囲は鉄道全線、優待株主数41名」との記述があるそうです。
ただ、実際には、300株以上の株主に線路内無賃乗車券を贈呈した山陽鉄道が、株主優待の最初の事例と考えられています。
株主優待は鉄道業から始まり、徐々に他産業にも波及したものの、戦前では導入した産業が限られていました。
戦後、運輸・興行・観光分野の企業が株主優待を実施したほか、高度経済成長を迎えると、自社製品を提供する目的で製造業も株主優待を行うようになりました。
株価を下支えしてもらえるメリットもあり株主優待を実施する企業は順調に増えてきましたが、2019年をピークに減少傾向となりました。
株主平等の原則に反するという機関投資家からの指摘を気にする企業が多くなり株主優待を廃止する企業も増加傾向にあります。
株主優待は基本的に機関投資家にほとんどメリットがなく、個人投資家が恩恵を受けるのと対照的です。ほとんどすべての機関投資家が株主優待にかける費用を配当に回してほしいと思っていることでしょう。
海外投資家の不満は、単に個人と比べて不公平だ、というだけではなく、中小型株では優待コストが利益に大きなインパクトを与えてしまうケースもあるからです。
株主優待実施銘柄は例えば業績の下方修正を発表して本来なら株価が下がる局面でも、個人が優待目当てで買いに入るため株価の下方硬直性が強いです。
株価形成がいびつで非合理的との不満は根強いものがあります。
株主優待を多く保有している個人投資家にとって、優待廃止の増加が今後も続くのかどうかは気になるところです。
日本独自の制度である株式優待は大口の投資家にとってメリットがないものが多いです。特に外国人投資家は優待を受け取りにくく、株主平等原則に反すると批判の声も多く海外投資家が多い日本市場では優待は減少していくのではないかと考えられます。
ただ、優待廃止は決してネガティブなことだけではありません。
優待を廃止することで、企業は優待にかかるコストを減らすことができ、経営効率を高めるきっかけにもなります。
結果として、国内外の投資家にとってより魅力的な投資先となる可能性もあります。