ドアを開けるとたまに迷い込む。
不思議の国。
不思議の国のアリスは月と電波を交信して宇宙語を喋っている。
小さな暗黙の中、少女の配役は決まってしまったのか。
それとも入国さえ許されていないのか。
不思議の国の住民達。
アリスは何人いる?
しかしアリス達は言うのだ、アリスは君だと。
少女はただ首を横に振る。
本当ではない、本当ではない。
深く見える浅い湖では、仮面がいくつも浮かんだまま。
固執した仮面達が発する少女は決して少女ではない。
登りかけた階段を駆け下り、天を仰ぐ。
別の国の旗が何枚も無秩序に並ぶ。
橋があり国々を繋ぐがそれは脆く、渡る者は少ない。
段差から足をそっと戻した。
足を踏み込んだ土は紛れもなく少女の地面。
そこにある砂が石が草がそして蓮の花が少女だ。
不思議でもなく他でも何でもない、少女の範囲。
もう二度と忘れたりはしない。
守るべき少女はここにいるのだ。
初めから。
