あれはたしか小学生の頃だったか、友人の家に遊びに行くと、

そこで飼っている犬が出産をして、仔犬が2~3頭無邪気にじゃれあってる姿を見た。

小学生の心を射抜くには、もうそれだけで十分。

幼いみらいは、両親の承諾などおかまいなしに、

さっそく仔犬を一頭 譲り受け、我が家へと持ち帰った。




家族には案の定驚かれたが、割とすんなり許しを得、

その仔は晴れて、正式に我が家の一員となる。




もらってきた当初は、それはもう、仕草の一つ一つが愛らしく、

本人は仔犬を

「遊んでやっている」つもりだが実は逆で、

「遊んでもらっている」ことに、まるで気が付かない。

もっとも、これは今になって思えば・・・ということだが。




それともう一つ気付いていないこと・・・









「仔犬は育つ」 という、事実。



犬と人間の成長スピードは同じだと思っている側面も手伝ってか、

犬君はたくましくも、立派な大人へと変貌を遂げてゆく。




世話をつづけてはいくものの、小学生はじつに多忙だ。

学校で遊び、家で遊び、外で遊ぶ。

その興味の対象もめまぐるしく変わり、日々猛スピードで駆け抜けていくように。




いつもまにか我が家にいることが、「あたりまえ」になっていた愛犬。




しかし、やってきたときと同じように、死は突然訪れた。

冬の寒い日だったような覚えがあるが、定かではない。

動物の最期というものを、ただただ受け止めることに必死だった。




犬の平均寿命と比べると、格段に短かったことも後から気が付いた。

そのときになって初めて思ったこと。




「精一杯、かわいがってあげればよかった・・・・・」




散歩もそこそこに済ませ、友達の家へと遊びに行く僕の後姿を

たしかに、いつもじっと見つめていたように思う。

言葉が話せれば、きっと呼び止めていたに違いない。




「もう少し遊ぼう」と・・・・・




限りある「いのち」の尊さを教えてくれたあの仔には、

どれだけ感謝をしても、言い表せない。

今はただただ、「ありがとう」という言葉・・・・・・




乾燥した冬の青空はとても澄んで、遠くまで見渡せる。

千の風になった君は、あの日のように、

元気に大空を走っていてくれていますか?