では、患者さんやご家族から、補完代替療法の相談を受けたらどうしたらよいでしょうか…?

 

 私が、訪問看護に伺う中で、実際に相談を受けた事例をご紹介します。

 患者Aさんは肝臓がんを患う50歳代の女性でした。初回訪問時より腹水貯留による腹痛・腹部膨満感が強く、主治医からは利尿剤や腹痛の症状緩和のための医療用麻薬が処方されていました。

 Aさんは何も話されませんでしたが、Aさんの長女は「漢方薬局で処方された薬ががんに効くと言われ、内服中であること、漢方薬局からは西洋医学の薬はやめるように言われ、主治医には内緒で病院処方の薬は自己判断で中止している。」と話されました。

 長女は「病院からもらった痛み止めを飲んでいないことは、母は病院の先生に話していないと思う。漢方を飲んでいることも話していないのではないか。でも最近辛そうな様子をみていると、本当に漢方だけでよいのかなと思うことがある。」と話してくださいました。

 

 私自身はその時に「漢方などの代替補完療法は、西洋医学でカバーできないところを補うものである。今のAさんの状況であれば、主治医から処方されている痛み止めのほうが身体の苦痛をとる効果は高いと思う。今の身体の苦痛を和らげるために、使っている漢方ややめなくても良いから、主治医の先生から処方されている痛み止めも併用して使ってみませんか。」とお伝えしました。Aさんは漢方の内服を継続しながら、医療用麻薬も使って下さるようになりました。

 患者さん、ご家族から補完代替療法に関する相談を受けた際には、まず患者さん・ご家族の補完代替療法への思いを受け止めることが必要と考えます。

 その上で、エビデンスが示されている西洋医学と併用して、補完代替療法を取り入れることが望ましいこと、正しい情報を得るようにお伝えすることが必要と考えています。